本を読むじゃないですか。これが、自分の血となり肉となるわけです。

そして数年後、何かの拍子にその本を読み返してみます。……あれ、この本、読んだことあったっけ? いや、受け取り方が変わっているとかそんなレベルじゃなく、記憶にないくだりが多すぎる。かつて読んだのかどうかさえ怪しい。「それも読書の楽しみ」といえばそれまでだけれど、もしかしたらある程度の“記録”がより読書を有意義にしてくれるような気がしてならない。それこそ、一言メモでもいいから。

というわけで、このアイテムをご紹介。
文房具クリエイター・アベダイキ氏がたち上げたステーショナリーブランド「ベアハウス」から発売されている『読書記録しおり ワタシ文庫』が、ちょっと変わり種なんです。
では、まず画像をご覧いただきましょうか。……そうです。これはまさに、あの図書室の「貸出カード」のデザインそのまま!
「僕は本が好きで、年間200冊くらい読みます。好きな著者の本は続けて何冊も買うのですが、以前買った本を二度買ってしまったり、フィルムがかかって中を確認できないコミックスは同じ巻数を買ってしまったり、いろいろと不便に思っていました。そこで『読書を管理する文房具が欲しい!』と考えるようになり、このしおりを製作しました」(アベ氏)

では、その活用法について。
もちろん、普段はしおりとして使用してください。で、本を読み終わったとします。そしたら、その本のデータを書き込んでください。しおりには「読み始めた日」、「読み終えた日」、「本のタイトル」、「著者名」、「簡単な感想」を書き込む欄が用意されています。
「何冊にもわたって使用できるよう、厚手の頑丈な用紙を使用しました」(アベ氏)
1枚のしおりで20冊分の記録を書き込むことができるそうだ。

もちろん、実用性だけではない。
このデザインが刺激するのは、私たちが持つ遠い日の記憶。要するに“ノスタルジー”である。……と、思いきや! 今の学校の図書室に「図書カード」はないらしいのです。
「今、学校の図書室や図書館のほとんどはバーコード管理に移行されており、もう図書カードはないんです。『貸出カード』のデザインは、20代以上の人たちの記憶にしか存在しないのです」(アベ氏)

だからこそ、このしおりを作る必要があった。
「僕らの記憶の中にある『貸出カード』といえば、少しざらついた紙質、粗い印刷、日焼けによる黄ばみ……といったイメージがあります。
それを徹底的に再現しました。用紙には『ケナフ100GA』という味わい深い紙を使用しています。活版印刷っぽい雰囲気を出すためあえてにじんだような風合い、そして文字のフォントもあえて崩してデザインし直しました」(アベ氏)
ちなみに『ワタシ文庫』を収納する封筒には、図書館グッズメーカーから仕入れた本物の貸出カード用封筒を使用しているという。

そんなこのしおりの、主な購入層は?
「20~50代の女性が中心です。また、30~40代の男性ビジネスマンによる購入も多いです。当たり前の話ですが普段から本をよく読む、知識欲の高い方々が多いです」(アベ氏)
発売初日に初回ロット6000セットを売り切ってしまったという好評ぶりが、読書家の琴線に触れた事実を表しているではないか。


そんな『読書記録しおり ワタシ文庫』の価格は、450円(税別)。全国の雑貨屋店、書店等の文房具コーナーで購入することができる。3枚セットになっているので、60冊分の記録を書き記すことができるというわけだ。

「『懐かしい!』、『こういう使い方の商品が欲しかった』、『シアワセな気持ちになれました』など、多くの嬉しい言葉をいただきました。図書カードという誰もが見たことのあるデザイン、そして読んだ本の記録を記憶するというコンセプトが、こんなにもたくさんの方の心に響いたことをうれしく思います」(アベ氏)

コンセプトもさることながら、私がグッと来たのはやはりこのデザイン。ぜひ使い込みたい。
ジーンズじゃないけど、自分なりの“味”を出していきたい。
そのためには、より読書に励み、より本を愛でるのが良いのでしょうな。
(寺西ジャジューカ)