2013.11.26(TUE) at Bunkamura オーチャードホール
(※画像10点)
椎名林檎の音楽は、音譜も言葉も歌声も演奏も、上品で優雅で洒脱(しゃだつ)である。オシャレと書くと、誤解を招いてしまうかもしれない。
前日に35回目の誕生日を迎えた椎名林檎。デビュー15周年を記念したアニバーサリーライヴ【椎名林檎 党大会 平成二十五年神山町大会】がBunkamuraオーチャードホールで計5日間開催され、この11月26日に最終日を迎えた。頭に王冠を乗せ、ブラック&ゴールドの総スパンコールのロングドレスでステージ上に現れた彼女は、舞台の幕開けをきらびやかに歌い上げる「都合のいい身体」で、マイクを高々と掲げ、「ようこそ、党大会へ」と深々とお辞儀をした。続いて「いつもは皆さんにビリビリしてもらいたくてエレキで演奏していますが、今日はオーチャードホールなので生楽器。いつもより深いところでビリビリして頂きたいと存じます」と語り、斎藤ネコ率いる9人編成のアコースティックなアンサンブルで、バート・バカラックからの提供曲「IT WAS YOU」や、ハープを加え、生きとし生けるもの全てへの慈愛を歌った「カーネーション」、タンゴにアレンジされた「カリソメ乙女」、ローズとベース、ドラムのジャズトリオをバックにセクシーに歌った「MY FOOLISH HEART」などを立て続けに披露し、聴こえるか聴こえない程度のかすかな息づれを残し、ステージ袖に消えていった。
ここで椎名自身の影アナMCによって“極秘出産”と噂された第二子となる長女出産の報告があり、“甘党大会”へと突入。バニラの香りとともに、ヌードベージュのシルクシフォンのワンピースを纏った彼女が再登壇し、今年リリースされたシングル曲「いろはにほへと」をタンバリン片手に、まぶしい光の中で歌唱し、<生きて、活きて居よう>と唄われたバラード「旬」や、<いますぐにここでキスして>という英詞のフレーズが印象的な「女の子は誰でも」などをコケティッシュな笑顔でパフォーマンス。
速いパッセージのジャズナンバー「密偵物語」ではミラーボールが周り、椎名に合わせて、観客も手を振った。複数のミラーボールの光が反射するなかで「茎」の英語詞バージョンをピアノとボーカルだけで歌い始め、ブラシ、ウッドベース、ストリングス…と少しずつ楽器と空間を広げていく構成でみせ、本編の幕は閉じた。
アンコール1曲目は5年前、10周年の“林檎博”で披露されたEXPOバージョンとも異なる「丸ノ内サディスティック」の党大会バージョンに続いて、ファン感謝を述べ、「これからも末永く、どうぞよろしくお願い致します。今日はこの辺で、お開きとさせて頂きます」と語り、映画『さよなら渓谷』の主題歌、エンディングテーマとして、主演の真木よう子に提供した「幸先坂」をピアノと歌のみで表現した。<“今日は”何かいいことがありそう>というフレーズが強く印象に残った。
この日、“果実園”という意味を持つ“オーチャードホール”に集まった観客は、予感ではなく、実感として、“いいこと”を感じたはず。なにせ、この日の選曲、演奏、さらに耳に届く音響は、大げさではなく、掛け値なしに最高のものだったからだ。5日間の中では観客が総立ちで楽しんだ日もあったが、この日は終始、座って観覧していた。もちろん、立ち上がって声援を送りたい方もいただろうが、オーチャードホールはクラシックやバレエ、オペラなど、観客が座って観覧することを想定して設計されたホールである。だからこそ、彼女達が奏でる音も豊かに伸び伸びと会場内をまわっていたのではないだろうか。
(取材・文/永堀アツオ)
≪セットリスト≫
1. 都合のいい身体
2. IT WAS YOU
3. カーネーション
4. カリソメ乙女
5. MY FOOLISH HEART
6. 浴室
7. 熱愛発覚中
8. 二人ぼっち時間
9. 色恋沙汰
10. いろはにほへと
11. おいしい季節
12. 旬
13. 女の子は誰でも
14. 孤独のあかつき
15. 都会のマナー
16. 今(Present) ※新曲
17. 月夜の肖像
18. 罪と罰
19. 密偵物語
20. 殺し屋危機一髪
21. 茎
<アンコール>
1. 丸ノ内サディスティック
2. 幸先坂
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