連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第3週「恋したい!」第15回4月18日(水)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

15話はこんな話


“彼女いない歴、生まれてから同じ年数”の律(佐藤健)だったが、弓道の試合に出ていた柏木高校の伊藤清(古畑星夏)に恋してしまう。

君(きみ)と呼ぶ


「先週は涙なくして見られませんでしたが、今週は一気に学園青春ドラマに」
「おはよう日本 関東版」の高瀬耕造アナの朝ドラ前コメントは、的確に「半分、青い。」の現状を語った。これぞ、報道アナウンサー。


清の矢がみごとに的を射て、律の心を清に釘(矢)付けにしたその日、
律とブッチャー(矢本悠馬)が、ラーメン、サイダー、五平餅、ねぎ焼き、お好み焼き、コロッケ と食べ物づくしでバドミントンをやっていると、シャトルが木に引っかかってしまう。
それを、通りがかった清が「まかせて」と弓でとる(弓矢を放ったわけではない)。
白いシャトルが、清の手に落ちたところを、
「小さな白い雛鳥が手の中にいるように見えた」と詩的なことをいう律。
なんか反応する清。
ドキドキの出会い。
ここで注目したいのは、女の子の「君 きみ」呼び。

少女漫画によくある「君」呼び。北川悦吏子ドラマも「君」呼びが多い。
「君」と呼ばれると上から目線ぽいと思う人も少なくないようだが、女の子が男の子を「君」呼びするのは、対等な印象、なんなら、女の子のほうが上位な印象もする萌え要素だ。
この場面では、お互い名前を知らないから、「あなた」か「君」しかなく、「あなた」より「君」であろう。
今後、名前を知ったあと清が律をどう呼ぶか、気になるところだ。「律」なのかな。


お互いの名前を教え合うとき、「旋律の律と書いて」と自己紹介する律。
いつも思うが、「せんりつ」と聞くと、「戦慄」のほうを真っ先に思い浮かべてしまう自分の素直じゃなさが悲しい。
「半分、青い。」15話。佐藤健が「なんつって」
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北川悦吏子の名作のひとつ。柴咲コウが聴覚を失った人物を演じ、彼女を支える友人たちの青春群像劇。

ともしび・昼


朝ドラの必需品・たまり場が登場。まさこ(ふせえり)が店主をつとめる鉄板のある喫茶店【ともしび】。いい感じに時代感の出たお店である。
放課後、ともしびで語り合う鈴愛(永野芽郁)、律、ブッチャー、菜生(奈緒)。
清は「中学生日記」(72年〜12年)にスカウトされたとかなんとかいう噂話をする。


名古屋の事務所が、NHK名古屋放送局が制作していた「中学生日記」の生徒役をスカウトという話はリアル。
例えば、北川悦吏子のドラマ「オレンジデイズ」(04年 TBS)の演出家のひとりである今井夏木は名古屋出身で、学生時代は演劇をやっていたが、少女時代、「中学生日記」にも出演していたらしい(スカウトかどうかはわからない)。

「ここで(ともしび)みんなで話題にするのやめて」と律が照れて、“朝露高校のトム・クルーズ”の恋バナを律の家に押しかけて詳しく聞こうとする菜生たち。
律は話したいのか話したくないのか・・・どうやら話したいらしい。これは14話で、「親友なのに 好きな子も打ち明けてもらってないのか」と鈴愛に言われたこととつながっていそう。律は、鈴愛やブッチャーたちと親友でありたいに違いないが、それを態度や言葉になかなか出せない、照れ屋さん、なんですね。


そんな彼を、ユーミンの「守ってあげたい」(81年)を歌って盛り上げる鈴愛たち。
「守ってあげたい」は薬師丸ひろ子主演の映画「ねらわれた学園」(81年)のテーマ曲。原田知世の「時をかける少女」のニオイはやはり弓道のみなのか・・・と思いつつ、「守ってあげたい」を原田知世はカバーしているのであった(「ごごナマ」では船越英一郎がすこし言及)。微妙に、原田知世そのものは出さないが、その気配を匂わせる「半分、青い。」

「時をかける少女」の主人公・和子(かずこ)だった原田知世が演じる和子(わこ)が用意したプリンを食べている4人。
「2個しかなくても あげる」と言っていた律。2個とは、鈴愛分は常にカウントされているのか。

結局、プリンは4つあったのか。それとも、2個を4人で分けたのか。

ともしび・夜


ともしびは、夜になると大人の社交場と化す。
こちらでは「ランバダ」(歌う石井明美は86年「男女7人夏物語」の主題歌「CHA CHA CHA」が大ヒット)がかかっている。
宇太郎(滝藤賢一)、弥一(谷原章介)、衣料品店の木田原五郎(高木渉)、理髪店の友永(スマイリーキクチ)が集まって、ぎふサンバランドについて語り合う。
そこへ、ボディコン売りの瞳(佐藤江梨子)がやって来て、飲んで愚痴る。

瞳「こう見えてもう30なんです」
宇太郎「見える」

サンバランドは、崖っぷちの瞳のはじめて通った企画であると聞いて、不安を覚える一同・・・。

それはそうと、ブッチャーが、律のマーブルマシーンを高速道路にたとえた台詞は、土地開発と呼応した台詞だろうか。

運命の人


「なんか運命みたいなもんやったらまた会えるって 連絡先なんか交換しなくても なんつって」と言い出す律。律が「なんつって」を使うとは。それもまたツボ。

鈴愛は「律は運命の人に会ったんや」と感慨にふける。
運命の人って、同日生まれの、あなたたちこそがそうじゃないんですか・・・と思うが、そのすれ違いこそがドラマだ。

夜、自室にこもって清の絵を描く鈴愛。
クッキーを食べずに、コーヒーだけでいいと言ってスケッチを続ける鈴愛。
それを見て、なにか感じる草太(上村海成)。

コーヒーを飲んで、また鉛筆を動かす。きっとコーヒーは苦かっただろう(ベタファー)。
「なんでしょう、なんやらほんの少し心がちくっとしましたが それが何か鈴愛にはわかりませんでした」
とナレーション(風吹ジュン)。
「人の心は流れ行く雲です」と締める。連続テレビ“小説”の面目躍如の文学的なナレーションだ。


昼の再放送前の「旬感ゴトーチ」では、岐阜の多治見を紹介。ゲストは矢本悠馬。五平餅を「日本人なら誰もが好きになる味」と紹介していた。
NHK、全力で「半分、青い。」推し中。
「木俣冬)