中田裕二 初のホールツアー完遂、最終公演では涙で故郷・熊本への想いをメッセージ

中田裕二 初のホールツアー完遂、最終公演では涙で故郷・熊本への想いをメッセージ
撮影/河本悠貴

中田裕二5作目のアルバム『LIBERTY』、そのリリースを受けての全国ツアー『TOUR 16“LIBERTY”』の最終公演地である中野サンプラザ。バンドセット、スリーピース、弾き語り、3つの形態で行われたツアーの最終日であり、そしてキャリア初のホールツアーをしめくくる場所であり、最新シングル『ただひとつの太陽』のリリース後初めてのライブでもある。まさに中田裕二の現在形を観れる場所、ということになるだろう。さらにもうひとつ大きな意味がある。彼がこの中野サンプラザのステージに立つのは5年ぶりのことだ。前回のステージは自身が率いていたロックバンド・椿屋四重奏のフロントマンとしてのステージであり、椿屋時代からのファンにとっては、そんな過去もよぎるステージになるのだ。

ライブは、アルバム『LIBERTY』収録曲から「WOMAN」「リボルバー」を立て続けに披露してスタート。華やかで賑やか、しかしそこに大人の余裕というものを絶えず感じさせるポップス。中田裕二のバンド編成のステージを支えてきた手練のプレイヤー達(その名もブルーネオンズ)の見せ場も初手からたっぷりで、それもまた余裕につながっているだろうか。日本ならでは、自分ならではのAORというものを突き詰めてきた中田裕二というミュージシャンの魅力、『LIBERTY』というアルバムの魅力を冒頭から存分に味わい、この日のライブが文句なしの素晴らしい一夜になることを確信させられる。





しかし、どうにも落ち着かない。この日のライブには、予期しなかった重い意味合いがもうひとつあった。多くの観客が、彼の故郷が熊本であることを知っているのだ。2曲目を終えて中田裕二は観客に語りかけた。「地元が大変なことになっています。みなさんも心配されているかと思いますが、でも、お願いがあります。暗い顔をしないでください。目いっぱい楽しんで、終わった後たっぷり募金をしてください」。ほっとしたかのような笑い声が拍手とともに起きる。重い事実のあることを認め、それでもそれらをユーモアあるメッセージでほぐして、誠実なお願いにつなげる。大人のMCだった。

アルバム『LIBERTY』収録の全曲が披露されるステージとなったわけだが、やはり「大人」がキーワードである。80年代から90年代初頭のポップスを愛してやまない彼にとってのその時代は、誰もがちょっとだけ大人の背伸びをしながら華やかで刹那な夜を過ごしていた時代だ。それらを、現在の自分――2010年代の東京に生きる大人としてのリアルな気持ちを込めて鳴らすのが、中田にとっての「シティ・ポップ」なのである。『LIBERTY』はその「ポップ」性が突き詰められたものだ。当時を知る大人には懐かしいものとして、同世代にはリアルな音楽、若者たちには新鮮なものとして響くのである。

椿屋四重奏のセルフカヴァー曲も披露された。「NIGHTLIFE」。「以前このステージで披露したはず。キャリアでも1、2位を争うバラード」という曲紹介でこの異形の歌謡レゲエとも言うべき曲を披露したものだから、多くの観客にとって気持ちのよい肩すかしとなったわけだが、まったくウェットにならないかたちでのこの椿屋時代の回顧ぶりには、彼のソロミュージシャンとしてのキャリアの長さ、自信というものものを逆に強く感じさせた。『LIBERTY』というアルバムの世界を中心に、あくまで大人のエンターテイナーとしてステージをまっとうする、そんなライブ本編だったと言える。





アンコールでは打って変わって、彼はステージに登場するなりそれまで抑えていた気持ちを涙とともに溢れさせた。さきほどまでのエンターテイナーぶりはどこへやら、まったくもって上手く気持ちを伝えれない自分に「情けない」を繰り返し、それでも故郷への愛を語り、落ち着いたら熊本でライブをやりたい、みんなも熊本に行ってみてほしいと伝えて披露したのは「ひかりのまち」。椿屋四重奏の結成地である仙台への思いをこめて、2011年3月に発表した楽曲だ。この曲をまたしてもこんな気持ちで弾くことになるとは、というのが本心だろう。しかし、悲しみにどこまでも寄り添う気持ちをこうして曲にした以上、そこに悲しみがあるのならば――という決然さがシンプルな弾き語りに滲む、感動的な光景だった。

続いて披露されたのは最新シングルの楽曲「ただひとつの太陽」。1950-60年代のスタンダードやヴィンテージ・ソウルのテイストを活かしたごくシンプルなラブソングであり、『LIBERTY』以降の彼の新たなモードを力強く告げている。変化を恐れず、未来へ向かって力強く――中田裕二のアーティスト性であり、同時にそれらが多くの人々への向けた力強いメッセージでもあることが伝わってきた。
(取材・文/柳憲一郎)

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