編集後記の書き出しは、こうだ。
“若冲の思想の核には、ゲイとしての世界に対する違和感、疎外感があるのでは?という素人の異論がこの特集のスタート点だった。”
『SIGHTART』の編集長は、ロッキング・オンの渋谷陽一。
雑誌の表紙に「アートをロックに読む 渋谷陽一責任編集」と明記しているぐらいで、がっつり編集長の方針が貫かれた雑誌だ。
“ひょっとして辻さん小林さんに全否定され、最初から考え直すことになるかも知れない。そう思いながらも、おふたりにこの暴論をぶつけてみた。おふたりとも、そう簡単な話ではないという保留をつけつつも、それなりに僕の暴論に理解を示してくださった。”
暴論を起爆剤に、ていねいに編集された特別な伊藤若冲特集になっている。
美術史家、岡田美術館館長小林忠のロングインタビュー「若冲は不完全なこの世界を仏の完全な世界に近づけたく絵を描いた」。
名著『奇想の系譜』で若冲を掘り起こした辻惟雄(MIHO MUSEUM館長)のロングインタビュー「若冲は、理想主義者だったんでしょうね。今の世界ではない、理想社会を夢見ていた」。
聞き手はどちらも編集長渋谷陽一。
カラー72ページで、2つのロングインタビューと若冲の絵を掲載。
特別付録は、伊藤若冲『糸瓜群虫図』クリアファイル。
『SIGHTART』Vol.2若冲特集、絵の美しさだけではなく、制作思想にも迫る特集だ。(米光一成)