倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第6週。

第6週のあらすじ


根来家の三男・三平(風間晋之介)が、しの(清野菜名)のヌードを描いていたという騒動以降、ふたりきりで言葉を交わすことすらも禁止された。監視役に任命された四男・公平(風間俊介)は、嫉妬心を丸出しにしながら監視をする。


そんなふたりに本家の鉄兵兄ちゃん(平山浩行)は、小枝を削って文字を書き文通することを提案する。

同じ頃、ニキビ(関口アナン)の祖父が行方不明となる。祖父はだいぶボケが進んでいるため心配されたが、山を越えた先の、若い時分を過ごした村で発見された。

かつて好き合っていたものの、様々な事情で結ばれなかったおトメさんに会いに来ていたのだ。ダブル認知症状態のふたりが数十年ぶりの再会。

「ボケたじいちゃんがどうやって山を越え、昔の恋人を探し出したのか?」と疑問に思う公平とニキビだったが、鉄兵兄ちゃんは、

「人にはそれぞれ原風景ちゅうもんがある。
意識しとろうがしとるまいが、子どもの頃に焼き付いた心の風景じゃ」
「お前のじいちゃんもあのばあちゃんも、自分じゃ分からんまま、そういう景色の中に自然と迷い込んでいったんだろう」

と語った。

さらに、公平たちの元に「青っ洟(若林元太)が婚約した」という衝撃情報が。

しかし婚約者・ヨシコ(真凛)は、分校時代に学校を仕切っていたあの犬山(澄人)とも付き合っていた。婚約しているというのに、犬山と寝て「うふ~ん、あは~ん」とドエロい声を上げるヨシコ。

義憤に駆られた公平たちは、犬山を闇討ちし、ボッコボコにする。
「やすらぎの刻~道」風間俊介のおねしょから少子高齢化問題まで振り幅デカい、スゴイぞ倉本聰!第6週
イラストと文/北村ヂン

気立てはすこぶるいいって聞いてたのに……


小枝を通したピュアすぎる恋。ボケ老人ふたりの一周回ったピュアすぎる恋。
そして、青っ洟の婚約者・ヨシコのピュアじゃない恋。様々な恋模様が描かれた今週。

インパクトが強かったのはやはりヨシコだ。

顔はおへちゃでデブの部類だけど、肌はスベスベで牛並の巨乳。そして気立てはすこぶるいい……と紹介されていたのに、裏では他の男とガンガンやっているという悪女っぷり。

こんなヒドイ婚約者をつかまされてしまった上に、ひとりだけヨシコの裏の顔を知らず、嬉しそうにしている青っ洟は気の毒としか言いようがない。


縁談を勧めたのは、お上の腰巾着として「満蒙開拓団」を推進しながらも自分は参加しないという、卑怯キャラが定着してきた荒木(須森隆文)。

「満蒙開拓団」の参加者が満州に渡る前に結婚させて、現地でガンガン子どもを産ませようという考えらしい。いわゆる「産めよ増やせよ」運動だ。

この、戦時中に国が奨励していたムリヤリな子作り政策と絡めて、いきなり現代の少子高齢化問題までぶっ込んでくるあたりが倉本聰の技!

「巷にはセックスの文字が氾濫し、人はみな一時の快楽を求めて生殖がひたすらプレイ化する現代。日本人は子どもを作らなくなった」

「やすらぎの刻」パートの菊村栄(石坂浩二)は、急激な人口減少により絶滅の道を突き進んでいる日本の将来を憂う。

ずーっと「道」パートが続いており、今週も「やすらぎの刻」パートはなしか……と思っていたら、いきなり菊村が登場してこんな展開。
倉本聰、超・大御所なのに斬新過ぎるドラマを作りよる!

好きな人を不幸にすることはできねえ


「産めよ増やせよ」が奨励されていた時代なのに、公平は根来家の男たちにまだ嫁が来ていないことを気にしていた。

「三平兄ちゃんも早いことしのちゃんをもらっちゃえ」

「みんな怖いから我慢しとるんだ。……徴兵だ」

三平は、海軍に入った公次(宮田俊哉)にも好きな人がいたと明かす。

「もし嫁にもらって自分が戦死したら、その嫁はどうするんだ」
「好きな人を不幸にすることはできねえ」

徴兵免除される(らしい)開拓団に参加する青っ洟やニキビたちと、日本に残る根来家の男たちと、だいぶ事情が違うのだ。

しかし公次兄ちゃん。「家族を守るため」海軍に入ったというだけでも切ないのに、そんな思いまで抱えていたなんて……。回想シーンはナシだったが、あの優しい口調と表情が思い出される。


「好きな人を不幸にすることはできねえ(から結婚できない)」という事情。現代の少子高齢化の大きな原因となっている「失われた20年」世代の未婚、晩婚を連想してしまう。

就職氷河期で就職できず、結婚適齢期になっても非正規雇用で金がねえ。好きな人を不幸にすることはできないから結婚できない。「失われた20年」こと「人生再設計第一世代」(なんだよ、このネーミング!)の現状と重なってしまうのだ。

戦争っていうのはこんな感じかな?


おっぱいや子作り、のぞきで大コーフン。
公平のおねしょ……と、かなりの面白エピソードが満載だった今週。

そんなドタバタからシームレスにシリアスな話題もぶっ込まれてくるから気を抜けない。

ヨシコをヒーヒー言わせていた犬山に天誅を下した公平たちが、ふとつぶやいていた。

「戦争っていうのはこんな感じかな?」

「……後味わるいな」

「戦争はこんなヤワなもんじゃねえや! イチイチ反省してたら戦争なんてできねえ! 相手を豚と思ってぶっ殺すんだ!」

おっぱいだのおねしょだのと、何を見せられているんだ、オレは……と思っていたら、唐突に戦争の話。

具体的な戦争描写はまったくないのに、身近に戦争が迫っている当時の感じがリアルに伝わってきた。

緊迫感を増す「道」パートだが、来週は「やすらぎの刻」パートもたっぷりありそう。戦時中のヤングも気になるけど、現代のジジイババアの運命も気になるぞ!

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日