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「マッドマックス」最新作を何度も観た君は「野火」を一度は観たほうがいい(冒頭5分で死にたくなるけど)

私は文学青年だったので、もちろん大岡昇平の原作『野火』(新潮文庫)は読んでいます。けれど、はたしてほんとうに読んでいたのだろうかと疑いながら、生まれて初めて味わう『野火』の世界に、没頭していきました。
「マッドマックス」最新作を何度も観た君は「野火」を一度は観たほうがいい(冒頭5分で死にたくなるけど)
『野火』大岡昇平/新潮文庫

ナレーションもなく、字幕もない。真っ黒に汚れた顔をした主人公の男性が、南の島に立っているところから世界が始まります。目のまわりは紫っぽく変色し、肺病になっているらしく、咳き込んでいます。ハエが飛ぶような耳障りな音が、ずっと聞こえています。

軍隊で足手まといになっているから、野戦病院的な場所へ行くようにと言われ、上の人からイモを持たされます。病院的な場所は、食料でも持っていかないと、おいてくれないのです。しかし半分死んでいるような人々がうめき苦しんでいる場所に、主人公の居場所はありません。すぐに退院を命じられた主人公は、それを“まにうけて”軍隊に戻りますが、戻って来るなと殴られて、たらいまわしにされます。病院的な場所と軍隊を何往復もして、幾度も殴られ、病状はちっともよくならず、ただ貴重なイモだけが減っていきます。

マッドマックス最新作を観たとき、闘いのさなかなのに食べ物が出てこないのが謎で、ケガの痛みが強調されないのも不思議でした。『野火』では皆が、見るからに栄養がなさそうな、サツマイモでもジャガイモでもない、貧相なイモを奪い合って食べていました。ゆでても生でも、どちらでも、すごく不味そう。

マッドマックスにも五体満足でない人は大勢出てきますが、古傷(?)は、つるりとしています。『野火』の傷口には、ウジがわいています。しかも、ハエがたかっています。

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