以前より、俳優やモデルを案内役に、文学など芸術をとりあげた紀行番組は珍しくない。たいていは、作家の横顔を紹介しながら、そのゆかりの地をまわり、作品の世界に触れるというのがお約束のパターンだ。最近、友近がコントで、この手の番組で女優がさも作家の心を理解しているかのように振る舞い、その鼻につく感じをパロディにしていたのを思い出す。
しかし、「恋する文学」はそういうありきたりな番組とは一線を画す。ここでとりあげられるのは作家というよりはむしろ、作品を生んだ土地とそこに生きる人々だ。作品だけでなく、旅先で見たもの、出会った人たちから聞いた話などを通じて、橋本が何を感じたかが、この番組の最大のテーマである。
羊をめぐるハプニング
二部にわたる「恋する文学」のうち、「冬の旅」では、橋本の愛読書だという村上春樹の『ノルウェイの森』『羊をめぐる冒険』のほか、桜木紫乃『ラブレス』、渡辺淳一『阿寒に果つ』が、「夏の旅」では宮下奈都『羊と鋼の森』、渡辺淳一『花埋み』、桜木紫乃『蛇行する月』がそれぞれとりあげられている。
番組の初回となる「冬の旅」の『ノルウェイの森』の回では、橋本が出身地で、作品にも登場する旭川を久々に歩き、離れたからこそ気づいた故郷の風景のすばらしさを語る。さらに『羊をめぐる冒険』では前後編に分け、舞台となる「十二滝町」のモデルと噂される美深町を訪ねた。
美深では気鋭の写真家・岡田敦と対談し、そこでは、アイドルとして自分自身をどこまで出すかという話も出てきた。このとき彼女が「あまり自分をアピールしすぎても、アイドルとしては先が短くなってしまう気がする」と語っていたのが、いまとなっては意味深に思える。