夫以外の男性と恋をする〈昼顔妻〉と呼ばれる女たちの物語「昼顔〜平日午後3時からの恋人たち」(フジテレビ木曜22時〜)。
ちょっと淫靡な展開と、吉瀬美智子演じるベテラン昼顔妻の含蓄ある名台詞が話題ですが、8月14日放送の第5話では、
「いい、いい、いい、すごいいい」
上戸彩がこんな台詞を吐いちゃうんですよ。
びっくりしましたねー。

と、ここだけ切り取ると問題台詞ですが、これには前後がありまして。上戸彩演じる紗和が、気になる理科教師・北野(斎藤工)ととうとうホテルに入り、でもまだ一線を越えるかどうしようかと迷っているとき、窓外の道のある地点を最初に通ったのが男か女かで道を選択する賭けをして、男や女が歩いてくるのを固唾をのんで見守りながら、
北野「あ。男」
紗和「やった」
北野「え?」
紗和「ん?」
紗和「来い、来い、来い!」「男! いいぞ、いい、こっち来い」「いい、いい、いい、すごいいい」
などと言うのです(一部略しています)。期待した方(何を?)、すみません。

男が通ったら先に進む。
女だったらこのまま。という賭けで、紗和はなんだかんだ言いながらも、男が通ることを期待しているのでした。

結局、ふたりは結ばれますが、ロマンチックなそのシーン@ベッド よりも、道ならぬ恋なんて・・・とためらっていた紗和が次第に自分の本音を見せて、今までにない開放的な笑顔を見せていく、この窓辺のシーンは名シーンであります。
やらしい映像にありがちな台詞を、普通の会話にさりげなく盛り込むなんて、脚本家・井上由美子の遊び心を見た思いです。

5話は、井上由美子の筆が一層冴えた気がしました。
紗和の、団地妻の手記みたいな台詞も絶好調で、
「もう一生男の人に愛されることはないと思ってました。

ずっとこんなふうに好きな人に求められたかった。
ごめんなさい神様。許してくれなんていいません。
今だけ彼を私にください」
いやはや、引き写しているだけで、赤面します。

こうして、晴れて秘密の恋人関係となった紗和と北野が、ベンチでわざと距離をとって座りながら会話するとき、紗和が「他人」「他人」と合いの手みたいに入れるのもテーマ曲「他人の関係」の宣伝にもなっていて愉快。そこで、ノリノリのあの曲はかからなかったのでホッとしました。


それにしても、斎藤工演じる北野先生。服がださくても、恋されてしまうのですが、ホテルのシーンでは、なんの変哲もない白いポロシャツにベージュのチノパンでした。これ、斎藤工のスタイルの良さだから、なんだか素敵に見えてしまいますが、フツーの人には難易度高い気がしますので、男性の皆様、ご注意を。

5話では、紗和による秘密の恋の決まりごと「電話はしない。来たメールはすぐに消す。お互い返信がなかったらそれ以上は送らない」というのも、メモしておきたい感じですが、やっぱり利佳子さんの昼顔語録が圧巻です。


「足を踏み入れた以上、悪女にならなきゃ」
「不倫はね、することの罪よりもバレることの罪のほうが大きいの」
「はじめての情事の後はなにかとボロがでやすいの」
「男は一度抱いた後は誰でも冷静になったりするものよ」
「臆病な男はいるけど真面目な男なんていないわよ」

す・ご・い・で・す・ね・え〜〜。

利佳子がすごいのは、台詞だけではありません。
貧乏画家・加藤(北村一輝)とデートする日、子供を極上の笑顔で送ったら、
猛スピードで家事をこなします。どんなにいけない恋をしていても、家事を怠らない。この能力をほかに生かしてもいいのではないかと思ってしまうと、恋できないのかな。反省。


このドラマ、利佳子、ひとり勝ちか? と思わせて、もうひとり、名言キャラが登場。
紗和の姑・慶子(高畑淳子)です。
息子の俊介(鈴木浩介)と嫁・紗和の仲を心配して、何かと世話を焼いてくるお姑さん、今回は、会社の部下をつれて花火に行くという俊介に、紗和といけばいいのにととがめます。
「花火は刺激なの。非日常なの。ふたりでドカンと」
これ、最高でした。

そもそも、高畑淳子の妙にゆっくりなしゃべり方が、後を引いていたのですが、
回を増すごとに気になる存在になっています。
彼女をはじめとして、ダブル昼顔妻を取り囲むキャラが、次第に頭角を現してきている感じで、利佳子の夫の滝川(木下ほうか)も、そのひとり。

彼は売れてる女性誌の編集長をやっているだけはあって、なかなかのやり手で、妻の昼顔行為を疑って、彼女の車にGPSを仕掛け、わざと土曜日、彼女を自由の身にします。
ふたりが、相手の裏を読み合っていくところはスリリング。この夫婦、けっこうお似合いなのでは? と思ってしまいました。

じわじわ気になる存在と化している木下ほうか演じる夫・滝川は、5話のラストでは、利佳子が滝川を巻いて加藤との逢瀬を楽しもうとすると、その背後にあやしいタクシーが。乗っているのは滝川なのでは? 修羅場か? というところで6話につづきます。

ベテラン昼顔妻と貧乏画家、ビギナー昼顔妻と理科教師、結ばれてしまった今、あとは修羅場展開しかないかも。理科教師の妻・乃里子(伊藤歩)は、ほかの女に目移りしたら、その相手を「殺す」と冗談めかして言っていましたし(夫・理科教師よりも仕事ができてしまう彼女もいいキャラ。論文終わったからと洗濯しているところなんて、男と仕事のバランスに悩む女子には身につまされます)。
このようにキャラの濃い姑、寝取られ夫や妻たちを交えて、後半戦はドロ沼でしょうか。
(木俣冬)