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二・二六事件とは何だったのか 80年以上経った今、改めて振り返る

       
これでは困ると、分隊長から士気高揚のため、小林二等兵はいきなり落語をやれと命じられる。彼が落語家の前座見習い(高座名は柳家栗之助)だったからだ。が、「子ほめ」という噺を演じたものの、あとにも先にもこんなにウケなかったことはないというほど誰も笑わなかったという(文春ムック『太平洋戦争の肉声(4)テロと陰謀の昭和史』)。この小林二等兵こそ後年、落語界初の人間国宝となる五代目柳家小さんである。

小さんを含め下士兵の多くは、決起の目的が何なのかわからないまま青年将校のもとに集められた。事件後、彼らは満州(現在の中国東北部)に送られ、反乱軍の汚名をそそぐという目的で徹底的にしごかれる。小さんは半年で帰国することができたが、仲間の兵士には残留して翌年勃発した日中戦争で死んだ者も少なくなかったという。

青年将校はなぜ高橋蔵相を殺したか


では、青年将校の目的とは何だったのか。その「蹶起趣意書」は、君側の奸臣(天皇側近で悪心を抱く重臣)・軍賊の排除を謳うだけで、排除したのちの目標は明確には示されていなかった。これというのも、青年将校のなかにも、斬奸(ざんかん。悪人を切り殺すこと)のみに目的を置く「天皇主義」と、上部工作を通じた政治的変革をめざす「改造主義」と二派が存在したからだ(筒井清忠『二・二六事件とその時代――昭和期日本の構造』ちくま学芸文庫、『二・二六事件と青年将校』吉川弘文館)。反乱鎮定の勅命が下ったあとも、前者の天皇主義派の将校がおとなしく従ったのに対し、改造主義派には、天皇を激しく非難する者もあった。

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2016年2月26日のレビュー記事

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