もう2人でそのままアイドルになってくれ!
『魔女』で印象に残るのが、途中の日常パートである。朴訥として化粧っ気もないジャユン(もうちょい年頃の娘らしい服を着ろと父親に怒られたりしている)と、対照的に常に前髪にカーラーを巻きつけてよく喋るミョンヒ。冒頭でいきなり血みどろの廊下や不穏な研究施設が映った後なのに、この2人が「実家はピンチだけど、アイドルになって稼いで切りぬけよう!」と言い出すので「えっ!?」となる。いやアンタ、アイドルになってピンチを切り抜けるって『ラブライブ!』かよ! 『ユニバーサル・ソルジャー』の中盤でジャン=クロード・ヴァン・ダムがEXILEのメンバーを目指し始めたようなものである。ヴァンダムなら普通に加入できそうだけど。
この2人がとにかく微笑ましい。ボンヤリしているジャユンをミョンヒが仕切り倒し、オーディションのために乗ったソウル行きの電車では「旅行と言ったらゆで卵とサイダーでしょ!」と2人でゆで卵をパンパンに頬張る(韓国では今でも駅のホームで売っているほど、ゆで卵とサイダーは旅行の友だとか)。観客のテンションが「マネージャー気取りだったミョンヒもTV局のプロデューサーに気に入られて、結局2人で歌うことになっちゃって、ドタバタしながら頑張ってアイドルになる映画でいいよ、もう……」となったところで、冒頭の不穏なノリが顔を出す。自然と観客も「それはやめて差し上げろ!」と前のめりになるわけで、この辺の揺さぶり具合は絶妙だ。
本文1ページ目に Witdh というtypoが1カ所。