12月7日放送された「FNS歌謡祭2016」(FNS系列 司会/森高千里 渡部建 進行/加藤綾子)。今年も去年に引き続き、2週連続、合計8時間半。

昨日の第一夜だけでも65曲の大盤振る舞いである。

持ち歌だけでなく、意外な人とのコラボや、往年の名曲をあの人がカバー? といった世代やジャンルを越え、幅広く音楽を楽しめる趣向がこの番組の魅力である。
「FNS歌謡祭2016」第一夜で何が起こったか。衝撃の秀樹と怒号の長渕と
「西城秀樹 GOLDEN☆BEST」
BMG JAPAN

時をかけて来た原田知世


第一夜の見どころを、駆け足で挙げてみる。
松任谷由実が初登場、平井堅と「ダンデライオン」を歌う、久保田利伸が、AIや加藤ミリヤ、Crystal Kay 、清水翔太を引き連れて「LA・LA・LA・LOVE SONG」を真っ黒く歌う、薬師丸ひろ子と橋本環奈の新旧ヒロインが「セーラー服と機関銃」をコラボするとか。

1983年のデビュー曲「時をかける少女」を歌う原田知世が、コラボした欅坂46に負けず、本当に「時をかけて」来たのではないかというくらい「少女」感をキープしていることや、秦基博が何人もいるのではと思うくらい大車輪の活躍を見せていたこと、森高千里が19年ぶりにドラムを叩きながら自曲を歌う姿が堂に入ってること、長瀬智也とゆずの三人でアコギで弾き、歌う「宙船」の際、ふと映る客席(出演者控えのテーブル)のTOKIOメンバーの満足げな表情など、いいものを見せていただいた。ずっと見ていられる。

僕にとって歌うことは、生きること


大きな「復帰」が2つあった。

一つは複数の子宮疾患の治療に専念していた大黒摩季。
6年ぶりに今年夏にステージ復帰を果たし、FNS歌謡祭には初出場。
彼女をリスペクトする華原朋美 水樹奈々 chay 新妻聖子ら、「大黒チルドレン」とのコラボは、歌える歓びに満ち溢れていた(大黒かあさんが支える子だくさん一家の団欒にも見えるくらいだった)。特に華原朋美、大黒とはおそらく旧知の仲なのだろう、自曲の「「I′m proud 」を西島隆弘と歌っている時の何倍も楽しそうだった。
華原朋美自身も「すったもんだ」があって1ヶ月ぶりの復帰だということで、あの、馬に乗って現れた最初の「復帰」の時にくらべたら元気そうで安心した。

そして、もう一つの復帰は西城秀樹。2度目の脳梗塞を経てリハビリを続ける中での26年ぶりのFNS歌謡祭出演である。
「秀樹、還暦」を過ぎて61歳。身体を支えられ、苦痛に顔を歪めながら筋肉を動かす姿、「僕にとって歌うことは、生きること」とたどたどしくも力強く語る姿がVTRで映される。ワイプで抜かれる郷ひろみ、谷村新司。
そのまま11月に神奈川で行われたコンサートで「YOUNG MAN(YMCA)」を歌う姿が流される。

「若いうちはやりたいこと何でもできるのさ」

往年の声のままだ、「まま」すぎる。真正面を見据えて歌うその声と口は合っていない部分もある。

だけど、これはまぎれもなく歌だと思った。
「FNS歌謡祭2016」第一夜で何が起こったか。衝撃の秀樹と怒号の長渕と
「乾杯」1980
東芝EMI

歌というか、怒りそのもの


そして4時間の豪華な宴の大トリは長渕剛。客席は歌い終わった開放感だろう、ほがらかだ。

「本日はあの『乾杯』が歌われます」
と司会の森高から発表される。しかし、当時の「乾杯」と、今の「乾杯」では大きな違いがあると長渕さんはおっしゃいます、と。日本の社会が変わっていく中で、楽曲の意味も変わったのだと。

「この時代だから、届けたい新しい『乾杯』がある」

長渕の思いが紹介される。
なんだろう、今風にアレンジしたのか? まさかアイドルとコラボ? ゆずとはNHKで共演してたよな……そんなことを頭にめぐらせていると、長渕が歌い出した。

「アメリカの大統領が誰になろうともおおぉぉぉーー!!、凶と出るか吉と出るかってそりゃ俺たちしだいじゃねーかああぁぁーーー!!!」

え?

「うほぉおおお!!!」

扇動的な叫びが連呼される。
聞いたことのない歌詞だ。曲調もやたら激しい。フリースタイルのラップか早口言葉のようだ。
マスコミの理不尽さを嘆き、ヒットチャートには騙されないぞと吠え、ワイドショーに牙を向ける。
浴びせてくる。歌というか、怒りそのものだ。

それは完全に知らない曲だった。少なくとも友人の結婚式では歌ってはいけない曲だし、なんなら仲間内の予定調和なカラオケでも、控えた方が無難だろう。それくらい、強い意志をもった、強い曲だ。

「歌の安売りはやめろ」と、音楽界・芸能界の現状を嘆き、気づいたら、兵士が死んだ話が語られている。
そして突然、

「かたい絆に~」


馴染みの歌詞が飛び出してきた。
やっぱりこれは、「乾杯」だったのだ。

瓢箪から駒、知らない曲から「かたい絆」。
画面左上には「乾杯(1980)」の文字が表示されている。(1980)の文字が余計にわれわれを混乱させる。

1990年、紅白に初出場した時、「今の日本人はタコばかり」と吐き捨ててから、やはり「マスコミは臭い息を吐き」と痛烈な歌詞で自曲の「親知らず」歌った。(その後に、別途「乾杯」も歌っている)そのことはいい。歌詞は自由だし、同意できる箇所もあり、十分理解もできる。
しかし問題なのは、今回「乾杯」自体が大幅に変更されていたことだ。
前回(紅白)は、3曲ぶちあげて、いろいろと叱られたらしい。「クソ生意気なガキだった」と本人も笑い話にしている。
だからなのだろうか、今回は1曲だ。今の「乾杯」がこれだ。とんちでねじ伏せられたような気持ちになる。

「うおおおおお!!!」

最新版の「乾杯」は咆哮で歌が終った。
加藤アナが、笑顔で、「長渕剛さんで『乾杯』をお送りしました。」とダメ押しのように言う。
「FNS歌謡祭2016」第一夜で何が起こったか。衝撃の秀樹と怒号の長渕と
「乾杯」2016
東芝EMI

そのまま、エンドロールが流れ、番組が終わっていく。グランドフィナーレ。
出演者が舞台に上がってくるが、その顔は晴れない。だって、なんか怒られたから。

第二夜では、ピコ太郎とアイドル100人が!


実際に、歌を安売りしていると思ったかどうかはわからない。
しかし、あの場にいたアーティストたちは、少なからず「怒られた」心境だったに違いない。少なくとも気まずかったはずだ。

4時間強の長丁場。きっと朝早くからリハをやり、無事大役をつとめあげ、選ばれた歌手だらけ歌の祭典の前半が終わろうとしている、そんなハッピーなエンディングの直前に
「日本から歌がなくなる」
と歌で叱られ、全てを否定される気持ち。

長渕の「怒り」パートには一言一句、生放送だが字幕も付いていた。
つまりこれも予定されたプログラムなのだ。
全員が4時間頑張ってきて、鬼束ちひろも無事「月光」を歌い上げたのに、会場には達成感ではなく、そこそこの「反省しなきゃ」の空気が流れる。そんな中、

「来週の第二夜では、ピコ太郎とアイドル100人の史上最大の『PPAP』」が!」

と告知が響く。大丈夫なのか?! また「怒られ」ちゃうんじゃないのか?

第二夜は14日放送。

あの、俳優の、「ひとつ屋根の下」の、堀北真希の、山本耕史が、過剰なボウイ愛で、ギターを弾きまくり、歌うのが、見所だと推測する。どうか、誰も怒られませんように。
(アライユキコ)

第一夜セットリスト

●歓喜の歌」 藤澤ノリマサ
冒頭いきなりの「知らない人」(失礼)からのスタート。
どうやらAKBメンバーのたくさん在籍するプロダクション尾木の方でポップスとオペラを足したポップオペラを提唱してるらしい。
●「喧嘩上等」 氣志團 AKB48  HKT48
クラシックからのヤンキーの落差いいですね。
●「あの時君は若かった」 ザ・カンレキーズ(アルフィー)
衣装が青いタケちゃんマン。
●「よろしく哀愁」 郷ひろみ Nissy(西島隆弘) 社交ダンス元日本チャンピオン金光ペア
郷ひろみとAAAの人の後ろで社交ダンスペアがおどり狂う。
●「あいたい」 林部智史 ウエンツ瑛士 生田絵梨花
●「二人セゾン」 欅坂46
●「オリビアを聴きながら」 杏里 尾崎亜美 渡部麻友 柏木由紀
●「結ーゆいー」 miwa 松下奈緒(合唱 東京学芸大学附属 小金井中学校 音楽部)
永六輔 追悼企画
●「黄昏のビギン」 さだまさし 水樹奈々
 若干のスナックでの接待感。
●「見上げてごらん夜の星を〜ぼくらのうた〜」 ゆず 宮本笑里
 美しすぎるバイオリニスト。
●「YOUNG MAN (Y.M.C.A)」 西城秀樹 神奈川県民ホール
●「笑えれば」 ウルフルズ
 この順番でのこの曲は憎い。
●「みんながみんな英雄」 AI  Litlle Glee Monster
●「最高かよ」 HKT48 
●「笑って許して」 高見沢俊彦 ももいろクローバーZ 夏木マリ 和田アキ子
●「さよならの意味」乃木坂46 
●「Soup」「それでしあわせ」「雪恋」藤原さくら 山本彩 chay
 ギター女子三羽烏。
●「難破船」 宮本笑里 加藤登紀子 加藤ミリヤ
 今思うとこの曲を20代そこそこの中森明菜が歌っていたのがすごい。
●「宙船」長瀬智也 ゆず
●「I believe 2016ver.」 絢香
●「セーラー服と機関銃」 橋本環奈 薬師丸ひろ子
 初々しい橋本を母性で包み込む菩薩薬師丸。
●「I′m proud 」華原朋美 西島隆弘
 歌いおわりに笑顔で西島に「ありがとうございます!」と朋ちゃん。
 歌い終わりの礼儀のよさは今回もナンバーワン。
●「Smile for me」松任谷由実 
 この番組の音楽監督の武部聡志とは旧知のユーミン、満を持しての登場。
 誰よりもシャンデリアと飛天の間が似合う。
●「week」NEWS
●「恋を知らない君へ」NEWS
 控え歌手だらけの客席へ降りて行くたびにヒヤヒヤ。
●「紅のプロローグ」夏木マリ T.M.Revolution Nissy(西島隆弘)Litlle Glee Monster
●「時をかける少女」欅坂46 原田知世
  書いたのはユーミン。
●「この広い野原いっぱい」森山良子 JUJU 新妻聖子 miwa 藤原さくら
森山音楽塾。
●「魔法を言っていいかな?」平井堅
大黒摩季 スーパーメドレー
●「熱くなれ」華原朋美 大黒摩季 新妻聖子   
 異様にたのしいそうな朋ちゃん。
●「あなただけ見つめてる」水樹奈々 大黒摩季 chay
●「ら・ら・ら」華原朋美 水樹奈々 大黒摩季 chay 新妻聖子
●「AAO」Kis-My- Ft2 ナオト・インティライミ
●「Gravity」Kis-My- Ft2
●「ふるさと」 嵐 松下奈緒 宮本笑里
 熊本出身の放送作家 小山薫堂作詞。
「君の名は」 新海誠インタビュー
●映画「言の葉の庭」エンディングテーマ「Rain」秦基博 miwa  藤原さくら
●映画「君の名は」エンディングテーマ「なんでもないや movie ver.」上白石萌音 
 映像をバックに。
森高が19年ぶりにドラム披露
●「二人は恋人」森高千里 ℃-ute
●「SNOW AGAIN」森高千里
●「NOROSHI」関ジャニ∞ 
●「キング オブ 男!」関ジャニ∞
 終盤、映画の宣伝で来ていた生田斗真が、舞台に上げられ一緒にダンスを。ちゃんと踊れる。
●「70億のピース」 秦基博 森山直太朗
 いまや番組に欠かせない二人。
●「ジョニーの子守唄」谷村新司 Litlle Glee Monster
●「YEAH!! YEAH!! YEAH!!」EXILE THE SECOND
●「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」松任谷由実 平井堅
●「LA・LA・LA・LOVE SONG」久保田利伸 AI 加藤ミリヤ Crystal Kay  清水翔太
●「恋人」 鈴木雅之 NESMITH SHOKICHI 登坂広臣 今市隆二 
●「ロンリー・チャップリン」鈴木雅之 JUJU
お姉ちゃん来るかと思ったら。
●「復活LONE」 嵐
●「Power of the Paradise」嵐
秦基博の作詞作曲と初共演
●Beautiful World」 V6
●「Darling」V6
●「愛!wanna be with you…」 TOKIO
●「薔薇と太陽」 Kinki Kids
 一人はダンスと一人はギター。
●「ハイテンション」 AKB48
 年内で卒業の島崎遥香センター曲
●「Welcome to TOKYO」三代目 J Soul Brothers EXILE TRIBE
●「生きとし生ける物へ」 森山直太郎
●「beieve blieve」JUJU バーレスク東京
●「月光」鬼束ちひろ
●「Overflow〜言葉にできなくて〜」 ナオト・インティライミ miwa・末延麻裕子
●「戦士の休息」 薬師丸ひろ子
●「12月のLove song」 GACKT T.M.Revoluthion
●「乾杯」 長渕剛
〜エンディング