ここまで30年あまりにわたるたけしの出演作品を振り返ってみた。これら多くの作品で宗教、差別、戦争責任など、テレビでは忌避されがちなテーマが扱われていることにあらためて驚かされる。
たけしの実在人物のハマり方は、いわゆるモノマネ的なそれではない。容貌や声の似ていないものも結構あるが、演じるどれもこれも説得力に満ちているのはどうしたわけか。それは単なる役づくりを越えて、芸人として彼が培ってきた何かと言うしかなさそうだ。
先述の田中角栄のドラマの制作発表で、彼は「真似しないように気をつけ、いつのまにか似てくるのがベストだね」と語っている。今回の「赤めだか」も予告編を見るかぎり、たけし演じる談志はまるで本人に似ていない。しかし全体を通して見ればきっと「似ている」のではないか。きょうの放送を座して待ちたい。
(近藤正高)