「超ウケるんですけどー」などといった具合に、若い子が何でもかんでも「超」をつけていた時代を経て、今はなんでもかんでも「めっちゃ○○」と言う子が多い気がする。

「超」が乱用されていたのと同様に、「めっちゃ美味しい」「めっちゃ嬉しい」「めっちゃキレイ!」などという具合に、「めっちゃ」をつけるのって、中身はどうあれ、強調することで気分を高めようとする「自家発電式ドラマチック表現」のようなものなのだろうか。

そういえば、「クソワロタ」などのネット用語から「くそたのしい」とか「くそうまい」とか、本来汚い「くそ」を肯定的につけて強調する言い方もよく耳に&目にするけど……。
『北海道・東北 「方言」から見える県民性の謎』(実業之日本社)や『出身地(イナカ)がわかる方言』(幻冬舎文庫)等の著書を持つ東京女子大学・現代教養学部の篠崎晃一教授に聞いてみた。

「確かに、若い人に『めっちゃ』という表現を使う人は多いですね。『めっちゃ』はもともと関強調の意味を表す関西方言です。東京などの人からすると方言を使うことで『日常』の閉塞感を打破し、『非日常』のインパクトや変化をもたせたいという意味合いがあると思います」

テレビで芸人さんなどが使う関西弁を耳にする機会が増え、非日常として「使ってみたい」「関西人っぽくなりたい」と考える人が、方言を自分の言葉の中に散りばめる傾向があるそうだ。
「方言が『ブランド化』しているということです。
たとえば、関西方言を使うことで、たいしたことを言わなくても面白く聞こえるとか、女の子は博多弁を使うと可愛く聞こえるとか、アクセサリーのように、装飾的に方言を使うんですよね」

少し前に女子高生の間で方言が流行ったそうだが、それも「語」「言葉」として取り入れるより、「音」として、耳に残るものをアクセサリー感覚で取り入れていたと言う。
「音として取り入れるので、新しい音楽を受け入れるのと同じ感覚で、用法は正しくないことも案外あるんですよ」
そう思うと、「ザギンでシースー(銀座で寿司)」などといった、かつての業界用語にも近い「音」の遊びなのかも?
でも、業界用語を芸能人が面白がって使い、それを一般人も真似て取り入れていた時代(本当に使っていたかは謎だが)と違い、アクセサリー的に使うものが「方言」というのは面白い現象ではある。

これって、いつ頃からなのか。
「90年代くらいから、地方活性化の動きにより、方言グッズが増えたり、イベントで使われたりと、方言を町おこしのアイテムとして活用する動きが出てきました」
もともとは「地域活性化」として方言を利用しようと大人が考えたことに、若い人もかかわるようになり、うまい具合に若い人たちがハマッていったのではないかという。
「社会の流れとしても、『B-1グランプリ』や『ゆるキャラ』が流行し、地元志向の強い、地元に愛着を強く持つ人たちを指す『マイルドヤンキー』なんて言葉も出てきて、『地方の時代』と言われます。手軽によその地元を取り入れてみたいという思いがあるんだと思います」

「似非関西弁」などは嫌われることも多いけど、単語レベルで取り入れ、ときには本来の意味を逸脱した「新語」的使い方によって、アクセサリー感覚で方言を楽しむ若い人たち。

今後、さらにさまざまな地域の方言が日常語の中に入ってくるかもしれません。
(田幸和歌子)

Web日本語「女子大生でも気づかない方言」