885日、東京の新木場STUDIO COASTにて、『hide presents MIX LEMONed JELLY』(以下MLJ)が開催された。 MLJとは、まだ日本にフェスという言葉がなかった1990年代に「楽しいこと、面白いものをたくさん集めて、お祭りをやろう!」とhideが発案して始めたイベント。
今年も彼のその精神を受け継ぎ、共鳴したアーティストが約30も集結して、盛大なお祭りとなった。

会場には、RIGHT STAGE、LEFT STAGE、BLUE SKY STAGE、ISLAND STAGEという名前のステージが4つ。BLUE SKY STAGEはその名の通り野外、ISLAND STAGEはDJ中心のステージとなっている。その他、フェスには欠かせないグッズ売り場やhideの曲名をつけたカクテルやフードを販売している屋台等が並び、会場に華やかな雰囲気を添えている。

RIGHT STAGEの開演時間少し前に、ステージの幕に1997年のMLJ時のhideの姿が映し出される。hideにナビゲートされるように、この日の出演バンドの写真が次々と映し出される。
映像が終わった瞬間に幕が落ち、「おはようございます! いくぞ!」というTAKAの声でdefspiralのステージが始まった。昨年のMLJではトリを飾った彼らが、今年はトップバッター。曲は、hideの「ROCKET DIVE」。hideのイベントには常連の彼らだけに、カヴァーというよりも自分たちのレパートリーのように自然と演奏している。エッジの効いた大人のロック連発に、会場に入ってきたばかりの人たちの拳も振り上げさせるパワーは、さすが。

RIGHT STAGE とLEFT STAGEは、交互にライブが行われる。
LEFT STAGEには、全員が宇宙服に身を包んだSPEED OF LIGHTSが登場。途中でhide with Spread BeaverのKIYOSHIが飛び入りして観客を盛り上げる。そして、RIGHT STAGEに登場したのは、ニューロティカ。はじけるようなパンキッシュな演奏を連発し、ラストの「絶体絶命のピンチに尻尾を高く上げろ」では、恒例の掛け合いでファンを喜ばせた。

メンバー全員がステージに出てきて、「さぁ、ライブのスタート!」と思いきや、いきなり「普通のバンドだったらここからライブが始まるんだけど、jealkbのライブはMCから始めさせていただきます」という日本一腰の低いヴィジュアル系バンドjealkb。昨年、メンバーが増えて、この7月には「第二章」と銘打ったニューアルバムをリリースしたばかり。
ポップなセンスはそのままに、より硬派により激しい楽曲をプレイしたが、さすがにお客さんをひきこむ力はピカイチ。一番うしろの観客まで巻き込んで、会場を揺らしていた。

2人お揃いのスタイリッシュな衣装で登場したLM.Cは、観客にヘドバンをあおりながら、激しい曲を立て続けに演奏。女性メタルバンドAldiousは、テクニカルな演奏で観客を圧倒した。hideの弟分的存在のJは、今年ソロ活動20周年。ちょうどMLJの1回目が開催されたのが20年前なので、その思い出を語りながら、ストレートで飾り気ないロックを炸裂させた。
hideのメドレーからライブをスタートさせた大門弥生は、ギターを弾きながら歌うスタイルもさまになっていた。
 
hideと同期の筋肉少女帯は、50代パワーを炸裂させる。実際にhideとセッションをしたり、イベントに出演してもらったエピソードを話しながら、代表曲「イワンのバカ」「日本印度化計画」「踊るダメ人間」を演奏。「hideさんに習って、ギタリストだけど1曲歌います」と言って、ギタリストの橘高文彦が「小さな恋のメロディ」を歌い、最後は「10月25日にニューアルバムを発売します」と発表してステージを下りた。

LEFT STAGEの最後を飾るのは、ミクスチャーロックを牽引し続ける山嵐。かつてhide MUSEUMのCAFE Le PSYENCEに出演経験があることから、このイベントに出演することになったという。
楽器隊の轟音と激しいラップが、会場の空間をねじふせていく。20周年のMLJ、20周年を迎えた山嵐が出演できるのは、タイトルと主宰者のワガママに本気で向かい合って、本気で笑って楽しんでるあなたたち、お前たちのおかげです。熱い音楽の絵を描いていきましょう」と地元愛あふれる「湘南未来絵図」でステージを締めくくった彼ら。ヘヴィだけど、どこか人情味のある暖かい余韻に包まれていた。

灼熱の炎天下のBLUE SKY STAGEでは、熱い熱いライブが繰り広げられていた。トップバッターのカルメラはホーンセクションのいる8人組で、ジャジーな雰囲気ながらノリのいい楽曲で観客を沸かせた。
hideファンのメンバーがいることから、今回の出演が決まった名古屋のアイドルグループ「チームしゃちほこ」。5人色違いの衣装に身を包み、キュートで元気いっぱいの歌声を聞かせてくれた。女性ロックバンドexist+traceは、クールで激しいサウンドでファンを魅了した。続いて、hide with Spread Beaverのキーボーディストとして、ゆかりの深いDIE率いるKISS THE WoRLD。中盤から、defspiralのTAKA・RYO、CUTTが飛び入りして、「ROCKET DIVE
で観客を盛り上げた。

Gremlinsは、現在、活動を休止中のナイトメアのギタリストHitsと、ドラマーKNZの2人からなるユニット。眉の上に小さな角をつけた独特のヴィジュアルのHitsは、「僕自身もギターと出会う、音楽と出会うきっかけがhideさんだったので、今日、出られてとても嬉しいです」と、MC。ベースにナイトメアの盟友Ni~yaとギタリストになお(DaizyStripper)を迎え、ノリのいいダンサブルな楽曲を披露した。MAGUMI AND THE BREATHLESSは独特の世界観で、観る者を圧倒。カルメラのホーンセクションも参加して、よりいっそう華やかなステージを見せた。

STARMARIEは5人組女性ダンスユニットで、ドールっぽいパフォーマンスを見せてくれた。heidi.は、和テイストのギターサウンドで夏らしさを演出。アップテンポのダンスチューンで会場を踊らせた。BLUE SKY STAGE のトリを飾ったDaizyStripperは、外見もセトリもhideへの愛が全面にあらわれていた。なんと全員が、hideのコスプレ。ギタリスト2人は、hideモデルのギターを持っている。最後に歌った「letter」はhideへの想いを書いた曲で、心をこめて歌い上げた夕霧は、想いが届いたかを確認するように空を見上げて、「hideさんに出会えた俺たちは、最高に幸せ者だ!」と叫び、ステージを下りた。

ISLAND STAGEは、入口付近の比較的小さなスペースだったが、常にお客さんがあふれるほどの人気だった。hideのイベントではおなじみの桃知みなみ、DJダイノジ、DJ HIROAKI ASAIと続いた後、Kiyoshiはギターを持って登場。アコースティックギターでオリジナル曲を2曲、「限界破裂」「DOUBT」を歌った後、ゲストにTAKA(defspiral)を呼び入れてしっとりと「FLAME」を歌い上げた。

hide Film GIGでは、1997年のMLJ初回の貴重な映像が流された。その後、DJ INAは45分間ノンストップのhideメドレーで、中盤からはお客さんをステージの上に呼んで踊らせ、hideのライブを彷彿させるシーンを見せてくれた。元ヴィジュアル系バンドのミュージシャンという変わった経歴を持つ桂りょうばは、古典落語の人情噺「しじみ売り」を披露。Island stageは、DJあり、トークあり、ライブあり、落語ありと、バラエティに富んだステージだった。

4つのステージがすべて終わり、この日のイベントのトリはRIGHT STAGEのZEPPET STORE。hideに見いだされて、LEMONedレーベル発足のきっかけとなったバンドである。「hideさんに愛されて愛されまくったZEPPET STOREですが、今年もステージに立たせていただいて感謝しています。完成品は間に合わなかったけど、hideさんに届くように歌います」と言って演奏された「ROSE」を、観客はじっくりと聞き入っていた。

すべてのステージが終わった後、MCの浅井博章が登場し、再び出演者をステージに呼び込む。ラストは、全員で「ROCKET DIVE」を演奏して、この日のイベントは幕を閉じた。

ライブという楽しいお祭りの余韻が名残惜しくて、「まだまだ遊び足りないよー!」と叫んでいたhideも、この日のMLJの楽しくて自由な空気を見て、きっと空の上から目を細めていただろう。「hide」というひとつのキーワードだけで、多くのアーティストとファンが集まるエネルギッシュでクリエイティブなこのイベントは、これからも多くの人を楽しませ続けてくれるに違いない。
(取材・文/大島暁美)