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「半沢直樹」制作陣が再結集、27日放映開始「ルーズヴェルト・ゲーム」の見どころを原作から探る

「半沢直樹」制作陣が再結集、27日放映開始「ルーズヴェルト・ゲーム」の見どころを原作から探る
27日(日)夜9時スタートのTBS新ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」の原作。社長、古参役員、野球部員、監督、技術者それぞれの逆転劇を描く。
野球で一番面白いスコアを知っているかい?
それは8対7だ −フランクリン・ルーズヴェルト−


TBS日曜劇場の新ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」(日曜、21時〜)がいよいよ、今週末27日から始まる。原作は池井戸潤の同名小説。昨夏の話題をさらったドラマ「半沢直樹」の制作陣が再結集してドラマ化に挑む。日曜の夜が待ち遠しい。待ちきれない! というわけで、原作をおさらいしながら、見どころを探っていきたい。第1話目試写レポはこちら

原作者の池井戸潤は『下町ロケット』(2010年)で直木賞を受賞。受賞後第一作目として上梓したのが今回のドラマの原作である『ルーズヴェルト・ゲーム』(2012年)である。高校野球やプロ野球をとりあげた作品は数多あるが、社会人野球を主軸に据えた作品は珍しい。なぜ、池井戸は社会人野球をとりあげようと思ったのか。

<<作品の構想を練っていたのはリーマンショックの頃で、景気が悪く世の雰囲気が暗かったため、映画「メジャーリーグ」のような、読んで元気になる野球小説を書きたいと思っていました。企業の野球部が舞台であれば、時代性を織り込んで、とっつきやすい物語になるのではないかという期待もありました>>TBS「ルーズヴェルト・ゲーム」公式サイト・原作紹介

舞台は、中小精密機器メーカー・青島製作所。社長の細川充(ドラマで演じるのは唐沢寿明)は外資系のコンサルティング・ファーム出身。5年前にヘッド・ハンティングされ、営業部長として実績を上げ、2年前に創業者の青島毅(山崎努)によって社長に抜擢された。異例の大抜擢は専務の笹井小太郎(江口洋介)はじめとする古参役員や部長たちの反感を買い、その不協和音は未だに消えない。

ドラマ版では「愛という名のもとに」(1992年)、「白い巨塔」(2003年)に続いて、またまた唐沢寿明と江口洋介がライバルとして登場する。チャラいロン毛で就職も決まらず、貴子(鈴木保奈美)に振られていた時男が今や、専務ですよ! 虚構と現実をごっちゃにするなと叱られようとも味わい深い。

話を戻します。社内に不穏な空気はありつつも、細川社長の改革が効を奏し、順風満帆だった就任一年目。ところが、リーマンショック以降、様子が一変する。急激な業績不振に見舞われた上、大手取引先「ジャパニクス」から受注減を通告され、挙げ句、銀行から融資引き上げをちらつかされる大ピンチ。しかも、ライバル社・ミツワ電気(ドラマでは「イツワ電器」は、青島製作所からジャパニクスの取引を奪い取ろうと虎視眈々。あの手この手で陥れようと、策を仕掛けてくる。

老獪なジャパニクス社長・諸田清文を演じるのは香川照之。原作では<<有無を言わせぬ口調に大会社の尊大さが滲んだ>>と評された諸田の語り口(と“顔芸”)にぜひご注目いただきたい。立川談春演じるイツワ電器・板東社長と手を取り合って、青島製作所の前に立ちはだかる。「半沢直樹」の大和田常務に勝るとも劣らぬ怪演がすごい。正座して待つべし!

さて、同じ頃、青島製作所にはもうひとつの危機が訪れている。それは、野球部の存続問題。かつては東京都代表の常連で、都市対抗で優勝したこともある社会人野球の名門。でも、今はまるで勝てない。それどころか、監督がエースピッチャーと四番バッターを引き連れて、ライバル・ミツワ電器(ドラマ内ではイツワ電器)に移籍する始末だ。

野球部を維持するためのコストは年間3億円。倒産の危機すらある状況で勝てない野球部を養っている場合か、という議論も当然起こる。野球部の廃部は部員たちにとって死活問題。その多くは契約社員で、野球部の廃部は解雇を意味する。総務部長兼野球部長の三上文夫(石丸幹二)はチームを守るべく奔走するが、決定権を握る細川社長はそもそも、野球に興味がない。

小説『ルーズヴェルト・ゲーム』は“数字”を巡る物語でもある。細川がリストラ計画を発表したとき、現役をしりぞき会長職にある青島は、次のように語る。

「会社の数字には、人の数字とモノの数字がある。仕入れ単価を抑えるといったモノの数字ならいくら減らしてもかまわん。だが、解雇を伴うヒトの数字を減らすのなら、経営者としての“イズム”がいる」

原作では会議室で語られたこのセリフ、ドラマでは思わぬ場面で登場する。原作とドラマ版で、細川のリアクションが異なるのも面白い。原作では<<経営者としてのイズム、か。なんだ、それは。いまの細川のどこを探しても、そんなものはなかった−−>>という設定。一方、ドラマ版では「どんな手を使ってでも勝つ。それが私のイズムだ!」と反駁する。あら、マッチョ。そんな違いを見比べるのも楽しい。

一方、野球部では監督に就任したばかりの大道雅臣(手塚とおる)がデータ解析による選手分析をもとに、先発メンバーを大胆に入れ替える。納得いかないと詰め寄るベテラン勢にノートパソコン(ドラマではiPadらしきタブレット。スポンサーから考えると東芝製か?)を見せ、メンバー選定の根拠を懇切丁寧に解説する。青島製作所野球部はピッチャーが弱い。だから、奪われた以上の点を取る必要があるというのが、大道の持論だ。「三点取られたら四点取ればいい。四手取られれば、五点取る。つまり打撃戦で打ち勝つことが必要なんだ」と説く。大堂の采配のもと、野球部は存在意義を取り戻すことができるのか。それとも−−。

原作に登場する「闘い」は多岐に渡る。企業と野球部それぞれの存続を賭けた闘い。卑劣な罠との闘いもあれば、双方が真剣に仕事に向かっているからこその闘いもある。目の前にいる敵、亡霊のように蘇る過去の敵。巨額な資金が動く企業間の闘いの傍らで、夫の小遣いを巡る小競り合いが描かれるのがべらぼうにリアル。窮地に貴賤なし、なのだ。

原作では、ほぼ紅一点として登場する社長秘書・仲本有紗(ドラマで演じるのは、壇れい)。社内きっての“癒やし系”という設定で「あのガンコな神山部長だって、話してみると意外にいい人だったりします。この前も食堂で小銭がなかったとき、ジュース奢ってくれました」と力説したかと思うと、社長相手に「私には私の悩みがあります。ただ、それを表に出さないだけです」と、しれっと言い放つ。匂い立つ「金麦」感に、ハマリ役の予感。

やっぱり、日曜夜が待ち遠しい。プレイボール!

*『ルーズヴェルト・ゲーム』(文庫版)
*『ルーズヴェルト・ゲーム』(kindle版)

(島影真奈美)

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