「ずいぶんムダな努力をするんですね…そんなことがわたしに通用するわけがないでしょう!」

フリーザの有名な台詞が頭の中で勝手に反芻する。
そこには、黙って豆を浴び続けるフリーザがいた。

「鬼はー外。鬼はー外。福はー内、鬼はー外!」という願いを唱えながら豆をまく、ももいろクローバーZ(ももクロ)の5人と、孫悟空こと野沢雅子。

頭の中では、また中尾隆聖のあの声でフリーザ名言が再生される。
「願いをかなえるのはこのフリーザ様だーっ! 貴様ら下等生物なんかではなーーーい!!!」
「ぜったいにゆるさんぞ虫ケラども!!! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!」

でも、ひょっとしたら「今のは痛かった…痛かったぞーーー!!!」と思っているのかもしれない。

敵役なのに、これほどまでその言葉が浸透しているキャラクターなんて、フリーザ以外にいるだろうか? 
だからこそ今回、ドラゴンボールの新作映画で“復活”を果たせたのだろう。


映画「ドラゴンボールZ 復活の『F』」(4月18日公開)のヒット祈願豆まきイベントが3日、都内のスタジオで行われた。
登壇したのは、孫悟空を演じ続けて29年の野沢雅子。映画の主題歌を担当するももクロの5人。そして、新しい道着を身にまとった孫悟空(着ぐるみ)と、今回の映画のある意味で主役ともいえる、復活の『F』、ことフリーザ様だ。

ももクロの5人は、揃いの亀仙流の道着を着用。
金髪頭でスーパーサイヤ人になりきる百田夏菜子と、自ら被ったクリリンのハゲヅラ(原作註:ハゲではない)を指差して「これが私のドラゴンボールだぁ」とはっちゃける高城れにをよそに、佐々木彩夏は真面目に意気込みを語る。


「私たちのグループ名に『Z』がついたときから、いつか(ドラゴンボールZの)仕事ができたらいいなって心の中で思っていたので、今回実現してまるで夢のようです。これをキッカケに、ドラゴンボール世代じゃない層にもアニメの魅力が広がればいいと思うし、ももクロの歌なんて聞いたことがないドラゴンボールファンにも私たちのことを知ってもらえればいいなぁって思います」。

有安杏果もこれに続く。
「私たちの歌には、ドラゴンボール世代の方々が口ずさめるような曲がなかったと思うんです。だから今回の映画をキッカケに、まずは主題歌を覚えてもらって、たくさんの人に口ずさんでもらえたら嬉しいなって思います」。

「幅広い世代に愛されている作品だから、私たちなんかでいいのかなぁと不安にも思ったんですけど、これをキッカケに、たくさんのドラゴンボールファンの皆さんに認めてもらえるような曲、そして役を演じていきたいと思います」と語ったのは玉井詩織だ。


この日のイベントでは、ももクロが主題歌だけでなく、ゲスト声優として劇中で出演することも発表された。
5人が演じるのが、フリーザが幽閉されている地獄の天使役。物語のオープニングを飾る重要な役どころだという。

「いいなぁ。私、天使役なんて一度もやったことないです」とうらやましがる野沢に、「お先に失礼しまぁす!」とすぐに切り返す反射神経が実にももクロらしい。

「5人が演じるそれぞれの天使キャラが、私たちとちょっとずつ似ているところがあるんです」と語る百田。

親近感を感じつつも、「でも、(声優が)はじめてなので、どうやったらいいのかわからないんです」と、百戦錬磨の野沢雅子にアドバイスを求める。

「天使だから、自分が天使になったつもりで『私は天使よ』という気分で演じればいいんです。空を飛ぶ役なら(自分も)飛んでいるような気分で」と野沢がやさしくアドバイスを送る。
「でも、ももクロちゃんたちなら大丈夫! もう、普段から天使みたいに可愛いじゃないですか。そのままのノリでやってもらえれば大成功だと思います」と野沢が続けると、「そうですねぇ。普段から天使をやってますのでー」と百田。


一瞬、スベッたかのように静寂が流れるも、「そうだよねぇ」と野沢がすかさずフォローする。掛け合いの息もピッタリだ。

実はももクロの5人と野沢雅子は、今回の映画が初対面ではなかった。
2013年4月に行われた安倍首相主催の「桜を見る会」で同席し、ももクロ側から「ドラゴンボールのファンなんです」と野沢に声をかけたところ意気投合。
「私の中ではそのときから彼女たちは身内。『ドラゴンボール一家』なんです」と野沢が認める間柄だという。


そんな『ドラゴンボール一家』でイベント最後に臨んだのが、冒頭でも紹介したフリーザへの豆まき。
ももクロと野沢の6人で、フリーザへ何度も豆をぶつけていく。

ひとしきり豆まきが終わると、司会者はこんな言葉でイベントを結んだ。
「さすがフリーザ様。まったく動じません! フリーザ様との決着は、ぜひ、劇場で」。

映画映画「ドラゴンボールZ 復活の『F』」は4月18日(土)、全国公開となる。
(オグマナオト)