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読んでないのに読んだふり。文化系男女の痛い恋愛「盆栽」

フリオは読書家です。17歳のときにさかのぼっても、じゅうぶんに読書家だと言えるでしょう。ただ、プルーストを17歳では読んでないし、エミリアとこうして語り合っている20歳になってもまだ読んでない。
フリオのように、20世紀小説をある程度しっかり読んでいる若者にとって『失われた時を求めて』はものすごくよく聞く名前なのです。

読んだ人がたいていは目いっぱい誉めそやす『失われた時を求めて』全7巻は、その長大さ(日本語訳だと集英社文庫版全13冊で註や解説も入れると7700頁超。読み始めたら時間がとられてとりあえずいま読みたいものを後回しにしなければいけなくなくて億劫)と取り巻きの威圧感(この小説を褒め称える人が、エバった、あるいは陶酔した口調で、聞いているほうが恥ずかしくなるような自己愛強そうな物言いをすることがなぜかよくあるんだよなー。←あくまでも個人の感想であり、商品の効能を保証するものではありません)のせいで、
「知ってるけどなかなか読めない名作」
という、気になってるけどうまく掻けない背中の虫刺されみたいなものなんですよ。そういえばピエール・バイヤールに『読んでいない本について堂々と語る方法』(大浦康介訳、筑摩書房)という本があったなあ。

で、エミリアはどうしたかって?

 その同じ夜、エミリアはフリオに初めての嘘をつき、その嘘もまた、マルセル・プルーストを読んだことがあるというものだった。
最初は相槌を打つだけだった。わたしもプルーストは読んだわ。
だがそのあとに長い沈黙が訪れ、それは居心地の悪い沈黙ではなく期待のこもった沈黙だったので、エミリアは話を続けざるをえなくなった。
つい去年のことよ、五か月くらいかかった、だってほら、大学の授業で忙しくしてたから。
それでも全七巻を読破してみようと思って、それが私の読書人生でいちばん大切な数か月になったの。〔引用者の責任で改行を加えた〕

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