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無人島の読みは「ムジントウ」ではなかった?「辞書を編む人たち」

無人島の読みは「ムジントウ」ではなかった?「辞書を編む人たち」
佐々木健一『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』(文藝春秋)<br />2013年にNHKで放映されたドキュメンタリーの内容をベースにしたノンフィクション。辞書界随一の「現代的」な辞書ながら業界での評価も高い『三省堂国語辞典』の初代主幹・見坊豪紀と、主観的な語釈(語句の意味の説明)で知られる『新明解国語辞典』の初代主幹・山田忠雄の、友情と決別を描く。文中でことあるごとに引用される、袂を分かったのちの見坊と山田がそれぞれの辞書に書いた語釈や用例を読んでいたら、何だか2人が会話をしているようにも思えてきた。
先週土曜にNHK教育で放映されたETV特集「辞書を編む人たち」が、きょう(5月2日)深夜0時から再放送される。この番組の冒頭では、「無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら?」と問われると、少なからぬ人が“辞書”を選ぶ――という話がとりあげられていた。

同様の話は、昨年岩波新書から出た増井元『辞書の仕事』にも出てくる。そこでは、村上春樹の「無人島の辞書」と題するエッセイのほか、やはり「無人島に辞書を」派の代表格である井上ひさしが、持参するなら『広辞苑』と具体的に書名をあげていたことなどが紹介されている。もっとも井上は“自身があちこちに書きこみをした『広辞苑』”と断っており、それがいかにも日本語に終生こだわり続けた彼らしい。

無人島に辞書を持参したいという人は、古今東西を問わないようだ。現在はスペインの自治州であるカタルーニャのアウグスティ・カルベットという作家は、自分がもしロビンソン・クルーソーのような目に遭ったのなら、無人島にはせめて2冊の本を持っていきたいと、そのうち1つにプンペウ・ファブラの辞書をあげている。プンペウ・ファブラとは、『カタルーニャ語辞典』(1932年出版)を編纂した人物である。田澤耕『〈辞書屋〉列伝 言葉に憑かれた人びと』(中公新書)を読むと、長らくスペインから自治権を奪われていたカタルーニャ人にとって辞書編纂が、自分たちの言語を継承するためいかに重要な事業であったかがうかがえる。

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