イタリア人的には普通?パスタの茹で汁で皿を洗う合理的な理由


パスタを茹でると残る大量のお湯、みなさんはどうしているだろうか。

おそらくだが、パスタをあげる時にそのままシンクに流す人が多いんじゃないかと思う。
自分もそうだった。ちなみにパスタ1人前(乾麺で100グラム)を茹でる際に目安とされるお湯の量は2リットル。2人前の場合は3リットル程度。一食分を茹でるだけでかなりのお湯を捨てることになる。

しかし、先日イタリア人の友人宅に招かれて食事をした時、残しておいた茹で汁で皿を洗うという光景を目にした。聞いてみると、母親がそうしていたのがそのまま習慣となり、パスタを茹でるときはいつもそうしているらしい。
え、それってイタリア人的には普通のことなの?

ちょっと気になったので、いろいろと調べてみました。

イタリア人はパスタの茹で汁で皿を洗う


その友人は、パスタが茹で上がったらざるにあげるのではなく、トングを使って鍋から直接フライパンに移してソースと和える。こうすることで鍋には茹で汁がそのまま残る。皿を洗うお湯として使えるだけでなく、パスタとソースを和える時いつでも茹で汁を追加できるから都合がいいらしい。

鍋に残った茹で汁はボウルか使い終わったフライパンに移し、使い終わった食器をしばらく浸けておく。そうすることで、皿にべったりと付いたソースやオイルが落ちやすくなる。友人はその後洗剤とスポンジでさっと洗うが、人によってはそのまま水ですすいで済ませてしまう人もいる。


この洗い方、最初に聞いたときは温かいお湯で油汚れを落とすのだと思っていたら、実は少し冷めた茹で汁でもいいらしい。半信半疑で自宅でもやってみると、確かに冷めていても油汚れは落ちるし、汚れの量によっては洗剤を使わなくても大丈夫そう。どういうメカニズムなんだろうか。

調べてみると、茹で汁にはパスタのでんぷんが溶け出していて、それが油汚れを吸着するのだとか。でんぷんに吸着された油はそのまま水の中に取り込まれるため、洗剤を使わなくても水ですすぐだけで流れ落ちる。そのため、水温が高くなくても油汚れを落とすことができるのだそうだ。


ただ、ラビオリのように中に肉やチーズなどの具が入ったパスタはお湯に油分が流れ出てしまうので皿洗いには適していない。皿洗いに使うなら、乾燥パスタの茹で汁を使うのがいいようだ。


髪のパックやむくんだ足にも効果あり!?


パスタの茹で汁についていろいろと調べていたら、実はイタリアでは皿洗い以外にもさまざまな用途で使われていることがわかった。その一部を紹介したい。

(1)足湯として再利用する

パスタの茹で汁にはアミノ酸も含まれていて、新陳代謝を促す効果がある。立ち仕事などで足がむくんでしまう人に足湯としても使われる。
さらにでんぷんは皮脂の汚れを除去してくれるので肌がすべすべになる。ユーカリやラベンダーのエッセンシャルオイルを数滴垂らすと、さらにリラックス効果がアップ。

(2)髪をパックする

パスタの茹で汁は髪をパックするのにも使うことができる。茹で汁を冷まして髪になじませ、トリートメントの要領でマッサージする。茹で汁に含まれるアミノ酸が髪の毛をしっとりと柔らかくしてくれ、さらにタンパク質が髪のダメージを補修してくれるという。髪のパックとして利用する場合は、茹でる際に塩を入れないほうがベターのようだ。


(3)蒸し器として利用する

パスタだけでなくもう1品欲しい。そんなときは茹で汁の入った鍋を蒸し器として活用するのがおすすめ。鍋の上にざるを置いてジャガイモやニンジンなどの野菜を並べ、フタをすれば簡単に蒸し野菜ができる。イタリアではオリーブオイルや塩で食べるのが定番だが、日本なら生姜醤油やポン酢、胡麻だれなどでも美味しいかも。

(4)子供のおもちゃとして小麦粉粘土を作る

イタリアでは家庭で小麦粉粘土を作り、おもちゃとして子供に与える習慣があるが、この小麦粉を練る際にパスタの茹で汁を使う人もいる。食紅で色をつければカラフルになるし、油粘土のように手に嫌な匂いが残らないのもいい。
何より市販の粘土と違って仮に口にしても心配がないのは嬉しいポイント。ちなみにレシピは以下の通りで、材料をすべて混ぜて練るだけ。

・小麦粉 300g
・塩 小さじ1(防腐剤代わりになる、1回遊んで捨てるならなくてもOK)
・オリーブオイル 小さじ1(手触りがなめらかになる、なくてもOK)
・水 100ml(パスタの茹で汁で代用可)

食器を洗うだけでなく、髪のパックや足湯、さらには子供のおもちゃづくりにも活用できてしまうパスタの茹で汁。そう言えば日本でも米の研ぎ汁をフェイスパックや野菜の茹で汁に活用する人がいるが、それと似たようなものなのかも。

(鈴木圭)