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なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる

なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる


茨城県の水戸芸術館で、デイヴィッド・シュリグリーの企画展「ルーズ・ユア・マインド―ようこそダークなせかいへ」を開催しています。デイヴィット・シュリグリーはイギリス人アーティストで、ドローイングや立体などのアート作品だけでなく、マンガやZINEの制作、ミュージシャンとのコラボレーションといった幅広い活動をしています。

展覧会のサブタイトルにもあるように、会場に並ぶ作品からは英国人らしいアイロニカルな表現が感じられ、思わずニヤリとしてしまいます。作中にある文章や言葉がポイントになる作品が多いのも特徴です。イギリス人らしいユーモアとは、アメリカのコメディアンが見せるような分かりやすいものではなく、じわりじわりと面白みが伝わるものなのだそう。

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会場にある作品は撮影可能ですが、作家の遊び心で会場の各所にこのような掲示があります

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作品に書かれた言葉を解説するカードも用意されています。ユルいイラストと相まった、何ともいえない世界観です


入り口を入ってすぐに目に入るのが、ネオン作品の《展覧会》。今展は、メキシコ・チリ・韓国・ミュージランドを巡回し日本に上陸した国際巡回展で、こちらは日本の会場となる水戸芸術館のみの展示となります。“展覧会”という文字に「そのままじゃないですか」とツッコミたくなります。でもこの字、何かが足りない…?

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《展覧会》(2015-進行中)

展示作品の中で唯一触れられる作品《死の門》。この扉を開けて中に入ります。「死の門」とは、あの世に行く死者が通る一方通行の扉のこと。会場ではもちろん行き来できるんですけれどね。

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《死の門》(2009)


水戸芸術館では展覧会の開催と合わせて、様々な関連プログラムが企画されています。今展ではその中の一つに「シュリグリーで英語レッスン」というイベントが行われています。展示作品を用いた英会話のワークショップだそうで、同館でも初の試みなのだとか。ブラックユーモアの散りばめられたシュリグリーの作品が、どのようにレッスンに反映されるのか気になるところです。高校生から大人を対象にした第1回にお邪魔してきました。

日本人の店員は疲れを顔に出さないが、イギリスでは出すのが普通?


なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる
講師のトム・ギブさん

「シュリグリーで英語レッスン」はイギリス人のトムさんが授業を行います。そのおかげでイギリスの習慣や文化も学べるワークショップとなりました。参加した後はシュリグリーの持つ感性に、より共感できるのではないでしょうか。

なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる
講師のトム・ギブさん

トム先生の最初のレッスンは、ドローイングが展示された部屋で行われました。まずは簡単な会話から。

「イギリス人になりきって演技してみてください」(トム・ギブさん 以下同)

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トム先生が見せるのは、英語で「boring(つまらない)」「cold(寒い)」「angry(怒っている)」など、自分の状態を伝える単語が書かれたカード。自分に配られたカードにある単語をジェスチャーだけで伝えます。相手はジェスチャーを見て「Are you cold?」など、カードにある単語を当てていきます。シャイな日本人にジェスチャーは難しいかと思いきや、参加者の皆さんはなんだか楽しそう。

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あらら…どうやら「退屈」や「つまらない」のジェスチャーには苦労している様子。日本人はあまり顔に出さない表情かもしれません。

トム先生によると、建前を重視する日本人はあまり本音を見せないものですが、イギリス人はありのままを見せるのが普通だそうです。

「日本人の店員は疲れていても表情に出しませんが、イギリス人は隠しません」

イギリスで買い物をする際に「店員の機嫌が悪いようだけれど、何か悪いことをしたかな…」と懸念する必要はありません。それが通常なんですね。


イギリス式のジェスチャーでレッスン


次は《リアリー・グッド》という作品の前で行います。同作はロンドン市の企画でトラファルガー広場に展示された高さ7mのブロンズ彫刻の、原寸大のバルーン版です。フェイスブックで「いいね」をもらうとなんだか嬉しいものですが、これは随分とビッグな「いいね」です。

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《リアリー・グッド》(2017)

ここでは、トム先生がいいねのようなジェスチャーを教えてくれます。例えば、口に人差し指を当てて「シー」とすると、静かにしましょうという意味が伝わりますね。今回も英単語が書かれたカードが配られ、ペアを組んだ相手のジェスチャーの意味を英語で当てていきます。イギリス式なので、ちょっと見慣れないサインもあるのかも…?

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《リアリー・グッド》(2017)

紹介されたサインの一部がこちら。
・「おでこを拭う」=hot!(暑いなあ)
・「人差し指で鼻を触る」=secret (内緒だよ)
・手のひらを下に向けて振る=go away (あっちに行って)
・人差し指と中指を絡める=I wish (…を祈るよ)
・親指と人差し指をすり合わせる=money (お金)

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イギリスでは、下に手を向けて振ると、「come here」ではなく「go away」の意味なので、注意が必要です。

出川イングリッシュは素晴らしい!?



なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる
《おばけ》(2014)


3つ目のレッスンを行うのは、《おばけ》という作品の前。見ると台の上には何も置かれていません。周囲に貼られているのはシュリグリーが制作した彫刻を描いたドローイングなのですが、すでに彫刻はこの世にありません。さまざまな人びとがスケッチした後に、その「何かの彫刻」は破棄されてしまったためです。ここにあるスケッチはまるで作品の残像のようです。

ここでは、モノプリントのドローイングに描かれた「potato」「piano」「car」「sun」といったモチーフを使います。これらの単語が記されたカードが配られ、自分の持つカードの単語についてその言葉を使わずにペアになった相手に英語で説明し、当ててもらいます。最初のレッスンの時にあった作品がヒントになるのですが、会話に集中してあまり記憶に残っていないかも…? ここでトム先生のアドバイス。

「英語が得意じゃない人は『出川イングリッシュ』を参考にしてみてください。テレビ番組『世界の果てまでイッテQ!』でお笑い芸人の出川哲朗さんが駆使する英語は、文法的に合っていません。ですが恥ずかしがらずに伝えようとする度胸の良さでコミュニケーションを成立させているのが、『出川イングリッシュ』の素晴らしいところだと思います」

単語を並べるような説明になってしまっても、臆せずに多くの言葉を発していけば相手にも伝わっていきます。ジェスチャーやサインで体を動かした参加者の皆さんには、もう照れもないようですね。

シュールな動画を見て、文章問題を回答!?


なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる
《おばけ》(2014)


最後は、シュリグリーが制作した「Laundry」というアニメーション作品を使ったレッスンです。



シュールな内容のアニメです。参加者はこの動画を見て映像を記憶し、登場人物の会話を聞き取ってプリントの設問を回答します。問題は6問、出題されます。その設問の一部はこちら。

1)How many washing machines are there?
「洗濯機は何台ありますか。」
2)How’s the weather?
「天気はどうですか。」

洗濯機の数を聞かれるとは…油断していました。

回答後は、アニメの中で行われた店主と客のやり取りをアレンジして練習します。シュリグリー作品ではコインランドリーで馬を洗っていますが、参加者の皆さんも様々なものを洗う設定にしているようです。そろそろイギリス式のブラックユーモアが板についてきたのでしょうか。コインランドリーでペットや動物を洗ったらダメですよ!!


ワークショップを終えた参加者の一人に話を聞くと「シュリグリーの展示を見て英語の勉強会にしては参加しやすいように感じ、職場の仲間と申し込んでみた。思った以上に体を動かすレッスンで、机に向かう勉強じゃないのがとても良かった」という感想も。

なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる

なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる


今回のワークショップはトム先生の工夫で、シュリグリー作品の世界観を活かしたレッスンとなりました。「シュリグリーで英語レッスン」は全3回で企画され、残りは小学1年~中学3年生が対象の1月8日の回のみ。残念ながら現在はキャンセル待ちの状態です。

展示は2018年1月21日まで行われています。作品からは独特の温度感が感じられるはず。イギリス人ならではのセンスを面白がることが、鑑賞の手助けになりそうです。

なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる


【開催概要】
デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド―ようこそダークなせかいへ」
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
開催期間:2017年10月14日[土]~ 2018年1月21日[日]
開館時間:9時30分~18時(入場時間は17時30分まで)
休館日:月曜日、年末年始(2017年12月27日(水)~2018年1月3日(水))、1月9日(火)
※ただし2018年1月8日(月・祝)開館
入場料:一般800、団体(20名以上)600円

「シュリグリーで英語レッスン」
講師:トム・ギブ(那珂市教育委員会 外国語指導助手)
定員:各回20名(要メール申込・先着順)
料金:無料(高校生以上は展覧会入場券が必要)
申込み:水戸芸術館現代美術センター 氏名、年齢(学年)、居住市町村名、人数、参加クラスを明記の上、atmcac@arttowermito.or.jpまで。
日時:
(1)11月25日(土)[高校生以上おとなクラス]※終了しました。
(2)12月2日(土)[小学1年~4年生クラス] ※終了しました。
(3)2018年1月8日(月・祝)[小学1年~中学3年生クラス] ※キャンセル待ちのみ受付中
各日11:00~12:00

(石水典子)

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    「なんだかジワジワくる、英国式ブラックユーモアを全身で感じる」の みんなの反応 5
    • 匿名さん 通報

      ユーモアは分からせるものじゃない,英国式であろうと米国式であろうと相手に理解できなければただの嫌味

      9
    • 匿名さん 通報

      メチャ  シュール。いいわ、これ

      6
    • 匿名さん 通報

      ユーモアは知識がないと理解できないものだから。判らなくて悔しいなら見識を広めなさい。ユーモアの土壌にある古典への抵抗は古典を知らないとそもそもできない。古い物は駄目だというだけの子供ではムリ。

      6
    • 匿名さん 通報

      茨城住みだし ちょっといってくる

      5
    • 匿名さん 通報

      はいはいインテリさんは凄いですね

      5
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