
大宅賞はこれまで、同じく日本文学振興会の主催する芥川賞と直木賞と同様、数名の選考委員が候補作のなかから授賞作を選ぶという方式がとられてきた。しかし、今回のリニューアルにより、候補作について、ネットを通じての読者投票と、日本文学振興会が委嘱した有識者による投票を行ない、その集計結果を参考に選考顧問の後藤正治(ノンフィクション作家)立ち会いのもと授賞作を決めることになった(ネット投票はすでに5月8日0時をもって終了している)。
しかし、ネット投票は、投票ページにコメント欄が設けられていたとはいえ、きちんと読んだうえでの投票であるかどうかまではチェックされなかったようだ。はたしてそうした票を選考基準にしてよいものか、懸念は残る。
もっとも、それ以前に私が心配なのは、大宅賞がこれほど大きくリニューアルしたにもかかわらず、どうも世間にはあまり知られていないらしいということだ。少なくとも、私のツイッターのタイムラインで(出版関係者も多数フォローしている)このことを話題にした投稿は見かけなかった(私自身、大宅賞についてたまたま検索して、リニューアルしたことを初めて知り、驚いたのだった)。これがもし、芥川賞や直木賞が読者投票を導入したことになったのなら、ニュースでは大きく報じられただろうし、ツイッターなどSNSも大騒ぎになったことだろう。