ついに迎えた10周年の締め。果たしてどんなステージになるのかという客席の期待と緊張の中、真っ赤なドレスに身を包んで登場した中村 中は、頭に天の邪鬼にちなんだツノを生やし、エレアコを手にして、イントロなしで「不良少年」を歌い始めた。しっかりした音感の持ち主でなければできないドキッとする幕開けだ。観客に挑むのか、自分に挑むのか? 張り詰めた歌声で緊張感を持続したままテンションが上がる。
かと思うとドラムから始まった2曲目の「チューインガム」は、一転して穏やかな表情で聴かせる。そして3曲目の「世界が燃え尽きるまで」はハンドマイクで自ら手拍子を取り、終末感の立ち込める歌詞を躍動感豊かに披露する。
引き続きハンドマイクで「真夜中のシンデレラ」を歌うと、背景には雲が映し出され、ベースの根岸孝旨に寄り添うように「ちぎれ雲」。この曲が根岸との共同作業の始まりとなったことを思い出した者も多いだろう。アルバムと同じく途切れなく続いた「台風警報」の絶唱に、場内から大きな歓声が轟き始める。大坂孝之介のジャジーなピアノが光る「鳥の群れ」で、地声とファルセットを巧みに使い分けて音域の広いメロディを歌いこなすところも圧巻だ。
これに続くMCでは、途中から大坂のピアノをバックに、ラブソングに向かう心境を告げて「ここにいるよ」「思い出とかでいいんだ」、そして真壁陽平がスライドギターで活躍する「裸電球」へと繋げる。