MLBのシカゴ・カブスが1908年以来、108年ぶりのワールドシリーズ制覇を達成した。なんと前回優勝時の日本は、まだ明治41年で、この年に初めて行われた日米野球では、大隈重信が始球式を行ったという。

100歳越えのお爺ちゃんファンでさえ、生まれて初めて見る奇跡的な世界一を、あの超有名な映画は見事に予言してみせた。もういくつ寝たら90年代突入の1989年12月に日本公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』である。

大ヒットしたシリーズ1作目は、主人公のマーティ・マクフライが科学者のドクとともにタイムマシーンのデロリアンに乗り、1985年から自分の両親が学生をやってる1955年のヒルバレーにタイムトラベル。
そしてこのパート2では、1985年から30年後の未来、自分の息子が事件に巻き込まれるのを阻止するために飛んだ、2015年10月21日が舞台となる。

「カブスがワールドシリーズ優勝だって!?」


その近未来のヒルバレーで、マーティは街頭の巨大スクリーンに流れるスポーツニュースを目撃し「カブスがワールドシリーズ優勝だって!?マイアミを倒して!?」と驚愕。あのヤギの呪いもついに解けた。開幕まで時間を戻せたらカブスにドーンと大金を賭けていたのに……というわけでアンティークショップに走り、「スポーツ年鑑1950年-2000年」を買うマーティ。
あらゆるスポーツのビッグゲームの結果が載った本があれば、億万長者になれるはず。
このスポーツ年鑑を巡り物語は怒濤の展開を見せるわけだが、今回は映画内に出てくる89年発の2015年の「未来描写」と、2016年の「現実」を比較してみよう。

対戦相手の「マイアミ」


まず、カブス優勝のシーンの対戦相手で「マイアミ」というチームが出てくるが、89年当時はそんなチームは存在しない。実際にマイアミにフロリダ・マーリンズが誕生したのは1993年で、その新興チームで4番を打ったのが西武ライオンズでも活躍したデストラーデである。創設5年目の97年には、早くもインディアンスを破りワールドシリーズ制覇。
で、2012年からはマイアミ・マーリンズに改称したチームには現在、イチローが在籍。多くの日本人にとっても馴染みの深い球団になっている。


VRや3D映画も予言していた!?


『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の日本ネタと言えば、「イトー・フジツー」というとんでもない名前の日系人社長が登場。マーティの娘がビクターの眼鏡型端末を頭に装着して、テレビを楽しむシーンがあるが、これは先日発売したソニーの「PlayStation VR」と見た目はほぼ同じだ。

ブラウン管テレビが消え、壁にかかった巨大スクリーンは今では当たり前だし、テレビ電話はそのまんまスカイプである。セキュリティの指紋認証ドアも世の中に浸透、犬の無人散歩装置に近いのはロボット掃除機ルンバだろうか。あと5秒で雨が止むことを予測する気象庁のサービスは、いつでも確認できる天気予報アプリ感覚。レンジでチンするといきなりデカくなるピザハットの冷凍ピザはさすがにまだないけど、セブンイレブンの冷凍食品はこの十数年で格段に味が良くなった(強引)。

これらに加えて、現実の2016年にはスマホやタブレット端末も存在するわけだから、家の中ではある意味数十年前の想像通り、もしくはそれ以上の生活が実現していると言っても過言ではないだろう。

街の『JAWS19』が上映されている映画館の前で飛び出る立体ホログラムのジョーズは、まさに現代の3D映画そのもの。ドクが施術した「若返りクリニックでオーバーホール、シワを取り、髪を修復し、血を入れ替えた」というのも高須クリニックあたりでいけそうだ。

描写が難しい車と服装の未来像


もちろん現実の2016年が、映画の中の2015年に追いつけていない技術も多々ある。SF映画で最も難しい描写が、車と服装の未来像だ。
なぜなら、この2つは基本的に今も昔も見た目はそんなに変わらない。まあズボンはズボンだしみたいなあの感じ。
結果的に、デザイン面より機能面で違いを表現すると、かなり無茶な描写になってくる。車は余裕で空を飛び、テキサコのガソリンスタンドは全自動化。服装は乾燥機能付きのサイズ自動調整ジャンパー、ナイキの自動靴ひもスニーカー。

ついでになんとなくセグウェイぽいマテル社製の子どもたちの玩具も宙に浮く。ホバーボードで街を疾走するマーティのように、数十年後に街の人々が普通に空を飛んでるのか興味深いところだ。ちなみに2015年、トヨタ自動車のブランド「レクサス」がホバーボードを開発し話題を呼んだ。

 
気が付けば、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』の公開から27年。この記事を小さく薄いスマホで読んでいる人も多いはずだ。30年近く前の人類が夢見た未来は僕等の手の中にある……のかもしれない。


『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』
公開日:1989年12月9日
監督:ロバート・ゼメキス 出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、トーマス・F・ウィルソン、リー・トンプソン、エリザベス・シュー

キネマ懺悔ポイント:99点(100点満点)
「バック・トゥ・ザ・フューチャーとプロ野球と篠崎愛が嫌いな人とは友達にはなれません」と言い切れるだけの名作。続編が面白い映画ランキング、心のベストテン第1位。ところで劇中の「埃のつかない紙」っていつできるんすかね?
(死亡遊戯)



(参考資料)
「バック・トゥ・ザ・フューチャー25thアニバーサリーBlu-ray BOX」封入ブックレット

※イメージ画像はamazonよりバック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2 [DVD]