連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第18週「女興行師てん」第100回 1月31日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」100話「伊能ちゃん、てんに甘いわあ」有働由美子ボヤく
イラスト/まつもとりえこ

100話はこんな話


てん(葵わかな)は、リリコ(広瀬アリス)に、女のためのお笑いをやってもらおうと考える。

女たちが立ち上がる


てんは、北村笑店の取締役になった栞(高橋一生)に、リリコを映画の栞の会社から北村笑店へ移籍させる許可をもらう。
映画や演劇には女性が主役の作品があるが、万歳の世界にも女性の主役を作りたいとてんの思いは広がっていた。


リリコもリリコで、「うち笑いが好きやねん」とまた唐突に言い出す。

栞「失敗したらそれこそ笑いものや」
リリコ「笑ってもろうてなんぼの世界、本望や」
などと気の利いた感じの会話が成されたのち、移籍が実現化される。
藤吉が亡くなる前に、わざわざリリコに寄席に出ないかと口説いてから4年、ようやく、ここまで来た。

女たちが集まって「流行歌万歳」「絶世の美男美女万歳」などとアイデアを出していると、
興行は男に任せろ、と男たちはにべもない。
一時期「夫婦万歳」で一世を風靡した歌子(枝元萌)も「女はでしゃばるなとさんざん言われた」と振り返る。
打倒・男社会 という感じで、万丈目(藤井隆)夫妻の店・マンマンは、“女の砦”と化す。


となると、女性の万歳作家も必要になり、男社会の新聞社で苦しんだ楓(岡本玲)も加わった。
楓は、万歳なら女の「怒りや悔し涙を笑い飛ばせる」と意気盛んだ。

「わろてんか」100回にして、ようやく従来の朝ドラらしいエピソードが顔を出した。

万丈目、キャラ変


新しい万歳作家も参加したことによって、芸人300人のネタを支える「文芸部」を作ることになり、
部長には万丈目が就任した。

すっかり売れっ子作家になった万丈目は、なんだかすごくえらそう。それも、嫌味なおばちゃん方向で(こういうの藤井隆の得意技)。
初期、旅芸人をやっている頃の万丈目は、ちょっと意地悪キャラで、途中、寄席編に入ると、芸に精進し、仲間のことも大事にする誠実キャラに変わり、藤吉が亡くなったときには突如、彼を「ボン」と呼び出すなど、キャラが定まらないが(恐妻家なところだけは一貫している)、藤井隆が、その都度全力で演じているので、そういう人だったかも、と思えてきてしまう。

落語家がひとりで何役も瞬時に切り替えるように、変わり身の速さも芸のうちであって、藤井隆は、そういうことを吉本新喜劇で鍛えてきたのだろう。いわゆる型芝居みたいなこともできるし、そこに心情をちゃんと入れることもできるのは、さすがだ。
環境や相手が変われば人間はがらっと変わるものであるということを、万丈目から再認識した。

今日の、わろ点


栞「どんどん攻めていくんだ、ぼくも応援する」
栞とてん、電話を切る。
てん「どんどん攻めてくんだ(栞の真似)。 へい!(ニッコニコ)」
その気になって、リリコに万歳大会に参加させることを決めるてんだった。

てんは、その昔、藤吉に会いに大阪に行って悪い人にさらわれそうになったとき、栞に助けてもらってから、家のピンチにお金を融通してもらったり、何かと相談に乗ってもらったり、夫の藤吉よりも栞に頼っていることのほうが多いと思う。

「あさイチ」でも有働由美子が「伊能ちゃん、てんに甘いわあ」とぼやいていた。
可笑しかったのは、それを受けたイノッチの「事務所の先輩(六角精児)来てますよ」という謎のアピールだが。

松尾諭、登場


栞がてんに甘々なとき、彼の会社では社員たちが、不要になってきた楽士と弁士の対応に苦慮していた。
楽士、弁士はストを行っていて、リリコがそのひとり(松尾諭)と偶然に出会う。
角を曲がったらパンをくわえた女の子にぶつかるのではなく、牛乳もった怪しいおっさんが女の子(もう「子」じゃないか)にぶつかるという変化球で登場した松尾諭が、「わろてんか」を盛り上げてくれることに期待する!

「わろてんか」100回放送の日に、10月から放送される99作目の朝ドラ「まんぷく」のヒロインが発表された。演技派の安藤サクラで、昨年、夫・柄本佑との子を出産したばかり。
育児と朝ドラヒロインを両立させることになるそうだ。まだまだ朝ドラは楽しめる。
(木俣冬)