連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第24週「風を知りたい!」第140回 9月11日(火)放送より
脚本:北川悦吏子 演出:二見大輔
「半分、青い。」140話。秋風羽織は扇風機の伏線だったのか
「秋風羽織の教え 人生は半分、青い。」秋風羽織  マガジンハウス
北川悦吏子が秋風羽織の体で記した秋風本。この手の本には「日本科学技術大学教授・上田次郎の どんとこい、超常現象」(学習研究社)という名著があるが、秋風本は作家本人が書いてるからホンモノ感がある。

秋風羽織の教え 人生は半分、青い。

140話はこんな話


律(佐藤健)はついに会社を辞め、鈴愛(永野芽郁)と共に「そよ風の扇風機」開発に乗り出した。

扇風機のお話なんですよ・・・


「おはよう日本 関東版」でお馴染みの高瀬耕造アナの朝ドラ前の「朝ドラ送り」と呼ばれるトークでは、今日から気温がぐっと下がるが「『半分、青い。』では扇風機のお話なんですよ・・・さあどうなりますか」と小首を傾げていた。

本編では「風」「風」「扇風機」とにわかに「風」モードに入ったところ、合わせて周辺も「風」を読み、そろそろツッコミをはじめたかのようにも見えなくもない。
朝ドラ後の「あさイチ」の朝ドラ受けでは、華丸が北川悦吏子と対談することになったが生ではなく収録だと発表。フジテレビの「27時間テレビ」も生放送でなく収録が多かったが、昨今のテレビ、危機管理が強くなり生を避けているのだろうかということはここでは問わない。視聴者としては生でも収録でもいいから、華丸には最後の最後で北川へ大いにツッコんでほしいだけだ。

だが本編は負けてない。今日から気温がぐっと下がるが『半分、青い。
』では扇風機・・・という疑問を吹き飛ばすかのように、風は風でも「秋風」を出して来た。
秋風羽織(豊川悦司)も「風」「扇風機」の布石であったようだ。
さらに秋風の台詞「一見余計なことする時間も回り道もあっていいと思います。いろんなことがあってすべてが今につながっている」(45話)が律の心を支え、ついに退職届を出すに至る。

「君のような人材が」「残念だ」と上司に言われて律が深く頭を下げるシーンでは、これまで会社内で律がどれほどロボット開発に腐心してきたかほぼほぼ描かれていないにもかかわらず、一礼の中に、長い間の会社生活、ロボットの夢破れた志半ばで去る悔しさ、でも引き止められたことへの少しの喜びなどなどいろんな思いを混ぜこぜにしたものを込めるかのような佐藤健。いつ見てもすばらしい。


そして、律と鈴愛となぜか正人(中村倫也)も加わって「そよ風の扇風機」の開発をはじめる。
「私は風を知る」(鈴愛)

あの時の傷が癒えていくような気がした


三人で扇風機開発のため、風のデータ収集する屋上シーンは月9のようだ。タイトルバックに出てきた七色りぼんみたいなのも出て来た。
でも鈴愛はシングルマザー。カンちゃんのこともあるから、途中で帰る。
そんな彼女に律と正人はオフコースの「さよなら」をハモって送る。これまで何度かハモって来たかのような絶妙なコンビネーション。


「愛したのは確かに君だけ そのままの君だけ」♪ 「そのままの君」ってところがおそらく鈴愛の心をくすぐるのであろう。
ナレーション(風吹ジュン)は鈴愛の心理を語る。
「あの時の傷が癒えていくような気がした」と。そして「長く生きているといいこともあるよね」「笑い話に時が変えるね」とあくまでも優しい。
「笑い話に〜」はさだまさしの「秋桜」の一節。過去の名作のフレーズなどをふんだんに用いて作る手法はまるで音楽におけるサンプリングみたいだ。


さて。きっとこの「あの時の傷が癒えていくような気がした」場面を見て、自分の体験と重ねるなどしてじんわりしている視聴者も少なくないだろう。
じんわりしない人もいるだろう。そういう人たちは傷に対してハードルが高いのだろう。もっと傷にディテールをくれ! と思ってしまう。でも「傷」という一言で十分な人も世の中にはたくさんいるのだ、きっと。


なんてことを書いていてふと思ったのは、正人のことだった。
この人、法律に関する出版社に勤務しているらしいが、出版社の社員はこんなぶらぶらと他人の仕事につきあうほどヒマではないはず。編集者であろうと営業であろうと。
恋人(いまはアキコさん)も話題に出すだけで全然出てこない。初登場(14話)のとき、冷たく振ったボディコンさんだけだ。
じつは正人はものすごく深い傷をもっているんじゃなかろうか。
会社も恋もうまくいかなくてすごく孤独で律しか友達がいないのではないだろうか。などなど。でも彼の「傷」は決して描かれず、彼は穏やか〜にふわふわとし続ける。そこを深掘りしない、そんな接し方も現実だったらあるのではないか。

ともあれ、東京ニュース通信社「佐藤健in 半分、青い。」の佐藤と中村の対談で、ケータイのアキコの写真の真実と、アキコとの関係の解釈が中村から語られていて、衝撃を受けた。
これは知らなければ知らないでいい裏話だが、こういうふうに想像を広げて楽しめるドラマであったと思う(すでに回想モード)。

晴さんが心配


たくさん入れた具やスパイスが長いこと煮込まれて鍋からいい香りが立ち上ってきて、そろそろ食べごろを迎えようとしている「半分、青い。」だが、いい話だけではまったりしてしまう。だらだらしゃべってばかりだとお怒りの視聴者もいるから、刺激を加える「半分、青い。」。
晴(松雪泰子)の様態が急変して家で倒れたと草太(上村海成)から鈴愛に電話がかかってきて、つづく。

イベントを入れないと飽きられがちとはいえ、登場人物の体調で引っぱることが多すぎるかなあという気もしないでないが、やっぱりそういうことがあると次回が気になるのは人情だ。
歴代朝ドラ作家たちは、この次回の引き問題に150話以上も向き合い試行錯誤してきたのだなあと思うと、一話たりともおろそかに見られない。

メモ:カンちゃん、カエルのおもちゃで遊んでいた。
(木俣冬)