「30歳以上は信じるな」とはボブ・ディランによるせりふだが、当のディランも今や70歳超え。
あと、記憶に新しい昨年末~今年上半期にかけてのミュージシャン来日ラッシュ。ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズの雄姿を見るにつけ、「ロックは若者の音楽だった」と口にして、その言葉を誰が信じる!? ロックに「定年」はなかったのです。

いや、ジャンルで分けて考えるのは野暮でした。なぜならクラブミュージックにも、それは当てはまるのだから。
皆さん、こんな人がいるのをご存じでしょうか? その名は「DJ SUMIROCK(スミロック)」。1935年(昭和10年)生まれの彼女は、ニューヨークのクラブデビューを目指し、日々鍛錬に励んでいるのだそうです。
そこで、彼女が週1で通っているDJスクール「IDPS」(東京都千代田区)へ行き、その授業風景を見学して参りました!

ちなみに彼女の本名は、岩室純子(いわむろすみこ)さん。御年79歳であり、1954年より続く老舗ギョーザ店「餃子荘 ムロ」(新宿区高田馬場)の女将として忙しい毎日を送っています。
そんな彼女がDJを始めたのは、11年前にワーキングホリデーで日本へやって来たフランス人・アドリアンさん(33歳)がきっかけ。岩室さん宅で下宿生活を送っていた彼がDJイベントを主催したというので行ってみると、これが楽しかった! また、そこで「DJをやってみたら?」と勧められたのが、事の始まりだったようです。

そんな経緯で2012年11月よりスクールに通い始め、DJ歴は1年半がたとうとしている。そこで、DJ SUMIROCKが抱くDJとしての展望や不安、その他諸々を伺ってみたいと思います!

――今までに、イベントに出演されたこともあるんですよね?
DJ SUMIROCK そうですね。学校のイベントにも3回出たし、中目黒のイベントには呼ばれたし、あとノルマンディーとパリと……。
――えっ、海外のイベントにも出たんですか!?
DJ SUMIROCK はい。
――うわぁ、すごい。そこでは、どんな曲をかけてるんですか?
DJ SUMIROCK まず最初は、いつも「鉄腕アトム」。あと多いのはフランス系の、デヴィッド・ゲッタとか(笑)。
――へぇ~っ!
DJ SUMIROCK ダフト・パンクとか(笑)。
――へーっ! それは、この学校に入って好きになったんですか?
DJ SUMIROCK なんか聴いてて、気持ちいいんです。誰がどの曲という認識はなかったんですけど、自分が使うようになって、初めて「この曲は誰の」というのを知って。
――みんな(フロア)も乗ってるし。
DJ SUMIROCK そうですね、乗ってくださるので。あと、シャンソンをかけることもあります。好きなので、終わりにジャズとかも。
――あっ、締めに。誰をかけるんですか?
DJ SUMIROCK (セルジュ)ゲンスブールとか。
――ジャズは?
DJ SUMIROCK キャノンボール・アダレイとか。
――おぉ。やっぱり、お詳しいですね……!

ここで、同スクール講師であるDJ TSUYOSHIさん(世界のトップDJ!)にも話に加わっていただきました。
DJ TSUYOSHI 純子さん(DJ SUMIROCK)は好きなだけじゃなく、探究心も持ってますよ。
DJ SUMIROCK (照れながら)探究心っていうか、自分で好きなことをやればいいというか……。
DJ TSUYOSHI でもちゃんとレコード屋さんも行ってるし、CD屋さんも行ってるし。
DJ SUMIROCK (照れながら)それ、普通ですよ!
DJ TSUYOSHI だってプレイするにあたって、あんまり同じものばかりかけたくないというのもあるから。そうなって来ると、やっぱり「じゃあ、CDを買わなきゃ!」と思うし。
DJ SUMIROCK そうですね。だから何枚か買うと、その中に「あぁ、これいいなぁ」っていうのがあるし。
――ジャケ買いとかもするんですか?
DJ SUMIROCK ジャケ買いもありますし、情報もありますし。こないだはタワレコで、テクノをよく知ってる店員さんが付いてくれて、「これ、どうですか?」って。

【「人と同じはイヤ!」、そして“おもてなしの心”】
このし好、この探究心にはワケがある。というのも岩室さん、昔から人と同じことをすることが嫌いだったそう。学生時代は通学時でも制服を着なかったというエピソードまで持っている。
DJ SUMIROCK 「はやってるから、これ」っていうのが嫌だし、みんなと一緒が嫌で。「何とからしい」っていうのがイヤ。
――オリジナルでありたい?
DJ SUMIROCK そうです(笑)。

これがすなわち、DJ SUMIROCKの長所にもつながっているようだ。講師のDJ TSUYOSHI氏は、こう評価する。
DJ TSUYOSHI DJとしてプレイするにあたっての選曲は、純子さんの個性がしっかり出ていますよね。今はクラブミュージックが細分化されちゃってるんですけど、一つのジャンルだけで選曲をまとめちゃう傾向が非常に強くて、最初から最後まで同じようにしか聴こえなくなっちゃう。純子さんの場合はそうじゃなくて、ジャンル関係なく「自分の好きな曲ならそれでいいじゃん」って、貫いている。DJはそういう事をしなくちゃいけないのに、ジャンルにこだわっちゃう人が多い。もっと自分の個性出せばいいのに。純子さんはしっかり自分の個性持ってて、ジャンルを飛び越えて自分の“SUMIROCKワールド”を持っているというところが素晴らしいですよね。
――そういう部分に「好きでやってる」というのが、表れてますよね。
DJ SUMIROCK やっぱり自分も踊りたくならなければ、お客様も踊ってくださらないと思うので。
DJ TSUYOSHI よくいるDJは自分のことばかりに陥っちゃって、フロアのことをあまり考えないような選曲するからダメっていうか。やっぱり、常にお客さんのことを意識して。その辺はやっぱり、ギョーザ屋さんでの経験が活きていて。常にお客さんをおもてなす姿勢が根付いている。DJも一緒なんですよね。
DJ SUMIROCK 調理もDJも、結果が出るのがすごい早いですからね。
DJ SUMIROCK すぐリアクションが返ってくるから、真ん前にお客さんがいるから、ギョーザを出したら食べてる顔色がすぐ見える(笑)。
DJ SUMIROCK そうなんですよ!
DJ TSUYOSHI 「この人は気に入ってくれてるんだな」とか。DJも一緒なんですよね。

そんな彼女のDJプレイは、クラブミュージックに明るくない記者にもビンビン響いてきましたよ!

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このまま鍛錬を重ねていき、ゆくゆくはニューヨークのクラブでプレイすることが目標の岩室さん。
「ニューヨークは“憧れの土地”というか、昔から好きなんです!」(DJ SUMIROCK)
(寺西ジャジューカ)