なお、今回のドラマの脚本は、これまでたけし主演で『昭和四十六年、大久保清の犯罪』や『イエスの方舟――イエスと呼ばれた男と19人の女たち』など、多くの実録ドラマを手がけてきた池端俊策である。いずれの作品も問題作にして傑作だけに、「破獄」にもおおいに期待が高まる。
とはいえ、吉村昭の『破獄』がドラマ化されるのはこれが初めてではない。いまから32年前、1985年にもNHKでやはり単発ドラマとして放送されている。このときの主人公は脱獄囚で、いまは亡き緒形拳が演じた。

NHK版「破獄」は現在、NHKアーカイブスに所蔵され、埼玉県川口市の同施設のほか、全国のNHKの各放送局に置かれた番組公開ライブラリーで視聴可能だ。この記事では、今回あらためてドラマ化されるにあたり、このNHK版について原作との違いなどから振り返ってみたい。
人間性を奪う獄中生活に抗って
NHK版で何より印象に残るのは、監獄における囚人の過酷な扱いだ。冒頭からして、青森刑務所に収監された佐久間が、裸になって刑務官から体を隅から隅まで調べられる場面で始まる。このとき、津川雅彦演じる看守・鈴江圭三郎に、肛門に指を入れられた佐久間は、放屁して抵抗を示す。