神戸港と香川県の高松港とを結ぶ「ジャンボフェリー」という客船がある。片道およそ4時間。
私にとってはちょうど良い乗船時間で、運賃も2,000円ほどと手ごろ。のんびりした気分になれるので大好きな航路だ。

その「ジャンボフェリー」の名物が売店コーナーで食べられる立ち食いのうどん。なんせ“うどん県”こと香川県へ行き来するフェリーだから味にはこだわりがあり、コシのあるうどん、いりこ出汁が効いたスープが手軽に堪能できるので乗る度に食べることにしている。先日、そのコーナーのメニューの中に見慣れない文字を発見して注文してみたのが「島うどん」だ。

うどんに浮かんだ「おせんべい」


どんなものかと思ったら、うどんにおせんべいが浮かんだものが出てきた。関東でいう「歌舞伎揚(かぶきあげ)」、関西でいう「ぼんち揚(あげ)」に近いようなせんべいだ。

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

「えっ!せんべい!」と最初こそ驚いたが、スープに浸って徐々にふにゃっとした歯ごたえになっていくその変化が楽しく、また甘じょっぱい風味自体もうどん全体としっかり調和していて、すごく良いトッピングになっているのだ。

うどんに入っているのは、香川県の小豆島にある「タケサン」というメーカーのロングセラー商品である「島の味」というせんべいだそうで、それにちなんで「島うどん」というメニュー名になっているらしい。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

食べながら気づいたのだが、これってカップそばに入っている“天ぷら”に結構近いものなんじゃないだろうか。あれも後入れしてサクサク感を楽しんだり、人によってはふやかして食べるのが好きだったりするし、よく味わってみると純粋な天ぷらとは別の、あれはあれっていう感じの味だし。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

実際にカップそばの天ぷらをそのままカリッとかじってみたらかなりせんべいっぽかった。それで確信した。
うどんに天ぷら替わりにせんべいを入れてみてもきっとそんなに違和感はないはず。米や小麦粉、でんぷんを揚げたり焼いたりしたものがうどんに合わないわけがないのだ!


カップうどんに入れて食べ比べ


妙な勢いに乗って食べ比べをしてみることにした。ベースとなるうどんは東洋水産株式会社の「マルちゃん 赤いきつねうどん」に設定。うまくいけばいつでも手軽に“せんべいうどん”を試すことができる。

そこに入れるせんべいは、スーパーの米菓コーナーなどで一般的に売られていそうなものを中心にセレクトした。普段、お菓子のコーナーというとスナック菓子の方ばかり見ている私はせんべいの世界の広がりに驚かされた。


今回用意したのは「えびせんべい」(トップバリュ)、「おにぎりせんべい」(マスヤ)、「岩塚の鬼ひび 塩」(岩塚製菓)、「サラダうす焼」(亀田製菓)、「カレーせん」(亀田製菓)、「おばあちゃんのぽたぽた焼き」(亀田製菓)、「ばかうけ」(栗山米菓)、「ぱりんこ」(三幸製菓)の8点。歯ごたえのある硬めのものからソフトなもの、味付けにひねりがあるものなど色々選んでみた。タイトルには「せんべい」と銘打ったが、うるち米を使った“せんべい”だけでなく、もち米を使った“おかき”まであるが、そこら辺はあえて縛りをゆるくした。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

「マルちゃん 赤いきつねうどん」には大きなお揚げが入っていてそれが重要な位置を占めているのだが、今回はちょっと取り除かせてもらい、あとでチャーシューメンみたいな感じでお揚げがめちゃくちゃ入ったうどんを作って食べることにした。ちなみにこのお揚げもそのままかじってみると割とせんべいである。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

今回も大阪・此花区にあるミニコミ専門書店「シカク」に協力を仰ぎ、遊び心のわかる面々に集まってもらった。
私を含め計6人で食べ比べ、それぞれ採点していく。総合的に5点満点で評価し、全体的なバランス・食べごたえ・食感・香り・面白味・コスパについてもそれぞれ5点満点で採点してもらうことにした。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

結論から言うと「うおお!」と歓声があがるほど美味しかった組み合わせもあれば、「これは……別々に食べた方がいいっす」とみんながうつむくものまで幅のある結果となった。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

それでは、“やってみてよかった組み合わせ”ベスト3を紹介したい。

第1位
「岩塚の鬼ひび 塩」(岩塚製菓)
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

総合点4.3点
みんなのコメント(カッコ内はコメントをくれた人の名前):
「カップうどんにおいて手薄な“香ばしさ”を劇的にブーストしてくれる。入れ始めはかなり硬めの食感なので好みの歯ごたえまで育てる楽しみもある」(ヤマコ)
「おもち感が加わる!もうほとんど力うどん。
スープを飲むときに香ばしい風味が漂って最高」(たけしげ)
「普通に食べるよりも高級な食べ物になった感じ」(ゆりこ)
「ずっと硬さが味わえる」(香山哲)

第1位は「岩塚の鬼ひび」となった。厳密にはせんべいではなく“おかき”だ。“厚切りのお餅をじっくり丁寧に時間をかけて煎る事で、お米の風味あふれるあられに仕上がりました”と公式サイトの商品説明にある通り、そもそもがおもちなので、うどんとの相性が抜群なのだ。好みの柔らかさになるまでゆっくりスープに浸すことにより、焦がし風味がカップうどんに高級感をプラスしてくれるのも嬉しい。

第2位
「えびせんべい」(トップバリュ)

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

総合点4.2点
みんなのコメント:
「エビの風味、ふやけた時のほどよい食感、価格の安さ、どれをとっても文句なし」(たけしげ)
「なによりエビの香りが良い。浅くひたせばかき揚げを、深くひたせば餅を思わせる。
正統派トッピングといった印象」(ヤマコ)
「ちょっとふやけるとプニプニした面白い食感になる」(はやと)

僅差で第2位となったのがトップバリュの「えびせんべい」。100円を切る価格で販売されており、トッピングとしての手軽さも良い。エビの風味とうどん。合わないわけがない。「これ、普通にみんなやってるんじゃないの?」という意見も出るほどの違和感の無さであった。でんぷんせんべいゆえのふにふにした食感が、“カップそばの天ぷらを徹底的にふやかす派”にはきっと受け入れられると思う。

第3位
「ぱりんこ」(三幸製菓)

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

総合点3.6点
みんなのコメント:
「もともとの具になっていいぐらい合っている」(香山哲)
「軽くひたしただけでも香ばしさがスープに溶け込む、その軽さが魅力」(ヤマコ)
「柔らかくて香ばしくて結構好きだった」(ゆりこ)

いわゆる“ソフトせんべい”に属する「ぱりんこ」が第3位に。そもそもの食感が柔らかいので、スープにひたすとすぐにふやふやになる。そこが好きという意見もあり、もっと硬めの食感の方が好みだという意見もあった。第1位に選ばれた「岩塚の鬼ひび 塩」がハード版、この「ぱりんこ」がソフト版という感じで、好みによって使い分けるのがいいかもしれない。

いかがだったろうか。今回試してみて、可能性の海原に漕ぎだしたばかり、という感覚があった。たとえば海苔で巻かれたあられなんかを入れてみたらどうだろうか。柿の種を入れてみるなんていうこともできるな……あっ「ハッピーターン」の存在を忘れていた!などなど、考え出すとキリがないのである。

もしよかったら今度うどんを食べるときに家にあるせんべいやおかきをちょっと入れてみて、あんまり合わなかったら残りは普通に食べるという感じで試してみてください。

写真を見返していて、自分がスープの中から「ばかうけ」を箸で持ち上げているショットがあったのだが、完全にエビの天ぷらに見えた。
カップうどんに入れて美味しい“せんべい”がどれなのか教えます

なんだか得した気分だ。

(スズキナオ)