連続テレビ小説「なつぞら」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第3週「なつよ、女優になれ」 20話(4月23日・火 放送 演出・田中正)視聴記録


ポポロとペチカ
「おはよう日本関東版」。お天気担当の檜山靖洋アナが今日の天気を「ただ、なつぞらといえるかどうか……」と笑いながら語っていた。これから気温が上がっていくと毎朝「なつぞら」「なつぞら」連発するのだろうか。


倉田先生の台本ができあがった。十勝地方で語られている逸話を題材に書かれた物語の題名は「白蛇伝説」。台本のトップクレジットは雪次郎で「ポポロ」という名の役。なつの名は二番目で「ペチカ・神様の使い」とある(それを見たときのなつにモーっと牛の声と鈴のSE)。
なつは、じいちゃんの過去を調べて書いたのか? と聞くが、倉田はさあととぼける。
いったいどういう内容なのか。
テーマは「個人の問題と集団の問題」。なんか難しそう…。
内容はおいおいという感じでドラマのなかではぼかされるつつ、倉田は舞台美術までなつに頼もうとする。その流れで、雪月に飾ってあった絵が倉田の目に止まり、天陽に頼もうということになる。

なつが天陽くんに絵を描いてもらえたらなと言ったときの吉沢亮の嬉しそうな顔(ちょっとはにかみ気味)。なつは天陽が引き受けてくれるとは思ってなかったが、天陽は、なつや雪次郎の役に立つなら引き受けるとまんざらでもなさそうだ。
勝手な感想だが、天陽は学校にも行かず働きながら絵を描いていて、それはそれで納得しているのだろうけれど、同世代のなつたちと関わりたいのではないだろうか。
そして、倉田が泰樹と同じくなつにばかり肩入れしているように見え、よっちゃんがないがしろにされて見えるが、それでいいのだ。倉田はこの演劇をなつと泰樹の問題をきっかけに描き、なつに演じさせることで気づきを与えたいと思っているからだ。よっちゃんには悪いがこれはなつの演劇(問題)なのだ。そしてよっちゃんはちゃんとそういうことを受け入れられる人なのだ。よっちゃんの家が開拓者の家系かわからないが、泰樹とトヨに代表されるようなたくましい人のひとりとして描かれているのだと思う。


天陽くんと雪月
雪月に飾ってあった牧場の絵は天陽のものだった。
天陽くんのモデルは、十勝で農業を営みながら絵を描き続けた神田日勝だということは以前この連載で紹介した。神田日勝は演劇もやっていた人でもあり、「なつぞら」でなつや雪次郎が演劇をやっているのは神田日勝の精神とつながっていると言えるだろう。倉田先生の語る、農民にこそ演劇が必要という考えも。
ちなみに釣りにも熱心だったそうだ(子・天陽が第二週で釣りをしていた)現在、十勝にある神田日勝美術館では「神田日勝―未完のキャンバス」と題した展示が行われている。
雪月のモチーフのひとつ・十勝の菓子メーカー・柳月のこともこの連載で紹介しているが、柳月は神田日勝美術館とのコラボ商品をつくっている。
絶筆作品「馬(絶筆・未完)」の絵柄を使ったクッキーだ。このパッケージのふたの裏には神田日勝について解説が書いてあり、この文章が熱く、読み応えがあり、血がたぎる。なかで引用されている日勝の言葉を孫引きしてみよう。
「己れの卑小さをトコトン知ることから、
われわれの創造行為は出発するのだ。
あの真っ白なキャンバスの上に
たしかな生命(いのち)の痕跡を残したい」
シビれる。シビれてこの文章を追っていくとこの一文が含まれる「生命の痕跡」にはこんな文章もある(神田日勝美術館のサイトより引用)。

「現代コマーシャリズムの尺度に合わされた無個性な思考と、 生活を営む画一的な人々の悲しい行進」
日勝は自分もまたそれをするひとりであると嘆く。でもそこから抜け出そうする日勝。
天陽くんが言ったわけではなくモデルの神田日勝の言葉であるが、こういう熱さを「なつぞら」は受け継いでいるように思う。

じいちゃんのために演劇をやると煮え切らないなつに、夕見子は「自分のためにやれ」と発破をかける。
個々の主体性を問う「なつぞら」。誰が何と言おうと自分の道を、自分だけの道を進むのだ。

なつも、泰樹も、天陽も、雪月の人たちも、みんなそれぞれの思いを大切に生きていく。
「新しい日のはじまりだ」というナレーションが胸に響いた。
「なつぞら」20話。謎の演劇「白蛇伝説」なつの役は、ペチカ様・神の使い 

連続テレビ小説 なつぞら Part1 (NHKドラマ・ガイド)

「なつぞら」20話。謎の演劇「白蛇伝説」なつの役は、ペチカ様・神の使い 
「鹿追アートビスキュイ」十勝に「なつぞら」詣でに行ったらお土産としてゲットしたい

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。勉強が好き。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。絵が上手。馬が好き。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。
村松 近江谷太朗…十勝農業高校の先生。
倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

村松…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。
高木勇二 重岡漠
石川和男 長友郁真
橋上孝三 山下真人

脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)