橋本奈々未が語る「幸せ」
印象深いシーンとしてはまた、「夏の旅」の『羊と鋼の森』の回で、作品の舞台となったトムラウシを訪ねたときには地元の人とこんなやりとりがあった。
トムラウシは山にある集落で、小中学校しかないので、子供たちは義務教育を終えると、ここから離れなければならない。そこで橋本が出会った女性の一人も、いまは子供たちと別れて暮らしている。このとき、子供を育てるなかで色々と悩みながらも自分も親として成長するのかもしれないと言う女性に、橋本は自分と母親との関係について話しながら、一緒に涙する。こんなふうに他人の心にさりげなく寄り添うことは、なかなかできることではないだろう。
この番組でもっとも印象に残るのは、訪れた土地の人たちに橋本がじつに自然に声をかけたり、話を聞いたりしていることだ。
「冬の旅」の『ラブレス』の回では、同作の主人公がかつてにぎわいを見せた釧路のキャバレーで歌手をしていたことから、当地のキャバレーで実際にホステスとして勤めていた女性にも話を聞く。自分がけっして望んだわけではない職に就いた体験を語る女性に、橋本はじっと耳を傾ける。