ASKA「若年層のファンが増えてきた」 40年間のミュージシャン人生で蓄えてきたもの
「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」公演の様子

2019年で活動40周年を迎えるASKA。2018年末に開催された交響楽団との共演による全国ツアーやベスト盤・ライブDVDのリリース、そして35年ぶりの書きおろし散文詩集の発売など、これまで以上に精力的な動きを魅せている。
それはまさに、彼の最近の代表曲にもある「今がいちばんいい」を地でいっているようだ。

その彼の現在の活動や行動のバイタリティやモチベーションは何なのか? 再始動から半年の活動を振り返ってもらいつつ、今後について語ってもらった。

若年層のファンが増加 「何か一瞬のきっかけで繋がる」


ASKA「若年層のファンが増えてきた」 40年間のミュージシャン人生で蓄えてきたもの
「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」公演の様子

――活動再開から半年が経ちますが、ここまでを振り返っていかがですか?

ASKA:あっという間ですね。ツアーを終えてすぐさま、また次のツアーに突入しましたから。それこそ自分としては振り返ってる余裕がないぐらい(笑)。止まらずに進み続けている、やはりこれが今の自分には最もいい活動ペースだと実感してます。

――活動再開されてから、最近までのASKAさんの活動からは、どこか「止まってられない」感があります。

ASKA:一旦「前だけ向いて進む!」と決めてからはブレがないですから。何をやっていいか分からないから進めないわけで。逆に進むと決めたら、そこから見えることもあるもので。あとはただそこに向けて進んでるだけです。

――活動再開後、何か目に見えた変化はありましたか?

ASKA:今回のライブツアーは本当にお客さんの熱量がすごいですね。僕もそれに相乗するように熱くなっちゃって。


――その理由をご自身ではどのように?

ASKA:男女比が大きく変わったからでしょうか。とにかく男性のお客さんが増えました。

――それには何がきっかけだと思いますか?

ASKA:いくつかあるでしょうね。今の僕の「楽曲」「活動」に、男性として共鳴してくれた方もいるだろうし、61歳の僕がその人の人生に現れたのかも知りません。出会いです。ここは、あまり僕が語ることではないでしょう。

――確かにコンサート会場もこれまで以上に男性や若いファンも姿も多く見受けられました。

ASKA:20代のリスナーも増えてきてます。これは50代の頃には無かった現象で。どこかで“気づいてくれればいいな…”と活動はしていましたが、なかなか気づいてもらえず(笑)。でも、60を超えて、そんな方々が増え始めました。ファンクラブにも同じ現象が現れています。
先ほどもお話ししましたが「出会い」としか言えません。

――その要因を自身ではどうお考えに?

ASKA:歌への共鳴や共有でしょう。どれだけ開拓しようが、プロモーションをしようが、届かない人には届かない。でも何か一瞬のきっかけで繋がる。そこから自分が作ったものに共鳴してくれたり、好きになってくれる新しい人たちが増えるのは何にせよ喜ばしいことです。

――ちなみにASKAさん自身は逆に今の20代が好む音楽を聴いたりは?

ASKA:実は全然知らなくて。そんななか、飛び込んできたのがONE OK ROCKでした。きっかけはYouTube。「こんなバンドがこの国にも出てきたか!?」って、いい意味で悔しかったですね。ワールドワイドで本格的に活動できるバンドだと感じました。彼らは自分たちがワールドワイドを意識することによって活路を見出してきた。僕も持論として「曲は生まれた瞬間からワールドワイドでなくちゃダメだ」というのがあって。
もちろん、ワールドワイドになるか? ならないか? は別な話しですけど。

活動再開後すぐの全国ツアーは「お客さんに救われた」


ASKA「若年層のファンが増えてきた」 40年間のミュージシャン人生で蓄えてきたもの
「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」公演の様子

――昨年11月からは交響楽団との共演で久々にみなさんの前で歌われましたね。

ASKA:すごくいい機会をいただけました。交響楽団のゲストボーカリストとして、という立場だったので成立したコンサートでしたから。実はリハーサルはすごく調子が良くて。でも初日の前辺りに風邪をひいてしまい、少し体調を壊し始めたんです。初日はそれなりに乗り切れたんですが、以降完全に体調を壊してしまって。以後は気力だけは失わないように各所挑みました。かなり痛々しい場面もあったでしょうが、ひるまず歌い続けた部分に共感して下さった方々も多くて。お客さんに救われたツアーでした。

――現在の「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」も中盤戦ですね。

ASKA:楽しくやらせてもらってます。ステージが楽しくないとお客さんも楽しんでもらえない。
これが僕の持論なんで。それが実現できてるツアーです。

――タイトルからもっとヒストリカルな内容を予想していたので内容的には意外でした。

ASKA:最初に今回のタイトルを付けたときは、そのような気持ちだったんです。僕の作ってきた歴代の楽曲の中から選び並べようと。でもある時、そんな活動の歴史の目立った曲ばかり並べてもつまんないなと考え始めて。そこから40年間自分がミュージシャンとして蓄えてきたものを「ありったけ」と呼ぼうと意識を変えたんです。そこから楽曲選びの視点も変わりました。

――では、今回のツアーで披露している曲たちは、ASKAさんのこの40年の糧である主な楽曲たちだと。

ASKA:ですね。ファンの中では、もしかしたら「ひとり咲き」や「万里の河」を歌うんじゃないか?と期待していた方もおられたみたいですが(笑)。

――比較的いまやこれからを感じさせる選曲でした。


ASKA:なかでも、とりわけ今ですね。40年くぐってきた今の自分を魅せれたらなと。

――実際にそれらをお客さんの前で歌われていかがでしたか?

ASKA:各所、熱いです。同じ空間で凄く熱のある共有、共鳴し合うその時間づくりを一番大切にして歌わせてもらっていますが、やはり終わった後に、「これまで観てきた中で今日が最高だった!」と言ってもらえるライブ、それを都度目指してます。「感動した!」との言葉が終わった直後に口から出てくる。そんなライブに何が何でもしたくて。

――その後も東名阪でも追加公演が決まっています。

ASKA:これまで同様、思いっきり熱の充満するライブを演るだけです。このツアーを公演後に知られた方、またはツアーで見て、また観たいとリピートされる方も来られるでしょうから。その方々をきちんと最後はひとつにしていきます。観ていただければ、もう僕が語る必要がない。どこまでも突き抜けるようなライブをしてますから。


――6月にはアジアツアーも控えてますが、そこも同様に?

ASKA:アジアツアーに関しては曲目を変えてやります。ほら、やっぱりポール・マッカートニーが日本に来たら、「Yesterday」を必ず歌うわけじゃないですか(笑)。僕で言う、それらの曲をどこに入れれば今の熱を失わずにコンサートが出来るか? をいま考え中です。台湾や香港へは初めて訪れてから既に20数年が経ちましたからね。

――ちなみに当初はどのような感じでしたか?

ASKA:当時は台湾等もまだコンサートの本格的な設備があまり整ってなくて。なので現地調達は諦めて。当初から「日本と同じ規模やセットでやらないと意味がない」と考えていたんで、日本から機材一式、飛行機をチャーターして運んで実現させたんです。アジアには哀しい歴史がありました。その歴史を「事実」「真実」の両面で語れる人がいなくなった。つまり、それまでは日本人に対して「冷たいアジア」だったんです。いつの世もそうですが、歴史には事実とは異なることが多い。その時々の権力者、または文字に残した知識人の推測などが「歴史」として語られていますからね。「歴史」には、必ず「真逆」の説がある。アジアツアーを決断した時、僕はこう思ったんです。「あったことはあったこと」「歴史は歴史」。「戦争を知らない」僕たちの世代で、新しい時代を築いて行けばいいと。その気持ちは、今なお、変わっていません。

――でも今回招待して下さった方は20年前にそのコンサート観て下さっていた方だとお聞きしました。やはりあの時の種まきは無駄ではなかったと。

ASKA:ですね。ほかにも当時小学生/中学生でライブに参加していた方々が今やマスコミの重鎮になっている方々もいらっしゃって。そういった方々が僕の音楽に対して抱き続けてくれたイメージから、今回呼んでくれたと感謝しています。あと、今のアジアツアーを行っている日本のアーティストたちに、少なからず道を作ってあげられたんじゃないかな。当時、散々の反対を押し切って行ったアジアツアーが、今に繋がりました。

35年ぶりの散文詩集 「谷川さんと死生観が一緒だった」


ASKA「若年層のファンが増えてきた」 40年間のミュージシャン人生で蓄えてきたもの
「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」公演の様子

――3月21日には散文詩集も出されます。かなり胸の内を赤裸々に書き綴った内容ですね。

ASKA:2ヵ月ちょっとで120篇ぐらい書きました。その内55篇を厳選して収めたんです。

――やはり歌詞と散文詩は書く意識も違いますか?

ASKA:違います。同じ詩でもフィールドが全く違いますから。それらが別であることをきちんと認識していないと書けない。散文の場合は歌と違い文字数制限や共鳴をそこまで必要としないし。自分の心のうちを赴くままに綴るだけでした。昔、散文詩集を出した際はホント真似事でしたから。今回はあれから歳を重ねた分、それなりに、自分なりの型が出来たかなって。

――産みの苦しみみたいなものはありませんでしたか?

ASKA:書くことには苦しみませんでした。テンポよく次々と書けて。その辺りはやはり日頃ブログ等をやっていて、書くことに慣れ親しんでいたからでしょう。わりと次から次に作品が増えていきました。

――全体的に死生観を感じた作品の存在も印象的でした。

ASKA:確かにいくつかあります。その死生観はずっと早い時期から自分の中ではあったもので。僕が語ってることって実際、本を読んだり聞いたことがベースではない気がしています。ある時ふっと悟るように思い浮かんだものをしゃべるようにしていて。その喋っているうちに自分の中で更に答えらしきものが出てくるんです。この前、谷川俊太郎さんと対談をしたなかで嬉しかったのは、その死生観が一緒だったところで。

――谷川さんの詩と死生観とがあまり結びつきません。

ASKA:僕も谷川さんの詩で死生観を語っているものをそうそう見たことがなくて。でも、いざ語ってみると、その辺りをしっかりと持っていらっしゃる方で。

――その谷川さんはどのように死生観をお考えに?

ASKA:谷川さんは、肉体は魂の仮の入れ物だから、そこに固執してこだわっているうちは、やはりこの時代の人でしかないというようなことをお話しされました。僕の考えと、全く同じでした。意識とは元々あるもので、それが肉体に宿る。そして、その肉体が寿命を迎えたら、意識はその肉体から去り、元の場所に戻る。「元の場所」とは、「宇宙空間」なのかもしれません。そして、またやがて次の肉体に入る。それをずっと繰り返している。意識を命と言い換えるならば、「死ぬ」いうことは永遠にありません。人と肉体を切り離して言えば、「人とは意識」です。意識に死はない。その考えは、谷川さんと見事に重なりました。僕はそれを「詩」書く人。谷川さんは書かない人。その違いだけでした。

――それでは、ASKAさんの今後をお聞かせ下さい。

ASKA:当初は春ぐらいにはニューアルバムを出す予定でしたが、喉を壊したり再度のスケジュール調整が上手くいきませんでした。このツアーやアジアツアーが終わったら再度制作に入ります。今後もその時々でやりたいものがきっと途切れず生まれ続けていくでしょうから、それに従って活動していくだけです。
ASKA「若年層のファンが増えてきた」 40年間のミュージシャン人生で蓄えてきたもの
「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」公演の様子

取材・文/池田スカオ和宏

ツアー情報


ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -
3月20日(水)新潟 新潟県民会館
3月23日(土)栃木 宇都宮市文化会館
3月24日(日)宮城 仙台サンプラザホール
4月12日(金)東京 東京国際フォーラム ホールA

<追加公演>
4月23日(火)東京 日本武道館
4月25日(木)大阪 フェスティバルホール
4月30日(火)愛知 愛知県芸術劇場 大ホール

CD情報


「MADE IN ASKA」
「We are the Fellows」
「SCENE-Remix ver.-」
「SCENEII-Remix ver.-」
4作品好評発売中

書籍情報


書籍『ASKA 書きおろし詩集』
2019年3月22日(金)発売
本体価格:\1,400(税別)
出版社: 双葉社

▼通常版(金色帯)
全国の書店&オンライン書店で発売 ※一部発売日が異なる場合があります。
▼ローソン・HMV限定版(紺色帯)
HMV&BOOKS online、HMV各店舗、HMV&BOOKS各店舗、ローソン一部店舗で販売(ローソンは限定版のみ販売)
※一部異なる店舗もございます。

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ASKA自身による自作詩の朗読ムービー


谷川俊太郎との対談ムービー



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