キャッシュレス化を進める日本 本当に現金主義にメリットはないのか?
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「キャッシュレス後進国」と言われる日本にも、若い世代を中心に徐々にキャッシュレスが浸透してきた。2018年4月、経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」というキャッシュレス社会を目指す提言を発表した。その狙いには、昔からの現金主義が根強い日本で、オリンピックに向けキャッシュレス化を進めたいということがあるようだ。キャッシュレス化に向かうと、現金の取り扱いが少なくなるので、銀行やお店への強盗が減る、買い物も簡単になるなど、様々なメリットを聞く機会も多くなっている。

そうなると、現金にはまったくメリットがないのだろうか。今回は現金主義のデメリットとメリットを考えてみよう。


キャッシュレス先進国に学ぶ現金主義のデメリット


世界的にキャッシュレス社会が進んでいる。特に有名なのはスウェーデンで、現金の使用率はたった2%ほどといわれている。スマートフォンのアプリでの決済が主流となり、高齢の方も、今の紙幣はどのようなデザインになっているのかわからないというほど、現金の出番がない社会だ。

現金を使わない暮らしになって、何が良かったか。それは店や銀行までもが現金を持たなくなったので、強盗などの犯罪が減っているということがあげられる。また、記録から脱税もできなくなり、紙幣や硬貨に触れなくてもよいため、衛生面もよくなったといわれる。加えて、お金のやり取りがないので、会計がスムーズであるということもある。

家計簿をつけるという作業も、異なる金融機関の複数の口座情報を一元管理するアグリケーションサービスのおかげで、自動的に支出の履歴が記録され、簡単になった。労力をかけなくとも、数字で支出状況を確認できるようになったのだ。

これらの真逆が現金主義のデメリットといえる。つまり、お金の管理をするには自分で記録をしなくてはいけないし、集計なども面倒で手間がかかる。いろいろなところに落ちていたり、複数の人の手を経てから自分にたどり着いたお金は不衛生。お金の出し入れで会計に時間がかかりがちだし、お金があることが見えるので、強盗などの犯罪が起こりやすい、こういったデメリットがある。ただ、このデメリットの逆がメリットかといえば、そうとも言えない。


家計管理の視点から考える現金主義のメリット


なかなかキャッシュレス決済に踏み切れない人の多くは、現金決済であることに安心感を覚えるようだ。その安心感は、自分が使うことができる「お金」が目に見えることによって得られている。つまり、お金の動きが把握しやすいことをメリットと考えているのだ。

では、実際の家計相談の場面から考えてみよう。家計がうまく管理できず「貯蓄が作れるようになりたい」と考えている人にはまず、クレジットカードの利用をストップしてもらう。これは、多くの人が感じる現金主義のメリットと同様に「お金の動きが把握しやすい」からだ。家計管理が苦手な人には、まず、自分は何にいくら使っているのかを知ってもらうことが大切だ。それに現金主義は非常に役に立つ。クレジットカードのような後払いシステムではないので、支出で混乱することも少ない。

また、使いすぎを防ぐ効果もある。家計をうまく管理できない人は、収入の中で支出を抑えるという感覚が鈍い。クレジットカードなどを利用してお金の動きが分からなくなってしまうと、自分ではそんなつもりはなくても、簡単に収入以上の支出をしてしまうことがある。

とにかく、お金の動きが目に見えることで使い方の把握がしやすいので、節約しようという気持ちが起こりやすい。そのため、「貯蓄上手」であるケースも多い。

現金主義は視覚的・感覚的にお金の動きが分かりやすく、貯まる様子もよく見えるので、減らしたくない、上手に使いたいという気持ちを後押しするものとなる。

つまり、現金主義のメリットは
・何をいくら使ったか感覚的に把握しやすい
・収入以上にお金を使うことを防ぐことができる
・貯蓄上手になる人も多い
以上のようなことが言える。

また、一つ忘れてはいけないのは、現金主義であれば「匿名」での決済が可能であるということもメリットの一つだ。カード社会では、そのカードの所有者が明らかになっている場合がほとんどで、だれが何を買ったかを監視されている状況に近い。それがないことも、現金主義においてはメリットと言えよう。
(横山光昭)