ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

ASKAのバンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ - 」の追加公演が、2019年4月23日に日本武道館で行われた。今年デビュー40周年を迎えたASKA。
その記念年のエポックの一つとも呼べる全国ツアーがこの度、成功のなか幕を閉じた。

バンドと共に回る全国ツアーとしては約6年ぶりの今回。ツアーの最終盤、追加公演の日本武道館に赴いた。ASKAにとっても7年3ヵ月ぶりとなった同ステージ。その模様を以前に同ツアーについてを訊いた際の彼の想い交えお伝えしたい。

本公演は、ASKAの現在とこれからを多分に感じられたと同時に、彼が標榜するかの如く活動し体現してきた「今がいちばんいい」がまた更新され、今後もそれが上書きされていく確信と約束を見た一夜であった。

ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

まずは今回の選曲、「Made in ASKA - 40年のありったけ -」のタイトルから、ここまでの活動のヒストリカルさや集大成、縮図的な内容が想起される。しかし、実際はそれらとは若干異をしたものであった。CHAGE and ASKAの曲も数曲程度で、比較的最近リリースされた楽曲が目立ち、ある種、違った意味での「ベスト的な選曲」に映った。当初は私もそこに若干の訝しさを持った。ところがライブが進みゆくに連れ、彼の真意や想いが露わになり、最後はそのタイトル通りさに深く納得している自分が居た。

シンセサイザー、シンセ&ヴァイオリン、男女コーラス隊、ドラム、2人のギタリスト、ベースの布陣で回った今回の全国ツアー。
ステージ前の黒幕にはツアータイトル名が白文字で冠されている。ASKAが自分なりに東京五輪をイメージして作った雄大でシンフォニックなオープニング曲が流れ出し、徐々にその音量が大きくなる。黒幕がゆっくりとあがり、白く発光したステージ中央に赤いアコギをストロークするASKAの姿が現れた。1曲目は「未来の勲章」。会場のクラップと共にライブが滑り出していく。<夢を守って遠くで近くで掴んで/心に残る旅をするのさ>の歌声は今日も力強い。
続く「ONE」に入ると会場に活気が寄与される。裏打ちのリズムと共に軽快さが会場内に行き渡っていく。歌うASKAのステップもリズミカルで軽やか。アドリブでのスキャットの際には会場も湧いた。
ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

「待たせたね」(ASKA)の一言と入った「明け方の君」(C&A曲)では、ヴァイオリンも優雅に加わり、ASKAも交えたコーラス隊との3声のハーモニーも楽しめた。歌い終えると、「ようこそ。
この追加公演のおかげで、平成の最後までツアーが続けられた。やれば時代がついてくる」と伝え、「本ツアーで引き継いだバトンをそのままのいい形で繋ぎたい」と、会場と共に一緒にいい空間を作っていこうとのアライアンスが交わされる。

提供楽曲のセルフカバーながらライブでは人気の「cry」では、突き進んでいくかのような力強さが場内に満ち、情熱的なスパニッシュギターも印象的であった「Girl」の際にはステージも妖艶なライティングに豹変。艶やかな世界を広げていく。また、「憲兵も王様も居ない城」では、逆に淡々としながらもじわじわとその世界観が場内に満ちていくのを感じ、ここではASKAの歌をフリースタイル形式で歌い上げている場面も印象深かった。

ここで合間。
ステージに向け男性からの掛け声も多く贈られた。昨今、若いファンや男性ファンが増えていると、以前ASKAが教えてくれたインタビューを想い出す。

ここからはCHAGE and ASKAからの曲が続けられた。「Man and Woman」にてスタンドマイクを丁寧に掴んで歌いつつも、優雅に羽を広げるが如く場内に同曲を広がらせていけば、同曲の歌内容の<めぐり逢い>は繋がりからだろう。次曲の「めぐり逢い」に入るとライブは更に躍動感を増し色づいていく。対して「MOON LIGHT BLUES」ではメローでムーディさが堪能でき、まるで月明かりに包まれるような心地良さを味わうことが出来た。

ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

「ああ、アリーナで歌うってこんな感じだった……と感覚を蘇らせながら歌っている」とASKA。続けて「いろんな意味で大きく変わったのはこの曲からだった気がします」と話し入った「はじまりはいつも雨」は、よりしっとりと響き、その歌声が会場中をゆっくりと染み入るように包んでいく。対照的に「いろんな人が歌ってきたように」ではダイナミックさを堪能。ここでは、<そろそろね/口にしてもいいだろうすべては愛だってことを>の当時からの変わらない真理を改めて確認することが出来た。

中盤では各所恒例となった「もぐもぐタイム」が訪れた。ようは休憩時間なのだが、各所この時間はステージ上にてASKAとバンドのメンバー全員が車座になって各地の名産や銘菓を食べながら雑談。この日は「赤坂離宮 銀座店の杏仁豆腐」が食された。

リフレッシュしたところでライブに戻る。まずはメンバー紹介&各人のソロのリレーションが。中でも「手数王」の異名を誇るドラムの菅沼孝三のドラムソロは圧巻。場内の至る所で感嘆の声が漏れた。

「多くの男性が歌ってくれている」と聞く「FUKUOKA」の際には、モニターに腰を掛け大事そうに大切そうに歌うASKAの姿が。途中からは立ち、両手でマイクを大切に包み込むように歌い届ける。打って変わり、「LOVE SONG」に入るとライブが再び色づき出す。会場中の温かい手拍子に包まれて歌われた同曲が、ほのかな幸せ感を呼び込めば、ライブが流転を魅せたのは「リハーサル」であった。<やりたいことをやりたいようにやる!>との強い意志が伺えた同曲ではアウトロのバイオリンソロも劇的さを魅せた。更にライブはドラマティックさへ。「と、いう話さ」では、一対一の対峙感から会場と一緒に作り上げる雰囲気へと空気が変わる。と思えば、「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」ではライブが再び流転。躍動感が盛り上がりを引き連れてくる。ステージのオレンジ色の照明も手伝い、我々を夕暮れのあの日のあの場面へと佇ずませてくれた。
ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

爪弾きとサビの部分を歌い出しから入った「ロケットの樹の下で」ではアーシーな一面が楽しめ、中でもギターソロの雄弁さが印象に残っている。それらを経て現れた「今がいちばんいい」ではステージが華やぐ。会場中が一緒に歌った同曲。ASKAもステージを左右に進みながら歌い、場内に活力やエネルギーが満ちていく。壮大なシンセ音に乗せて散文詩をポエトリーリーディングするASKA。それを経た本編最後は「歌になりたい」に辿り着いた。芳醇なコーラスも加わり、雄大に神々しく同曲が会場全体を包んでいく。それはまるで至福感溢れる光に包まれるが如し。生命力たっぷりな豊かな気持ちを残し、ASKAとメンバーは一旦ステージを去った。

アンコール。まずは「みんなが知ってる曲やるよ。これは参加しないと。恥ずかしがてったら恥ずかしいよ」と西城秀樹の「YOUNG MAN」のカバーに入る。楽しそうにみんなが一緒に歌い、サビのキメの会場全体での“Y.M.C.Aポーズ”は壮観。その光景を見るにつけ、「実は故・西城氏の存命の際から次にこの曲をカバーしようと決めており、その矢先の訃報。この歌の持つバイタリティや若返えさせる作用も含め、今だからこそ歌えるうたとして届けたい」と以前、ASKAが語ってくれた話を想い出した。そして締めの盛り上がりは、彼のキャリアの中でも屈指の生命力を与えてくれる「YAH YAH YAH」が飾った。一体感と高揚感のなか会場中から上がる声は力強くコブシは力強かった。そしてラストは「UNI-VERSE」。同曲では皆がおもいおもいに清々しい青空を想像した。
ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

「40年間くぐってきた今の自分を観せたい」。そんな選曲や姿勢で臨んだ今回のツアー。そこにはこれまで聴き続け一緒に歩み続けてきたファンと、最近彼の魅力を知り好きになったファンをも繋ぎ、これからへと一緒に引き連れていく力強さがあった。また、平成最後の日に名古屋で行ったファイナル公演は大盛況でラストを飾ったという。

「40年間自分がミュージシャンとして蓄えてきたものを「ありったけ」と呼び、「これまで観てきた中で今日が最高だった! と言ってもらえるライブをしたい」と、この日について以前に語ってくれたASKA。これからツアーはアジア方面へと広がり、現在制作中の待望のアルバムの発売へと活動を繋げていく。

「ありったけ」=「人間ASKA」がより垣間見れ、身近に感じられた、この日。これからも彼は「今がいちばんいい」を常に更新していくことだろう。そう、私たちの想いと共に。
ASKA、7年ぶりの日本武道館で『はじまりはいつも雨』披露 「大きく変わったのはこの曲からだった」

取材・文/池田スカオ和宏

<セットリスト>
1.未来の勲章
2.ONE
3.明け方の君
4.cry
5.Girl
6.憲兵も王様も居ない城
7.Man and Woman
8.めぐり逢い
9.MOON LIGHT BLUES
10.はじまりはいつも雨
11.いろんな人が歌ってきたように
12.FUKUOKA
13.LOVE SONG
14.リハーサル
15.と、いう話さ
16.晴天を誉めるなら夕暮れを待て
17.ロケットの樹の下で
18.今がいちばんいい
19.散文詩~歌になりたい
Encore
En-1.YOUNG MAN(Y.M.C.A)
En-2.YAH YAH YAH
En-3.UNI-VERSE