――舌が上に上がってると、歯が接触しませんね。
井出先生 そうなると、鼻呼吸になるはずです。歯科に来る患者さんは舌が下に落ちちゃってて、いつも歯を「グ~ッ」って噛んでて……というのが当たり前になっている人が多いです。
――そうなんですか!
井出先生 歯科にかかる必要のない人って、世の中にたくさんいますよね。虫歯もなく歯周病もない人、ろくに歯を磨いてないのに平気な人、90歳でも全て自分の歯の人。その人たちは、絶対に噛み締めてないんです。また、そういう人って姿勢がいいんですね。そして、いつもにこやかな顔してるんです。
――へぇ~!
井出先生 歯に力が入ってるとへの字口になり、女性だとほうれい線が深くなります。力が入ってる顔って、見たらわかるんですよ。そうじゃなければ表情も柔らかくなるし、目も穏やかになります。
――顔を見て、口内の状態がわかっちゃうんですか!

【この原理に気付いたきっかけ】
――井出先生が“むやみに削らない治療”を始めたのは、いつからですか?
井出先生 約20年前に、歯とバランスの関係性に気付きました。それまでは「テクニカルさえ磨けば、歯科治療は制覇できる」と思ってたんです。“テクニカルエラーを起こさない歯科”を目指していました。にもかかわらず「歯が壊れた」「セラミックが壊れた」「根っこが割れた」という患者さんが出てくるんです。「歯は全部あるんだけど、どこで噛んでいいかわからない」という方もいました。今考えると、「色々なところを削られて、噛み合わせの調整が狂ってしまったんだな」とわかります。でもあの当時に、いきなり「痛みはないんだけど、歯の右側だけ風がスーッと通り抜けるんです」と言われても、訳がわからなかった。