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43年間サバイバル生活「洞窟おじさん」注目すべき意外なポイント

字も読めないから何円札を自分が持っているかも分からない。おそるおそる紙幣を出し、渡したお金よりたくさんの数のお金を返されること(おつり)におびえながら、見たこともないカレーライスや、当時日本に普及しだしたバナナに衝撃を受ける。

好奇心はかなりあるようで、こういう「最先端文明にちょっと触れる」ことを繰り返す。時々山から出てきては「人間社会は、今こうなってるのか…」と薄々知ることになるのだ。しかし、彼は決して人間社会には戻らなかった。

経済発展を見つめる目


そうした「海底在住、たまに浜辺に出てくる浦島太郎」という状態が、何十年も続く。空腹のあまり道に倒れ、おまわりさんのお世話になった時も、焼肉弁当をごちそうになって助けられる。1976年に創業された「ほっかほっか亭」系のテイクアウト弁当だ。

便利な物やおいしい食べ物の良さは素直に認めたり、「こんなものはいらないな」と思ったり、色々思い悩んで樹海で自殺未遂してみたり、最終的には社会復帰もした洞窟おじさん。紆余曲折し、「自分はどう生きたらいいのか」を考えて取捨選択していく。

戦後復興、東京オリンピック、新幹線、あさま山荘事件、ディスコブーム。洞窟おじさん・加村さんは遠く離れた場所からそれらをずっと感じていた。本の中では年代ごとに、日本でどんな事件や流行があったかも随時解説されていて、とても臨場感がある。

復興から一直線ストレートに経済発展してきた日本社会とは対照的な彼からの視点が、日本の辿ってきた道を振り返る意味でも、とても楽しめる一冊だ。
(香山哲)

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