第6週「お塩を作るんですか!?」 第35回 11月9日(金)放送より
脚本:福田 靖 
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」35話。飢えた若い男たちの中に若い女性が入る危険
イラストと文/木俣冬

35話のあらすじ


神部(瀬戸康史)を筆頭に15人の男手によって、塩作りがはじまった。
だが、次第に、男たちの仲がぎくしゃくしていく。
鈴(松坂慶子)は疲労で倒れ、福子(安藤サクラ)のことを心配した萬平(長谷川博己)は、男たちを賄う人を雇うと言い出す。

こうして、克子(松下奈緒)の娘・タカ(岸井ゆきの)が手伝いにやってくることに。

喧嘩がはじまった


海辺の塩作りシーンからはじまって、鉄板引きずっていく時、転んでしまう人がいるなど芸が細かい部分を楽しんだ。広い海辺の画は清々しい。ビーチボーイズと34話のレビューで書いたけど、福田靖だから「海猿」か。
で、その海猿(塩猿か)たちが海で働く麗しい場面はあっという間に終わり、家に戻って、少ない食を巡って岡幸助(中尾明慶)と森本元(毎熊克哉)が殴り合いの喧嘩をはじめる。

突如、15人もの男の子の母代わりになった、娘しか育てたことのない鈴が、武士の娘よろしく厳しく怒る。夕飯は作りません!と。

慌てて、畳に落ちたご飯を拾って食べる塩猿たち。萬平さんの酷い拷問時を思い出す間もなく、鈴が倒れてしまう。拷問の記憶と男たちの喧騒を似たように描くなんて・・・とひとり朝ドラ国防婦人会(1AKF)センサーを発動させる間を与えない素早い展開、感服仕ります。

みんなの空気を変えてくれるような明るい性格の人


萬平も威厳をもって叱るが、重労働で、楽しみは食べることだけだから無理もないと神部に言われる。
「みんなの空気を変えてくれるような明るい性格の人が来てくれたら」と考える萬平に、福子が今までの二倍の笑顔で頑張るとにっこり。
だが、福子に無理をさせられないと気遣う萬平。さすが合理的。
根性論を出してこないところが伴侶としても
優れているといえるだろう。

ただ、「みんなの空気を変えてくれるような明るい性格の人が来てくれたら」という言葉に、鈴と福子ではそれが不足という認識も若干感じられる。
正直、視聴者の目線で言えば、福子は明るい性格ではあるが、いかんせん若さや華やかさに欠けるのは事実なのだ(設定では若いけども)。

「まんぷく」は肝心の女性よりも、男性描写に手厚いと、レビューで再三書いてきたが、35話ではそれが顕著だった。
福子はまず克子(松下奈緒)に頼みに大阪に行く。ここから良くも悪くも男性目線炸裂となり、35話を印象的な回にした。


かわいいなんてもんやないでしょう 


香田家では、忠彦の新作が売れて、状況が好転していた。400円とは、鈴の着物300円よりも高い。
克子は家のことが忙しいので、タカが手伝いに行くというと「忠彦が男ばっかり十何人もおるんやろう。それはようない」と忠彦が慌てる。
「へんなこと考えるような人はいませんよ」と福子が言うが、34話で男たちが雑魚寝している画を見ながら、元気いっぱいの男たちの本能の行き場所はどうなってるんだろうと思ったものだ。違うジャンルの話だったら、福子が大変なことになる危険性もあるだろうとかなんとか。
案の定、忠彦はそれを感じ取り、愛娘を心配する。

「かわいいなんてもんやないでしょう おまえは浮世離れした美人や」
と力説。芸術家だから独特の見方をするんだと片付けられてしまう。

「タカちゃんには絶対誰にも手を出させないから」「タカちゃんは私が守ります」と太鼓判を押す福子。
お気楽である。ジャンルが違えば、タカちゃんは大変なことにならないとも限らない。
男キャラはそれがわかっているのだ。


実際問題、「若い女がいます」と増田(ガイド本によると空気の読めないキャラらしい)の報告で、俄然盛り上がる塩猿。
福子の立場は・・・。
中には「若すぎる」と言う人もいたが、結果的にタカの登場で、みんな和む。
鈴も皆に「手を出したら承知しないわよ」と釘を差すが、まった女たちに危機感が足りない。

ひとり朝ドラ国防婦人会(朝ドラ愛が強いあまり細かいところをチェックしたいコーナー)


鈴はタカと布団を並べて寝る喜びをかみしめ、一方、福子と萬平は布団を並べて、語り合っている。
またしても、これまでの歩み的な回想が入る。
そして「たまにはふたりだけの時間も欲しいです〜」甘える福子の布団に萬平が入って・・・。

うわー もういいです! まんぷくです! 
そう言わせたくて描いているのだろうか・・・。
ふたりはそろそろ子どもも作らないといけないわけだが、若い男がたくさんいる家で・・・とかなんとか余計なお世話なことを考えてしまう。

食欲が満たされると性欲が低下するとも言われるが(諸説あるようで、ネットをざっと見ると、空腹時には食欲が優位になるという研究結果もあった)、食欲が満たされないとタカちゃん危険なのか、空腹であればタカちゃん安全なのか。気になる。

忠彦さんの心情


34話で、リアルとリアリティーについて書いたら、35話では忠彦の絵が色弱になったことからリアリズム的な印象(完全にそれではない気もするが色調は見たままを再現している印象だった)からやや抽象化(デザイン的な処理)していて、それが売れていると語られた。
見方によれば、白と青で描かれた魚の絵はとても怖い絵にも見えるのだが、タカはそれを「キレイ」と言った。
もしかしたら、この時代、戦争で傷ついた多くの人たちが、戦争の恐怖を体験しながら立ち上がって新たな道を拓いた忠彦の絵に共感していると解釈もできる。
ただ、対象を美しく描いてきた忠彦が、そこに自分の心情を託したことで、多くの人の共感を得たのかもしれない。これは絵画に限らず、ドラマ作りにも言えるだろう。ひいては、発明も。萬平は、発明以前に「人を幸せにしたい」という強い欲求が先に立っている。その想いの強さがたくさんの人の心を動かすのだ。
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ


「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
35話
ちょっと先の話だが、39話では栄輔が女だけの家に泊まるエピソードがある。これも危険。

「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
こちらは、玉木宏が理想の王子様キャラで大活躍
9話
10話