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「火村英生の推理」最終話「ロジカル・デスゲーム」の美しさとドラマの結末

現代ミステリーの到達点


もう1つは、「ロジカル・デスゲーム」原作が、物語のトリに採用されなかったことである。公平を期すために正確に言えば、ドラマではきちんと原作通りの謎解きが描かれた。ただ、その後にオリジナルの展開があったのである(「朱色の研究」である登場人物が「崖の上のクライマックス」を揶揄する台詞を吐いていた。それが最終回で行われるとは。意外な展開である)。そのために原作の切れ味が鈍ったことは否めない。

「ロジカル・デスゲーム」という短篇は非常に美しい。
原作における犯人の千舟は、絶望につけこむ男だ。人生に失敗し、もう後がないという状態のひとびとに接近し、多額の賞金を餌にゲームを持ちかける。その結果として3人の犠牲者を自殺による死へと追い込んできたのである。その男が火村に目をつけ、ゲームに無理矢理参加させる。知恵を振り絞って火村はそれに対抗するのだ。
冒頭に引用したのは、千舟と火村が交わす会話からの抜粋だ。本篇における火村は、犯罪者の狩人というよりは、厭世の念に支配されて人間ではなくなろうとしている相手を、なんとかしてこちらの側に引き戻そうとしているように見える。彼は言う。

「人を殺したいと思ったことはあるが、自ら命を絶とうと思ったことはない。一度も」

火村が千舟との知恵比べに応じたのは、自らの姿勢を貫き通すためだ。暴力によって死を強制してくる相手に対し、同じ暴力ではなく知性の力で対抗しうるか。死の恐怖に瀕しても自身を喪わず、論理的な態度を徹することができるか。そうした挑戦を千舟というよりは自らに対して行ったのが「ロジカル・デスゲーム」の火村なのである。

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