フランスが、売春で揺れている。今月4日、買春者に対し初犯で1500ユーロ(約21万円)などを科す法案が、仏国民議会(下院)を通過した。
これについて、フランス国民の意見は二つに割れている。

フランスでは、あっせん行為・勧誘・未成年者の売春などの行為を除き、売春自体は違法ではない。しかし今後、同法案が元老院(上院)で可決され大統領が署名後、法律になると、違反者には刑が科されることになる。この売春規制についてフランスの議論はどのようなものなのか。

今回の法案が成立すれば、買春者に罰則が科されるため買春需要が減り、売春を無くなることにつながるという賛成意見がある一方で、規制を設けても売春撲滅にはならず、売春行為が闇に潜ることで売春婦の社会的立場がより弱くなる、という反論がフランス国内にある。さらに女優カトリーヌ・ドヌーブさんや歌手シャルル・アズナブールさん、ヨット航海士フローランス・アルトーさん、女優ミレーユ・ダルクさんら有名人数十名も、イデオロギー的先入観のない開かれた議論を求めるとして、同法案への反対署名を行った。


仏内務省によれば、フランス国内の売春婦(男娼含む)は2万人から4万人だという。その内、女性が8割から9割、外国人が8割から9割を占め、出身国はブルガリアやルーマニアといった東欧、ナイジェリア、カメルーンなどのアフリカ、中国、南米からの出身者だそうだ。また性的搾取に反対する人権団体・仏セエル財団によれば、売春婦の収入は平均年間15万ユーロ(約2100万円)になるという。

フランス国外に目を転じてみると、日本と異なり西欧では売春を認めている国は多い。法律の枠組みの中で許可している国は、オランダ・ベルギー・ドイツ・スイス・オーストリア・ギリシャなど。いくつかの制限を設けた上で合法としている国はフランス・イギリス・スペイン・ポルトガル・イタリア・チェコ・ポーランド・アイルランドなどが挙げられる。
他方、禁止している国はスウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドなど北欧に集まる。

売春は世界最古の職業といわれる。法律による売春の管理方法は国により異なるが、最終的にフランスはどのような判断を下すのだろうか。
(加藤亨延)