12月8日に『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』(日本テレビ系)(日本テレビ系)の第9話が放送された。(関連)
「ドロ刑」最終回直前検証。伏線を整理したら世界が反転する予感…稲森いずみは煙鴉をなぜ本名で呼んだのか
ドラマ「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」 オリジナル・サウンドトラック/バップ

今夜放送の10話で最終回を迎えるこのドラマ。
その一週前となる今回は、エンディングに向けての筋振りが終始行われる内容だった。答えが出るのは最終話。現時点では提示された伏線を見て結末を予想し、期待を昂ぶらせる姿勢こそ正しい楽しみ方だと思う。

煙鴉は正義のためにしか動いていない


本稿では、9話で張られた伏線を拾い上げ、そこにどういう意味があるかを考えていきたい。もちろん、予測でしかないので読み間違えも起こるだろう。ご了承いただきたい。


●虹
煙鴉(遠藤憲一)が斑目勉(中島健人)へ提示したヒントに「虹」というワードがある。
「虹をつかもうとした。バカだった俺は、それで全てを……踏み潰された。でかいものにな」
虹を英語にするとRAINBOW。現在、このワードは煙鴉がターゲットとする人物の頭文字とされている。議員の大久保盛男(上島竜兵)の頭文字は「O」、元官僚の七波隆(須永慶)は「N」、元裁判官の阿川義一(本村健太郎)は「A」。
残るターゲットの頭文字は「R」、「I」、「B」、「W」の4人ということになる。その内の2人に、皇子山隆俊(中村倫也)の妹・真里(真魚)が慕った医師・伴清彦(村松利史)と、不動産会社会長・龍崎一郎(渡辺哲)が含まれていることは間違いない。両者のイニシャルは「B」と「R」だ。

「虹」というワードが提示する伏線は、きっとこれだけに収まらない。伴が務める病院へ立ち寄った皇子山が車を走らせた。彼の車は、偶然にも「虹の見える丘公園」の脇を駆ける。
20年前から分譲地として出されている公園だ。
このドラマの初回オープニングは、煙鴉が幼少期に思いを馳せる回想シーンだった。かくれんぼをする子ども時代の煙鴉。もしやだが、「虹の見える丘公園」は煙鴉がかくれんぼで遊んでいたあの場所ではないのか。

煙鴉が大事に思っていた公園が分譲に出された。この公園は病院の近くにある。
煙鴉のターゲットには、その病院の医師と不動産会社会長がいる。点と点がつながって線になるのはもうすぐだ。

煙鴉がターゲットとしたのは、議員、元官僚、元裁判官、医師、不動産屋。彼らが絡んだ不正(?)に対峙している煙鴉。そこへ大きく関与するのが「虹の見える丘公園」だということ。
「虹をつかもうとしたのに踏み潰された」と回顧した煙鴉。
公園にまつわる何かを守ろうとしたが、大きな力(煙鴉曰く「でかいもの」)に屈してしまった。警視総監(本田博太郎)が煙鴉を目の敵にしているのも、虹にまつわる不正と無関係だとは思えない。

●皇子山真里の爪に残った煙鴉のDNA
敵対の意志を示す煙鴉に関し、斑目はまだ甘いことを言っている。
「俺にはケムさんが……、煙鴉が本当の悪人とは思えないんです! 何か理由があってこんなことを……」
斑目に優れた“勘”があることは過去に実証済みだ。先輩らの制止、色眼鏡に惑わされず捜査を進め、真相へ辿り着いたことは幾度もある。

真里が転落死した際、真里の爪の間には何者かの皮膚片が残っていた。
この皮膚片のDNAを調べると、煙鴉のものだと判明する。「抵抗する真里を無理やり煙鴉が突き落とした」と確信する皇子山。
しかし、やはり煙鴉がそんな悪人だとは思えないのだ。斑目の勘の方を信じたい。

真里は伴が勤務するギルバート記念病院の医師だった。「虹」に関する不正の秘密を知った真里が、巨悪に命を狙われた。何者かに突き落とされ、転落する間際の真里を救おうと手を差し伸べた煙鴉。その時、真里の爪の間に煙鴉の皮膚片が食い込んだ。煙鴉の人間性を知っていれば、そう考えた方が自然だ。

●煙鴉の本名
斑目と師弟のような関係性を築いた煙鴉。師による助言はあまりにも的確だった。いくら“伝説の大泥棒”でも、警察の内部事情にそんなにも精通しているものか?

今回、鯨岡千里(稲森いずみ)が煙鴉と顔見知りの関係だと明らかになった。
鯨岡 あなたのやってることは無駄よ。勝てると思う?
煙鴉 勝てるさ。俺はすでにたっぷりのデータをいただいてる、警視庁の。あのガキからな。
鯨岡 死ぬことになるわ。北岡さん。

煙鴉を本名で呼べるほどの間柄。泥棒になる以前からの関係ということになる。鯨岡との仲が深く、警察の内部事情に精通する煙鴉。
煙鴉は、元刑事ではないのか? そして、鯨岡と同僚だった過去がある? 刑事だったから、転落する真里に手を差し伸べた。そして、新人刑事(斑目)の成長に期待した。振り返ると、彼の取る行動は何もかも“正義”のためのものでしかないのだ。

議員、元官僚、元裁判官、医師、不動産屋を巻き込んだ警視庁上層部の不正。それを許せない元刑事。“伝説の大泥棒”に転身した彼が13係と共に巨悪との対決に臨む。大きく俯瞰するとそういう構図である。

今夜放送の最終回で、これまでの世界観が反転するような展開が待っているはずだ。
「俺を捕まえてみろ、斑目」
逮捕されることも辞さない覚悟で正義が巨悪に挑む。『ドロ刑』は、そんなドラマだった。あくまで、これは予想だ。
(寺西ジャジューカ)

『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』
原作:福田秀「ドロ刑」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
脚本:林宏司
主題歌:Sexy Zone e「カラクリだらけのテンダネス」(ポニーキャニオン)
音楽:木村秀彬
演出:大谷太郎、中島悟、高橋朋広
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:能勢荘志、次屋尚、関川友理
制作協力:The icon
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中