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読んでないのに読んだふり。文化系男女の痛い恋愛「盆栽」

恋してしまうと、自分のイイところを相手に見せたくなってしまいますね。ふだんよりがんばってしまいます。
とくに男子は、釣った魚に餌をやらないなんてこともあるだけに、釣ってるさいちゅうは餌──ふだんより数割増しなイイところ──をガンガンに投入してきます。
そしてここからがヤバいところなのですが、文化系な人は男女問わず、「イイところを見せる」がいつのまにか「よく知っててよくわかってる自分を見せる」にすり替わってしまいます。

 フリオがエミリアについた最初の嘘は、マルセル・プルーストを読んだことがあるというものだった。
読んだ本のことで嘘をつくことはあまりなかったが、〔…〕何かが始まりつつあることが、その何かがどれだけの期間続くにせよ大切なものになることが二人にわかったあの夜、フリオはくつろいだ調子の声で、ああ、プルーストは読んだことがある、十七歳の夏、〔…〕と言った。
十七歳のフリオは『失われた時を求めて』を腰を据えて読むため、祖父母の家を借りた。
もちろんそれは嘘だ。たしかに彼は、あの夏〔…〕たくさん本を読んだが、読んだのはジャック・ケルアック、ハインリヒ・ベル、ウラジーミル・ナボコフ、トルーマン・カポーティ、そしてエンリケ・リンであって、マルセル・プルーストではない。
〔アレハンドロ・サンブラ「盆栽」『盆栽 木々の私生活』所収、松本健二訳、白水社《Ex Libris》。引用者の責任で改行を加えた〕

ああ、やっちゃった。
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