エキレビの文フリレポでは毎回のようにとりあげているNEKOPLAさん。今回の新刊ではとくに、郵便についてとりあげたいくつかの文章が興味深かった。たとえば「ポストの時刻表」という文章では、市中のポストの集荷時間から、取集車の巡回ルートを見出そうとする。これはようするに、鉄道の時刻表から鉄道の運行状況を読み取るのを郵便にあてはめたものだ。あるいは、郵便事故で行方不明になった郵便物はどこへ行くのかという疑問に対し、「『郵便次元』に入りこんだ」との仮説を立てているのも愉快だった。「郵便次元」とは、まるで現代思想用語みたいじゃないですか。
■『樹林』vol.593(大阪文学学校)
文学フリマでは、昔ながらのプロ志向の強い同人誌も手に取ることができる。大阪でいえば、大阪文学学校の機関誌『樹林』はその代表格といえるだろう。同誌では毎年一回、在校生から作品を募集し、それを生徒代表が選考して掲載作品を決めた「在校生作品特集号」を発行している。各作品ごとに付された選考評からは、その作品のいいところ、惜しいところがきわめて具体的に書かれていて参考になる。なかには、小説の真髄を示唆するものもあって、同誌vol.593(2014年6月発行)のある小説の選評での、《たとえば、孤独を表すのに、〈孤独〉と書いてしまえば、そこまでです。前にも後ろにも薦めない。辞書にある〈孤独〉でしかない。(中略)あらゆる言葉を取捨し、登場人物の想いの複雑、繊細、あるいは単純、そして関係性を織っていくことが小説という媒体の存在できるひとつの魅力だと思います》との一文など、深く納得させられる。