連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第12週「お笑い大阪春の陣」第67回 12月18日(月)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博 高橋優香子
「わろてんか」67話。列強にはさまれる小国の戦い「真田丸」「直虎」のようだ
イラスト/まつもとりえこ

67話はこんな話


団吾(波岡一喜)が出演することになって北村笑店は大繁盛。天満のほか、松島、玉造と寄席が3つになった。
だがそれが、太夫元・寺ギン(兵藤大樹)の機嫌を損ねることになってしまう。

きょうのニュースです!


いつもトキ(徳永えり)のことばかり褒める高瀬アナが「おはよう日本」(関東版)でついに藤吉(松坂桃李)について言及。「すごい頼りがいがあってかっこよかったですよね」と。

そして、その藤吉は、ついに前髪をきちっと分けて、意識や状況の変化を見せる。

女の大河ドラマ化


大阪寄席編になったとき、あらかじめ説明されていた、古典落語の伝統の文鳥派と、革新のオチャラケの寺ギン派、二大勢力の争い。
ここへ来て、再び、その勢力争いの話に立ち戻ったとき、その説明の仕方は、まるで大河ドラマだった。

拙著「みんなの朝ドラ」
で、朝ドラの人気ジャンルとなっている女の一代記を“女の大河ドラマ化”と呼んでいる私だが、「わろてんか」は斜め上をいき、戦国覇権争いと重ねてみせた。

北村笑店は、まるで真田や井伊のよう。
伝統派とオチャラケ派という強大な勢力の間で生き残りに揺れる小国として図解される。
ここで、藤吉(松坂桃李)は、彼がなかなか買ってこないで、てん(葵わかな)を怒らせた兜(54話。松坂が出演していた大河ドラマ「黒田官兵衛」のときのものだと話題に)をかぶっている。
あの端午の節句エピソードはここのためだったとすれば、なかなかすごい前フリだ。

寺ギンのワルっぷりが強調される。


これまでひとり、ろうそくの灯ったあやしい部屋に佇んでいる場面ばかりだった寺ギンだったが、67話ではその部屋に芸者たちをはべらしている。
かなりはぶりが良さそうだ。

だが、寺ギンは、芸人を容赦なく使い捨てる。
不慮の事故で怪我した芸人の女房に、借金を取り立てる風太(濱田岳)は、自分の仕事に疑問を持ち、てんは、お金を借りに来た彼女にお金を手渡す。
お金をあげちゃっていいのかな、返すのはいつでもいいわよ、程度にとどめたほうが・・・とも思うが、寄席のごりょんさんというものは、そうやって貧しい芸人たちの面倒を見てきたのかも。

寺ギンは、弱者(仲間)を決して見捨てない藤吉とてんとは違い、弱者を切り捨てる人間としてポジショニングされている。

お久しぶりの栞さま(高橋一生)


実家の製薬会社からは切り離されたらしいが、活動写真の会社は順調のようで、新興住宅地に映画館をつくろうと意欲的。
リリコ(広瀬アリス)も女優として活躍中。でも飽き性で、扱いが難しいようだ。

いよいよ鉄道開発にあわせて宝塚大劇場(1924年・大正13年)をつくった東宝の小林一三のようになってきたが、栞はあくまでも、演劇でなくて映画中心であるのは、てんたちの寄席とかぶらない配慮なのだろう。

ほかの芸人が新たな芸で売れているなか、くすぶっている万丈目(藤井隆)の後ろ面を見て、ゲラゲラ笑っている栞さま。
なぜ、あの後ろ面で・・・と謎でしかないが、こう見えてじつはいろいろプレッシャーを抱えていて、笑わないとやっていられないのかもしれない。
「笑いはひとに前に進む力を与えてくれる」という名言も出た。

(木俣冬)