「あの二人、いつの間に仲良くなったんですかね」
「若いっていいねえ…えへへ」


5月2日放送のドラマ「アリスの棘」第4話では主人公・明日美(上野樹里)と、新聞記者の西門(オダギリジョー)がスペインバルでワイン片手に話し込んでいた。話題は次なる復讐の相談。
でも、傍目には仲良さげで、バルを経営する主人公の義父(中村梅雀)たちは盛り上がる。

西門は、かつて明日美の父である小山内が病院内の薬剤を横領していたというスキャンダルを大々的に取り上げた過去を持つ。再会した当初は冷ややかだった明日美が、今ではすっかり心を許している様子。それどころか、時折すがるような表情まで見せ始めた。いったい、何が起きたのか。「アリスの棘」第1話から第4話をおさらいしながら、ツンデレ女子の心を開く方法を探ってみたい。


■「君、どっかで俺と会ったことある?」(第1話)
医療ミスで亡くなった父の復讐を果たすべく、新人医師として大学病院にやってきた明日美。病院の庭に咲く桜を眺めながら、在りし日の父との時間を思い出していると突然、「あー、動かないで」と声をかけられる。振り向くと、見知らぬ男がカメラを構え、写真を撮っている。そして、「ありがとう。なんか、桜を見てる背中が物語ってた」と、にっこり。いきなりのポエティック爆弾投下である。
明らかに迷惑そうな態度をとられても、ひるむことなく「君、どっかで俺と会ったことある?」とたたみかける。打たれ強いって大事。

■「気づいてたよ、最初から。君も覚えてたでしょ、僕のこと」(第2話)
手術記録を改ざんした看護師長(六平直政)に、執刀ミスをした女医(藤原紀香)と着々と復讐を遂げていく明日美。でも、西門はその正体に気づいてたらしく、「小山内明日美ちゃん」と呼びかける。若干こわい。
だが、ここで重要なのは“ちゃんづけ”にさりげなく移行したことだ。続いて「何やってんだよ。復讐のためなら誘拐までするのかよ」「わかってるのか、これ犯罪だぞ」という説教プレイ。“ちゃんづけ”で心理的距離をぐぐっと縮めた上で、言わずもがなの正論で否定し、“キミのためを思って”な親身さを印象づける。さんざん説教しておいて「君を助けることにする。それが小山内先生への償いにもなると思う」という、ゆさぶり展開がお見事! 

■「一人で暴走して失敗しちゃ意味ないだろう。
ガキじゃないんだから」(第3話)

少しずつ感情を見せ始めた明日美に対して、西門は上から目線のボールを投げまくる。明日美がアイディアを伝えると「やめとけよ。どんなやつかもわかんないんだろう。他人を巻き込むなんてリスクが大きすぎる」と全否定。さらに、「そうツンケンすんなって。一人で暴走して失敗しちゃ意味ないだろう。
ガキじゃないんだから」
と言い放つ。うーわー! ただ、感情を表に出せずにいる女子は、感情をはき出せる相手を特別視する傾向がある。「ムカついてキレた」が「本音で向き合えた」に転じる可能性が高いのだ。

■「友達をつくって、くだらないことで笑って、普通の29歳として当たり前の幸せをつかむべきだ」(第4話)
父親の死の黒幕は、盤台教授(岩城滉一)に違いないと確信した明日美は、盤台を失脚させるために治験をわざと失敗するという策を思いつく。そんな明日美に対して、西門は「関係ない人を巻き込むな」と大反対。「友達をつくって、くだらないことで笑って、普通の29歳として当たりまえの幸せをつかむべきだ」と説得する。
ズキューン。 いわば、キミなら“普通の幸せ”が当たり前のように手に入るよというお墨付き。女子が弱っていれば弱っているほど効く万能フレーズだ。

さらに、明日美から「これから萩原に投薬する」と電話が入ると、土砂降りの中を傘も差さずにダッシュ。「ぜんぶひとりで背負うなよ。俺も半分引き受ける。だから……こんなムチャするな」と、そっと肩に手を置く(抱きしめはしない)。そして、「君はホントにそれがお父さんのためだと思ってるのか。君がやろうとしていることはただの自己満足なんじゃないか」と説教プレイ再び。繰り返し「君はどう思うんだ?」と問いかけるのがキモ。上から目線に見えて、じつは正解を押しつけていない。この手の“叱ってくれる男”の人気は根強い。

俄然、存在感を増してきたオダギリジョー。明日美に好意を抱く盤台教授の一人息子(中村蒼)に起死回生のチャンスは訪れるのか。“サバサバ風女子”の気配ただよう看護師(栗山千明)の動向も気になりつつ、今夜10時から第5話放映です。
(島影真奈美)

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