しかし、作品にリアルを注入するには障壁が付き物です。
「『東のエデン』でとあるショッピングモールに申請を出した時、結果的にOKが出たのはシネコンだけでした。他の商業施設はテナントごとに許可を取らなければならず、かなりハードルが高くて……。じゃあ、そこを『主人公の滝沢君の家にしてしまえ!』と。彼は映画が好きという設定もあったので、彼の家そのものがシネコンだったら楽しいかもなって。僕自身、もし家がシネコンだったら楽しいと思いますので(笑)。今思うと、よく使わせていただいたなと思います」(神山監督)
新作『ひるね姫』の舞台が岡山になった理由
神山監督の4年ぶりになる新作映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が、来年の3月に公開されます。同作の舞台は、岡山県の児島。高校生の女の子・森川ココネと、自動車の改造ばかりしている元ヤンキー(?)のお父さんによる物語です。

「瀬戸内海の方に行ったことがなかったので、一人で旅して。倉敷とか尾道まで行ってみようかなぁって。ふと、途中で高速降りたいなあと思ったんですよ。すごい素敵な景色だなと思って、わざと車をそこで停めて街を歩いたんですけど、すごい牧歌的だしね。割りと僕は殺伐としたアニメを作ってきた方なんで、やわらかいものを作りたいと思っていた時期でした。時間もゆっくり流れていて、こういう感じを自分も欲してるなぁというのがあって『ここを舞台にしたら面白いかもしれない』と。自分が育った街ではないので、ついつい東京を舞台にしてしまうんですけど」(神山監督)