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二・二六事件とは何だったのか 80年以上経った今、改めて振り返る

       
しかし、満州事変時に年間2万人にまで落ちこんだ来日観光客が、1935年には4万人まで倍増していた事実を見ると、どうも孤立していたとは言いがたい。ここで落とされる外貨は当時の日本の国際収支の半分に達し、外国人観光客誘致は不可欠となっていた(古川、前掲)。

国立公園の指定が始まったのもこのころで、さらには二・二六事件の5カ月後には1940年の東京でのオリンピックと万国博覧会の開催が決まる。いずれも外国人観光客誘致を大きな目的としていた。ちなみにこのころの来日観光客は国籍別に見ればアメリカ人がほとんどだったが、これを「中国人」に、国立公園を「世界遺産」や「日本遺産」に変え、そして「4年後のオリンピック」と並べれば、2016年の日本とそっくり重なる。

もちろん、当時といまをくらべれば状況はかなり違う。とはいえ、言論の自由はそれなりに認められ、アメリカはじめ諸外国との友好関係も存続していたことは間違いないし、国民のあいだで戦争と軍部を遠ざける雰囲気はまだ残されていた。しかも日本経済は好調だった。前出の宇垣一成は二・二六事件当時を振り返り、後年日記に次のようなことを書いている。

《その当時の日本の勢というものは産業も着々と興り、貿易では世界を圧倒する。(中略)この調子をもう五年か八年続けて行ったならば日本は名実共に世界第一等国になれる。(中略)だから今下手に戦などを始めてはいかぬ》『宇垣一成日記』第3巻、みすず書房)

だが宇垣の希望に反し、日本は1937年7月の盧溝橋事件に端を発し中国と戦争を始め、泥沼に陥っていく。この過程で東京五輪と万博も中止となる。どうしてこのような道をたどってしまったのか。それを考えるためにも、二・二六事件とそれから約1年半の比較的安定していた時期を振り返ることは重要だろう。
(近藤正高)

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2016年2月26日のレビュー記事

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