主役の波瑠、鈴木京香をはじめとして、やたらと朝ドラのキャスト出ているということでも話題の本作。
「記憶喪失とか?」
「それはドラマの見過ぎでしょう、朝ドラとか」
古賀室長役の沢村一樹、『ひよっこ』でえらく長いこと記憶喪失になってたもんね。
その沢村一樹が「脇役は倉庫の番に集中しろ!」と言ってたけど、脇役だったのは沢村一樹の方で、波瑠と鈴木京香は朝ドラ主演女優だ。
各役のキャラも立ってきて、脚本もノリノリになっているようで、レギュラー陣がわちゃわちゃやり取りしているのを見ているだけですごく楽しいんだけど……。肝心の事件の方はやっぱり大味でした!
最近、筆跡鑑定ばっかりやってないか?
今回の事件は、15年前に代議士・藤田晃一(堀部圭亮)の妻・里美(真飛聖)が突如失踪してしまった「主婦神隠し事件」。
例のごとく未解決となっていたこの事件が再捜査されることになったきっかけが、2018年になって新たに起こった、山中の橋からショップ店員・長瀬真智(吉井怜)が何者かに突き落とされたという事件。長瀬の車の中から、藤田里美とDNA型が一致する毛髪が発見されたのだ。
毛髪とともに、9桁の数字が羅列された謎のメモが発見されたことから、鳴海理沙(鈴木京香)は「文字」を手がかりに今回もバシバシ推理をしていく。
・車内に残されたメモが図書館の資料番号であることを割り出し、長瀬が「主婦神隠し事件」についての書籍をやたらと借りていたことが分かる(筆跡から、メモは長瀬が書いたものと判明)。
・矢代朋(波瑠)が、藤田里美の息子から借りてきた料理本に書き込まれた文字がにじんでいる→泣きながら書いたんじゃ!?→息子たちとの別れを知っていたのでは?
・里見が絵馬に書いた、2人の息子へ向けたメッセージの文体の違いから、次男・藤田陸人(百瀬朔)が養子であることを割り出す(陸人の実母は、里見の姉・河村綾子)。
・河村綾子が勤め先の定食屋で書いたとされる文字と、絵馬に書かれた藤田里美の筆跡が一致する→里美と綾子が入れ替わっているのでは?
相変わらずミラクル推理の数々だが、文字の形や線がどうこうといった、見た目中心の分析ばっかりで、鳴海さん、文書解析のエキスパートというよりは、筆跡鑑定の人になっていないだろうか?
もっと文章の中に秘められた謎とかを解き明かして欲しいのに……!
事件も謎解きも大味すぎる
わりと入り組んでいて、見ていても分かりづらかった今回の事件。真相はこんな感じだった。
・養子に出した陸人を取りかえそうとやって来た河村綾子を、藤田里美が誤って階段から突き落として殺してしまった。
・政治家を目指していた夫・藤田晃一はスキャンダルを恐れ、一緒に河村綾子の死体を埋めて隠蔽することに。
・罪悪感にかられた里美が「自首したい」と言い出したので、晃一は「15年の時効が来れば罪は消えるから」と説得し、里美を失踪させ、河村綾子として生きていくことにさせる。
・定食屋で働く河村綾子(に成りすましている里美)をたまたま見かけた長瀬は、「神隠し事件」の里美だと気づき、金をせびろうとしたら、里美に橋から突き落とされてしまった。
こんなややこしい事件の謎をバシバシ解決していっているものの、イマイチ「スゲエ推理!」と思えないのは、考え抜かれたトリックが仕掛けられた事件ではなく、全部、行き当たりばったりな犯行だからだろう。
河村綾子の死体を埋めて隠したのも、里美を失踪させ、河村綾子として生きていくことにさせたのも、みんな行き当たりばったり。ノープランで入れ替わり生活をはじめて、よく15年間もバレなかったなぁ〜!(しかも里美と綾子、特に顔が似ているとかでもない)
考えてみるとこのドラマの犯人たちは、偶発的に起こしてしまった犯罪を隠すため、泥縄で大ざっぱな隠蔽工作をしているだけというケースが多い。
第1話の犯行は一応、密室殺人事件になってはいたものの、そのトリックは、被害者自らが鍵を閉めて密室を作っていただけだし……。
ゆるい!
それなのに、なぜか警察は事件を解決することができず、そのまま未解決事件になっているのだ。ボンクラすぎるぞ、警察。
また、鳴海たちが文書を元に、ズバズバ推理をしているといっても、その「文書」の入手方法はわりと偶然に頼っているのだ。
里美の息子たちに話を聞きに行ったら仲良くなって、里美の文字が書き込まれた料理本を貸してもらった……って、そんなことある?
さらに、里美と綾子の入れ替わりを見抜いたのはいいものの、その里美をどうやって捕まえたかというと、息子たちの大学の前に行ってみたら、たまたま里美がいたから。
15年も姿を隠していた里美が、唐突に息子たちの通う大学に行かなきゃならない伏線、あった?
事件も謎解きも全体的に大味だ。
人情ドラマだと思えばアリ!?
とはいえ、今回のゲスト・真飛聖の憂いありまくりな母親役や、堀部圭亮の心ない政治家感全開の演技には、見ていてグイッと引き込まれてしまった。
相変わらず脚本の粗は目立つものの、ベテランを揃えたレギュラー陣や、毎回のゲストたちの演技力で、何となく楽しく見られてしまうというのも、このドラマの魅力だろうか。
「警視庁文書捜査官」とタイトルにつけられているだけに、文書を元に論理的な推理を繰り広げる本格サスペンス! ……と思い込んでしまっていたけど、毎回、最後は論理もクソもなく、人情に訴えかけて自白させるというウェットな展開になっている。
サスペンスというよりは、警察を舞台にした人情ドラマという認識で見た方が違和感なく楽しめるのかも知れない。
(イラストと文/北村ヂン)
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