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「ハクソー・リッジ」正気と狂気と地獄の戦場。ややこしいままに叩きつけられたよ

そんな泥沼の戦場で、デズモンドは衛生兵としての職務を全うしようとする。銃は持てないから撃たれたらそれまで。敵味方がごく近い距離で入り乱れ、誰もが目を背けたくなるような戦場で正気を保ち、もう一人、あともう一人と負傷兵を担いで崖の向こう側へ救出するデズモンド。

このあたりで観客は、今までアンドリュー・ガーフィールドが積み上げてきた「いい奴だけど、こいつちょっとやばいな……」という演技の意味を知る。デズモンドはキリスト教の教えで極限状態に耐えられる、別ベクトルの狂人なのだ。戦場で兵士を助けることが神から与えられた試練ならば、それに耐えることは彼にとって喜びとなる。だから段々デズモンド自身が負傷兵を欲しているようにも見えてくるし、彼が日本兵すら救出したのは「負傷兵なら誰でもよかった」からではないか。言い方は悪いけど。実際のデズモンドによる救出作業は映画ほどハイペースではなかったようだけど、映画では短い時間に救出のための悪戦苦闘が凝縮されているから余計そう見える。

このように『ハクソー・リッジ』は際どい主題を扱っている映画なので、敵味方に公平に沖縄戦という題材を描いた作品ではない。一番ひどい目にあったであろう沖縄の住民たちは画面に登場しないし、日本兵のメンタル的な部分もほぼ考慮されない。沖縄戦はデズモンドにとっては信仰と信念が試された試練であり、デズモンドの主観に沿って作られた作品だから当然だ。いつしか映画は、デズモンドという狂人を狂人として描いたまま、兵士たちの救いとなる戦場の聖人としての側面も描き出すに至る。そしてあのラストだ。狂っているのは誰なのか。デズモンドは聖者なのか狂人なのか。

ややこしい話にもかかわらず、『ハクソー・リッジ』には本当に釘付けになった。おれが軍事オタクだからというだけではない。戦争と信仰というややこしい題材を、ややこしいままに叩きつけられたような気がしたからだろうと思う。
(しげる)

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    「「ハクソー・リッジ」正気と狂気と地獄の戦場。ややこしいままに叩きつけられたよ」の みんなの反応 1
    • 匿名さん 通報

      メル・ギブソンもよくCMで顔出しできるよなって思ったけど、このレビュー書いた人も神経が極太だね。どっちも(メルは中国から、この人は配給会社から)たんまりお金貰ってんだろうね。

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