連続テレビ小説「なつぞら」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第8週「なつよ、東京には気をつけろ!」 48話(5月25日・土 放送 演出・木村隆文)視聴記録


「この人、詩人さん?」
5月26日(日)は帯広で5月では異例の気温38度越えとなり、すでに夏真っ盛りの様子。帯広をはじめとして十勝が舞台の朝ドラ「なつぞら」、北海道の清々しい景色ともお別れ。第8週は舞台を新宿に移した。

そもそも主人公のなつ(広瀬すず)は東京生まれ。戦争によって父母を亡くし、兄・咲太郎(岡田将生)と妹・千遥と、同じく空襲で焼け出された少年信哉(工藤阿須加)と四人でかたよせあって生きて来たところ、9歳のとき、なつだけ北海道の柴田家に引き取られた。柴田家がいい家だったので高校卒業するまですくすく育てられたなつ、恩返しのためにもこのまま柴田の牧場で酪農をやっていこうと思っていたら、漫画映画(アニメーション)の魅力に取り憑かれ、悩みに悩んだ結果、東京で働く決心をする。
東京で生き別れた兄・咲太郎とも再会するが、会えなかった10年、それぞれの事情があって……。
戦後、子供だけで生きていくには無理がある。なつは北海道、千遥は親戚の家、咲太郎は孤児院と別れることで生き残りを賭ける。

「なつぞら」は主人公なつがアニメーターになるお話なので、物語を理解するためにアニメ作品を例にしてみると、戦争孤児の悲劇を描いたアニメ「火垂るの墓」(高畑勲監督)では周囲に恵まれず、意地を張って兄妹で生き抜こうとして妹が病気になって亡くなってしまう。一方「なつぞら」は生きていくために兄と妹は泣く泣く別れを選ぶ。どっちが正しいとか間違ってるとかいうことではなく、この時代、いろんな生き方があったのだと受けとめたい。
咲太郎はいつか迎えに行きたいと願いながらも日々ひとりで生きていくのもやっと。引き裂かれる思いに苦しんでいたところ、ムーラン・ルージュで踊っていた岸川亜弥美(山口智子)の踊りに励まされる。もともと踊るのが大好きな咲太郎。
亜弥美と一緒にタップを踊って生きる希望を見出した。
このふたりの事情は、ムーラン・ルージュの歌手だった煙カスミを演じる戸田恵子がかつて歌っていた「伝説巨神イデオン」のエンディングテーマ「コスモスに君と」を思い出すとわかりやすいだろう。「慈しみふと分け合って傷をなめ合う道化芝居」という歌詞(作詞・富野由悠季こと井荻麟)。イデオンでは、異星人同士の戦争のなか、たまたま知り合った異星人の男女が恋に落ちる。このアニメの人間関係の描き方は、子供向けアニメとは思えない深みのあるものだった。アニメ界のレジェンドたちはアニメのなかに現実の問題をたくさん込めていたことは有名なお話だ。

亜弥美と咲太郎が出会うムーラン・ルージュで戸田恵子の歌声がバックに流れていることがなんとも意味深げでたまらない。

信哉「悲しみから生まれた希望は人を強くします 喜びから生まれた夢は人を優しくします」
何かと伝言係的な信哉(工藤阿須加)だが、48回は本質的なことを言った。
だが、それは亜弥美「この人、詩人さん?」
なつ「いえ、放送記者です」
三人はどこか遠くを見る。その余韻はあまり長く作らず、さっとカットが切り替わる。

「なつぞら」は這いつくばるようにして生き残った人たちの夢や希望を描いていく。これはある意味、戦いだ。
戦争で多くのものを失ったなつたちがそのおおきな穴を埋める決死の戦いなのだ。これにはイスカンダルにはるばる臨むくらいたぎるものがある。やがて登場人物の参考になっている実在の人物たちはヤマトの裏番組のハイジを作るんだけど、それはそれこれはこれで。

今日も山口智子節
咲太郎の母親代わりで、やたら気さくに語り合う様子になつがショックを受けるが、その後、なつが信哉と一緒に再び風車に来たら、ノブ?ノブよね やっだ〜 と咲太郎に話は聞いていたとばかりに亜弥美がまたはしゃぎだす(このライトなはしゃぎっぷりが山口智子の真骨頂)。彼女と咲太郎がやけに仲良いことがなつ的に取り残された気分になっていたのに、また信哉とも親しげにされたらなつの立場なし……と思うが、なつはそこまで拗ね子ではないようで、48回ではなつは素直に亜弥美の話を訊くのだった。
亜弥美は悪い人ではないので、今後はきっと咲太郎のみならずすずにも頼れる存在となることだろう。


咲太郎と東洋動画
たまたま仕事で会った東洋動画の社長に勝手になつを売り込んだり川村屋で会った仲(井浦新)と陽平(犬飼貴丈)に凄みを効かせたりする咲太郎。いわゆるトッポいあんちゃんなんだろう。咲太郎を見て、びくつく仲と陽平の表情が面白い。いかにも文化系(芸術系か)で喧嘩とかもってのほかというような雰囲気を全身から漂わせていた。陽平はなつに、馬の写真が満載の洋書を贈る(角筈屋書店で買って)。なつは懸命に馬の絵を練習する。
アニメーターの試験を受けるまでの日々はアニメで描かれた。

第9週は「なつよ、夢をあきらめるな」。あきらめるなってことはまだまだいろいろ紆余曲折あるようで……。

第9週 「なつよ、夢をあきらめるな」(5月27日・月〜 演出: )あらすじ


アニメーターを目指して東京にやってきたなつ(広瀬すず)。憧れの東洋動画の入社試験を受けるものの不合格となり、自らの行く先を見失ってしまう。雪次郎(山田裕貴)から、なつの様子を知らされた兄・咲太郎(岡田将生)は役者仲間のツテを頼り、東洋動画のアニメーター・仲(井浦新)に直接、不合格の理由を聞きに行く。すると仲は、試験に落ちたのは咲太郎のせいだと語るのだった。数日がたち、なつが亜矢美(山口智子)の店・風車にいると、咲太郎が警察に捕まったと信哉(工藤亜須加)が知らせにやって来る。
「なつぞら」48話。新宿編を「火垂るの墓」と「伝説巨神イデオン」と「宇宙戦艦ヤマト」で考察してみる

第50回(5月28日・火 放送)あらすじ


なつ(広瀬すず)は、東洋動画の試験に落ちてしまった。アニメーターになることだけを考えてきたなつは、自らの行く先を見失ってしまう。そんななつの姿を見た雪次郎(山田裕貴)は、咲太郎(岡田将生)になつの入社試験の結果を報告する。なつを励まそうと川村屋のアパートに現れた咲太郎。するとなぜか、大杉社長(角野卓造)から、面接でなにか聞かれなかったかと、なつに尋ね始める…。
「なつぞら」48話。新宿編を「火垂るの墓」と「伝説巨神イデオン」と「宇宙戦艦ヤマト」で考察してみる

「なつぞら」48話。新宿編を「火垂るの墓」と「伝説巨神イデオン」と「宇宙戦艦ヤマト」で考察してみる

「なつぞら」48話。新宿編を「火垂るの墓」と「伝説巨神イデオン」と「宇宙戦艦ヤマト」で考察してみる

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
高校卒業後、アニメーターを目指して東京に出てくる。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。孤児院で働きながら勉強している。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
なつをほんとうの家族にしたいと願い、照男と結婚させようとする。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院を出て新宿で亜矢美に助けられ、ムーラン・ルージュを経て、浅草の劇場で働いていたが、盗み濡れ衣を着せられ捕まってしまう。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。高校卒業後、川村屋に修業に出る。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。東洋動画に就職。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。「白蛇伝説」のラスト、白蛇として登場し喝采を浴びる。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。演劇部の顧問。「魂」が口癖。なつの問題、十勝の伝承を交えて「白蛇伝説」の台本を書く。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。クラブメランコリーの看板。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員。川村屋社員寮でなつと同室に。咲太郎を「同志」と思っている。
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員。咲太郎のことが好き。「真心を一晩貸したままだから」返してほしいと思っている。

28回
島貫健太  岩谷健司
ローズマリー  エリザベス・マリー…浅草の踊り子

30回
藤田正士 辻萬長  親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。

31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター

37回
阿川弥市郎 中原丈雄 … 東京から北海道に移住。彫刻で生計を立てている。
阿川砂良 北乃きい… 弥市郎の娘。

44回
杉本平助 陰山泰… 川村屋の料理長

45回
蘭子 鈴木杏樹… 劇団の女優
虻田登志夫栗原英雄… 劇団の俳優

脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)