「逃げる8回」で会心の一撃連発!ドラクエIVが残した伝説の数々を振り返る
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ドラゴンクエストシリーズとして、90年代最初の作品となった『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』。「ロト三部作」と呼ばれるドラゴンクエストIからIIIはそれぞれが大きな伝説を残してきたが、後に「天空シリーズ」第一作目と呼ばれるようになった同作もたくさんの伝説を残した。


ドラクエシリーズ初の日曜発売!


ドラクエシリーズはそれまで、発売されるたびにテレビなどのメディアで大きく報道されるなどその反響は非常に大きいものだった。『ドラゴンクエストII』発売日には行列ができ、『ドラゴンクエストIII』に至っては発売日に強奪事件が起きるなど社会問題にもなった。

『ドラゴンクエスト』の発売日は昭和61年5月27日火曜日、『ドラゴンクエストII』は昭和62年1月26日月曜日、『ドラゴンクエストIII』は昭和63年2月10日水曜日と、IIIまではすべて発売日は平日だった。休日ではないにも関わらず会社や学校をサボってまで購入するための行列に並ぶ者が多かったことなどへの配慮がなされたのだろうか。『ドラゴンクエストIV』の発売日は、ドラクエシリーズとして初めて日曜日が発売日となった。

シリーズ唯一のオムニバス形式


『ドラゴンクエストIV』はこれまでのドラクエシリーズと決定的にして唯一違う点があった。それはオムニバス形式で物語が展開していったことだ。第1章から第5章までのオムニバス形式での物語展開は、先にも後にも『ドラゴンクエストIV』をおいて他にない。


オムニバスの意味を知りもしなかった7歳だった当時の筆者は、名前を決めたらさっそく勇者として冒険に出られるものだとばかり思っていた。第1章のキャラクター、ピンクの鎧を纏いし王宮戦士ライアンが登場したときには、「勇者は? なにかのバグ?」と3度ほどリセットボタンをプッシュしたものだ。歳の離れた友達の兄弟にその意味を教えてもらうまで、なぜ勇者が登場しないのかと悶々とした日々を過ごしたことも懐かしい思い出だ。

シリーズ初の機能がてんこ盛り


『ドラゴンクエストIV』には、オムニバス形式の物語以外にもシリーズ初となる機能がてんこ盛りだった。第1章ではライアンがドラクエ史上初めてモンスターを仲間にして連れ回ったことに衝撃を受けた。モンスターはすべて敵だという概念が崩れ去った当時の筆者は、それがきっかけとなったのか、スライムと名のつくモンスターとの戦闘はメタルスライムやはぐれメタルといった経験値豊かなメタル系モンスター以外は極力見逃すようになった。

カジノが初登場したのも『ドラゴンクエストIV』が初めてのことだ。
とにかくスロットマシンをガンガン回してコインを増やそうと連日入り浸っていたが、「838861」枚のコインを第3章では40ゴールドで、第5章では4ゴールドという破格で購入できるというバグ技が存在したことを知り、カジノ廃人にならずに済んだことは今でも感謝している。

「クリフトが賢い」は本当か?


さらに、戦闘AIを搭載したのもシリーズ初だった。AIといっても、今現在話題になっているAIとは似ても似つかぬ代物ではあるが、勇者以外の仲間は「がんがんいこうぜ!」「いのちだいじに」など、勇者が指示した作戦に応じた戦いを自動でやってくれるというものだった。

といっても思い通りにはいかないもの。「いのちだいじに」は、仲間が死なないことを第一にHPをこまめに回復してくれそうなものだが、回復役として重宝するはずだったクリフトは何を思ってかザキ(敵を即死させる)系呪文を連発しまくっていた。特に効果的というわけでもなく、ザキ系の呪文が効く、効かないに関わらず常にそんな調子だったものだから、戦闘においてかしこさとはまったくアテにならないことを痛感した。

伝説の「逃げる8回」コマンド


『ドラゴンクエストIV』の中でも最も多くの人が衝撃を受けたであろうコマンドがある。
「逃げる8回」だ。戦闘中に「逃げる」を8回実行すると、それ以降の攻撃がすべて会心の一撃となるというもの。このコマンドを実行すれば、ラスボスであるデスピサロも容易に倒すことができたのだ。

シリーズ中最も多く態様を変化させるボスとして有名なデスピサロは、とにかく細かく段階的に変身していくため、普通に戦うと緊張感とともに「いつまで戦いは続くんだ」という絶望感が漂うものだった。しかし、このコマンドを実行してしまえば、デスピサロもただのサンドバッグと化した。

ドラクエIVとはドラクエシリーズで最も悲しいボスの物語でもあった。


(空閑叉京/HEW)